百錬の覇王と聖約の戦乙女5 (HJ文庫)

【百錬の覇王と聖約の戦乙女 5】 鷹山誠一/ゆきさん HJ文庫

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《豹》の侵攻から一ヶ月。族都に凱旋した勇斗は、冬に備えて用意したコタツに入り、ほっと休まるひと時を過ごす。
だがそんな折にもさまざまな出来事が。アル&クリスは波乱含みの学校生活を送り、ジークルーネは山賊討伐でかつてない"強敵"と遭遇。
さらに現代では美月がユグドラシルの謎に肉薄し……!? ますます目が離せない覇道ファンタジー第5弾!!
普段あまりスポットの当たらないヒロインたちをメインに描かれる短篇集、とか言いつつも実は普段スポットのあたるヒロインの方が少なかったりするんですよね、この作品。本来メイン格に収まるであろうジークルーネは、完全に戦闘要員でしかないし、貫禄の正妻であるところの美月は、現代日本にいる関係から積極的に話には関わってこれないし、という感じですし。形としては周りに女の子を多く侍らしてはいるものの、本人が美月に操を立てているのもあるのでしょうけれど、それ以上にあんまり色っぽい話にならないのは不思議な話。周囲のヒロインたちはそれなりに入れあげているはずなんですが、そういう色恋沙汰を本筋とは関係ない脇に押しやっちゃっているんでしょうね。むしろ、印象度としては敵の有力な族長格の方が存在感があるくらいで。結局、この作品において決定的にヒロインとして存在感を示すには、政治的かつ物語的に流れの中核に食い込んでくる存在でないと難しいわけだ。その意味では、間章からちょくちょく首を突っ込みだし、ラストに勇斗と顔を合わすことになった彼女は、まさにストライク。
と、同時に単なる勇斗の帰る場所、拠り所としての意味しか持てなかった美月の方にも、今回の短編やラストの展開を加味することで大きな動きが出てきそうに。まさかの、前シリーズからの出張登場してくる人が居るとは思わなかったけれど。沙耶姉もちゃんと成長して美人の大人の女性になってたのか。
この勇斗が紛れ込んだ世界、完全に異世界だと思い込んでいたのだけれど、まさかの過去の世界の可能性が。鉄が極めて希少で戦略物資として機能している点など、中世どころか、文化文明的には古代以前のレベルだとは思っていたけれど、有史以前の神代の可能性があるという観点は持ってなかったなあ。
そうなると、単なる作品を書いていくための引用にすぎないと思っていた北欧神話との名称などの共通性も、勇斗の物語そのものが神話を形成する元となった歴史であるという可能性も出てくるわけで、色々と神話からの暗喩も想像できるようになってくるんですよね。沙耶姉の話は、毎度ながら面白い。
あと、何気に今後の展開の為に重要な話になってきそうなのが、最初のクリスとエフィの話か。奴隷出身のエフィのありようが、クリスの価値観を根底から揺さぶったことで、果たしてクリスがどういう行動に打って出るのか。かなり不穏な終わり方をしていて、引きとしては凶悪である。

シリーズ感想