カナエの星 (電撃文庫)

【カナエの星】  高橋弥七郎/いとうのいぢ 電撃文庫

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『灼眼のシャナ』コンビ、三年ぶりの新作! 学園伝奇アクション新シリーズ登場!!

世界には二つの『未来』がある。『新たに見出す可能性』へと進むか――『誰知らず降りる破滅』に沈むか――。
なんでも直感的に行動する少年・直会カナエ。とある相談を受け、古い校舎へと踏み入った彼は突如、謎の『星』へと飛ばされてしまう。そこで一人、待っていたのは『星平線のそよぎ』と名のる謎の少女。彼女は軽いノリで告げる。
「ズバリ、世界を救ってもらいます!!」
カナエは、新たな可能性の象徴『半開きの目』に選ばれ、世界を破滅に導く『ハインの手先』を止めなければならない……らしい。同じ頃、彼を慕う少女・一条摩芙も、何かを感じ、悩み、決断していた。
「『あれ』が動き出したら……私も、やらなきゃいけなくなる」
世界の『未来』を懸けた運命の戦いが今、始まる――!
まさかの小学生ヒロイン!! マジかー!
というわけで、【灼眼のシャナ】以来の新作となる高橋弥七郎さんの新シリーズ。灼眼のシャナは、ちょっと言い回しのくどさやら、登場人物の重たい生真面目さについていけなくなって途中で脱落したのですが……と言っても、一応17巻あたりまでは読んだんですけどね。ともかく、最終盤は脱落してしまったので、それ以来の作者の本となるのですが……。
む、むむむむ、これは! お、面白い、面白いぞ!! しまった、微妙に構えていたのが間抜けなくらい、文句なしに面白かった!
一度合わなくなって離脱してしまった以上、果たして今度は「合う」かどうかやっぱり不安はあったんですよね。でも、そんな不安など一蹴する「盤石」の面白さでした。そう盤石、これはベテランの貫禄すら伺える巧さでした。同時に、シャナで読んでて疲れてしまった部分である迂遠さ、ごてごてした修飾、キャラの重たさといったものが見事なくらいスリム化していて、余計なものが全部削り落とされてる。なんというスレンダー美人! 軽量高速化によるシャープさを感じさせる立ち回り。主人公の、あのブレーキペダルを踏むとアクセル全開になり、アクセルペダルを踏むとブーストが掛かるようなメンタル高機動性も、淀みのなさに拍車をかけている。
そう、この主人公がまた癖者なんですよね。曰く『点火済みの爆弾』の異名を持つ、考えるよりも先に行動してしまうタイプの子で、とにかく前触れなく突発的に行動に打って出るので、見ていて危なっかしいの何の。彼の周りの人間が、ヒヤヒヤしながら彼を見守っているのがよく分かる唐突さなんですよね、これ。
決して短絡的で考えなし、というのではないのが不思議で絶妙なところ。考えていないのではなくて、結論を出すのが異様に早い、或いはタイムラグが存在せずに瞬時に結論を出して行動に打って出る、というべきか。ただし、動くこと前提で。自身の身の危険については考慮外で。
面白いキャラである。実に面白い。何しろ、これだけ行動在りきの性格でありながら、むしろ冷静沈着型?にすら見え、しかし車が行き交う車道をひょいひょいと無造作に渡っていくような、落ちたら奈落まっ逆さの綱の上を躊躇なくひょいひょいと駆けていくような、鎌首もたげて今にも飛びかかりそうに威嚇している毒蛇の頭を何の躊躇もなくひょいと掴んでしまうような、とにかく見ていて「ひぃーー!」と悲鳴をあげてしまいそうな危なっかしさの塊なのである。彼がどうしてこんな人間に成ってしまったのかの人格形成にはちゃんと理由があり、それこそがヒロインの原動力ともなっているのだけれど、実に面白い歪んだ主人公像である。それに、妙な愛嬌もあるし、周りが彼の行動にあたふたと慌てる様は、同じくヒヤヒヤしながらも見ていて楽しい。
さて、肝心のヒロインですけれど、事前に何の情報も仕入れずに読んでいたんで、てっきり表紙を飾る女の子はシャナみたいに、異形の力を持った異邦人のたぐいかと思ってたんですが……まさかまさかそう来たか! 
うむむ、ガチで小学生のヒロインはロリきゅーぶ!以来の体験だぞ! しかし、その境遇・秘密もあってか、これは貫禄のメインヒロインですよ。いつの間にか空気になって、どんどん渦中から置いてけぼりになって、あこがれのお兄ちゃんを遠くから眺めるだけの無力な小学生少女とは、一線を画する勢いですよ。
病弱で大人しい性格だから、もっと自己主張も少ないのかと思ったら、一端の女らしくちゃんとお兄ちゃんに男の影あればメラメラと嫉妬の炎を燃やす、あの小動物めいた反応は素直に可愛かったなあ。根っこは頑固者っぽいのもグッド。肝心の、カナエを「此方側」に引き込むキャラである「星平線のそよぎ」さんが、思いの外軽妙でふわふわと落ち着きのないキャラなんで、ヒロインとしては?のつくところであるのも併せて、貫禄のメインヒロインであります、まふまふ。個人的には、被害者担当の可哀想な弱キャラ橘樹先生が大いに好みだったのですけれど。カナエの相方というか、後始末担当の親友の里久の安定性というか安心感、頼もしさというのも見逃せないところ。男キャラが存在感あると安定感出てくるなあ。
日常と非日常の混ざり具合のバランスも、断絶しすぎず混ざりすぎず、影響や知覚をバッサリ絶たずに、何も知らない生徒たちもわからないなりに何事か起こってるんだ、と感じているあのバランスも絶妙に思えて、すごい好みでした。
あと、タイトルの字のデザイン。カナエの星の「星」の字。なんだか凶の文字を連想させて、凶星のようにも一瞬見えるデザインが色々と想像をかきたててくれて、好きだなあこの文字デザイン。
まだ具体的に何が起ころうとしているのかもわからない段階なのですけれど、これだけ下地が完成している上にワクワクさせられるキャラが揃っていると、そりゃあ面白いですよ。さすがにシャナほどの長大なシリーズになるかはわからないですけれど、楽しみなシリーズの開幕開幕♪

高橋弥七郎作品感想