クロス×レガリア 王威の決戦 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 王威の決戦】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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ひとつの戦いに幕が降りた。それは謀略も奇策も西王母の力の前にただただ薙ぎ払われる、それだけの結末だった。「俺には取り戻さなきゃならない、守ると約束した助手がいる」馳郎が再起する傍ら、ついに姿を現す白鳳六家、序列第一位・真朱真冬。彼女の登場により、“おに”と人の戦いは馳郎、ジン、西王母―王権を持つものが王の在り方を示す戦いへと舞台を移す。しかし尚も戦況は悪化の一途をたどり、馳郎はナタを守るため!?
あれ? 前回、いきなり壊滅的な状況に追いやられたものですから、そこからワンクッションおいて、さあ反撃、という空気を作ってからラストバトルに突入するかと思ったら、そのまま間断なく最終決戦に。どうやら、確かにあと2巻という構成だったのを無理やりここにまとめてしまったみたい。バタバタと拙速になるかとも危惧したのだけれど、時系列的にも余裕なかったにも関わらず、スムーズに今までの主要な登場人物が勢揃いの総力戦へと移行出来たのは、さすがベテラン作家といったところでしょうか。
こうなると、盛り上げ方は心得ているというべきか、あとはギアをあげるだけとばかりにテンションもうなぎ登り。局面を限定するのではなく、総出演となるキャラクターたちが様々な組み合わせで絡み合い合一し、また刃をかちらせることで、一斉に全方位で火花が飛び散るような事態になってるんですよね。それが面白いことに、渦を描いてナタの解放と西王母との最終局面へと集約していく流れは、読んでいる最中よりもむしろあとから振り返った今のほうが感嘆させられてしまった。それだけに、これが2巻構成だった場合の助走距離、準備段階が取れた時はさらにこれよりも冴え渡り、ド派手な演出になったんじゃないかと思うと、勿体無いという気持ちが湧いてくる。クライマックス演出の腕前については、レンタルマギカなどで証明済みですしねえ。
前回でも絶賛した連華のヒロインとしての巻き返しですが、ナタとの直接ガチンコバトルでほぼ極まりましたね。ダブルヒロイン体制の肝は、場合によっては主人公に対するよりも熱い情熱をもってヒロイン同士がぶつかり結びつく事であります。ともすれば、ヒロイン同士が恋する者同士であるかのように、ぶつけあう熱量は途方もなく。こうして築き上げた無二の友情、共感がヒロインの両立を成り立たせるわけです。
命がけの、お互いに命をかけるに相応しいと思い定めた恋敵との、親友との意思を通し、それを受け取るためのガチンコバトル。ここでの、囚われ人形と化したナタへ、ボロボロになりながら連華がぶつける壮烈な想いは、本当にかっこよかった。いい女の株がストップ高ですよ。
ホント、中盤まで馳郎とナタは鉄板もいいところで、割って入る余地なんて殆ど垣間見えなかったはずなのに、この正々堂々のこじ開けっぷりは、見事の一言でした。
まあ、このヒロイン二人に対して、馳郎とジンの王道と覇道の主人公対決の方は結局突き詰める事が出来なかったかなあ、という印象。最大の理解者同士でありつつ、相いれぬ物同士としてぶつかり合っていたこの二人、その決着がどうつくかについてはとことん突き詰めないとしっかりとした答えは出なかったと思うのですが、局面はナタの救出と鬼仙との共存をどうするか、に比重をとられてしまって、そちら方面に分量を割く余裕がどうも見受けられなかったんですよね。というわけで、結局自然に住み分け、という形に落ち着いてしまった感があります。王道として皆をまとめる馳郎に対して、ジンが選んだ道はなかなかおもしろいものだったんですが、そこに至るまでの馳郎との衝突と結論がでる過程をもっとじっくり見ることが叶うなら、ジンたちの在りようもまたもっと感慨をもって見ることが出来たんじゃないだろうか、とちと勿体無い気分に。
何だかんだと、ジンてば主人公らしく上手いこと悲劇を食い止め、悪い結末を回避してるのが、何とも心憎いことで。なんとなく、ジン本人よりも彼を王と見定めて動いていた隼人の方が、今回のお話では主役っぽかった気も……。妹の北斗とも、心の整理ついたみたいだし。
北斗といえば、リコとの関係が怪しい方向に……。あれ? 単なる親友関係じゃなかったの? あの仲の良さはガチでそっちだったの!?

最後の最後で、あのメチャクチャな白翁の財力を基盤とした交渉に持ち込むところは、実にらしい結論で、痛快であると同時に安心感も覚えたり。やっぱり、力でねじ伏せるのではなく、言葉で納得させるのがパターンでしたもんね。西王母のし掛けた戦争は、やり口からして絶対魔法使い陣営ともこじれそうなやり方でしたし。
でも「その場しのぎ」を女性関係にまで持ち込むのは、悪い男のすることぞw その点は、ジンを見習って欲しいのう。あっちはもう娘さんにロリババアまで抱え込んじゃってるほどなのですからw

シリーズ感想