スクールライブ・オンライン4 (このライトノベルがすごい! 文庫)

【スクールライブ・オンライン 4】 木野裕喜/hatsuko このライトノベルがすごい! 文庫

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2学期末に実施予定の大型アップデートの内容は――入力型BMIの導入、VRMMOの実装――誰もが待ち望んだ、フルダイブ型3Rへの移行だった!
しかし、この大型アップデートの陰で、危険な実験が行われようとしていることを知った零央は、計画を未然に防ごうと《心の欠片(フラグメンツ)》と共に立ち上がる。
零央の武器はただ一つ【自治権の発動】。そのために、《陽炎騎士団(ミラージュナイツ》ギルドマスター・火西に接触を図るが――。
譲れない思い、守りたい愛しい人、自らの信念。それぞれの思惑が激しくぶつかり合う、大人気シリーズ、第4弾!

このライトノベルすごいよ!!

 ついにこのフレーズをこのレーベルで使うに至った。いや、マジで凄い。前回で、それまでの流れどころか作品の方向性からひっくり返す、という度肝を抜く展開で圧巻だったはずなのに、この作者さんと来たらそこで全然満足してなかったですよ、これ。あそこから、さらに爆弾ぶちかましてステージをカチあげるという豪腕にうって出たのだから、もうぐうの音も出ない。それでいて、乱暴にぶん回したのかというと全然そうではなくて、それどころかこの巻の構成と来たら美しいくらいに整調されているんですよ。話の流れの持って行き方なんか、見本として額縁に入れて飾りたいくらい。基本といえば基本なんだろうけれど、肉付けと流れが本当に絶妙の一言なんですよね。改めて振り返っても、今回の構成は感嘆を覚えました。
というわけで、ハード路線に突入したと思っていたら、実際はルナティック路線でした、という恐ろしい展開に。予想を遥かに上回るえげつない展開に、読んでいてどんどん顔が青ざめていくはめになってしまった。人体の心身を欠損させかねない実験を止めるため、とはいえ実際は今までどおりゲーム内で企業側についた城主ギルドのトップ高天原を、ゲーム内で他のみんなと一緒になって攻略するだけで、なんだかんだとあくまでゲーム内だけで完結する話だと思ってたんですよね。その想像が甘すぎた。
昨今のVRMMOもの、ってゲーム=世界観そのものであって、実際に死んでしまうような生き死にも含めて、すべてゲーム内で完結しているものが殆どなわけです。なんだけれど、この作品ではあくまでゲームは現実世界での判断や意思を通したり対決させるための「ツール」でしかないんですよね。主体は現実世界の彼らであり、現実世界の生活であり、社会的立場であり、現実世界の肉体・精神の健康なわけです。そして、ダイレクトに被害がでるのも、現実世界の方の彼らだったわけです。
まさか、現実世界の方に直接被害が出てくるなんて、思いもよらなかったのですよ。せいぜい、ゲーム内でデスペナルティが出てくるくらいなのだと思ってましたし、火西兄貴みたいに現実世界であれだけの決断を下す状況に置かれている人が出てくるなんて、想像だにしていなかった。確かに先生の恋人が実験の被験者となって、意識不明になってしまい、同様の実験が無断で学校の生徒たちを被験者として行われる危険がある、という状況はわかっていたはずなんだけれど、あくまでそれは実験が行われたら、という前提で捉えてたんですよね。
こんなえげつない使われ方されてくるなんて、完全に虚を突かれた。正直、これはもうイチ学生である零央たちが関われる範疇を超えているような事態にも思えるんだけれど、そうも言っていられない状況に追い込まれちゃったからなあ、これは。まさかここまで真の意味で切羽詰まったことになるなんて……。主人公サイドの追い詰め方が尋常じゃないです。絶対に退けない状況に追い込んでおいて、前進すればほぼ敗北必至の無理ゲークラスの条件。退いても進んでも喪ってしまうものは「絶大」すぎて、もうこれデスゲームと対してリスク変わんないんじゃないのか、というレベル。少なくとも、幾人にとっては喪われるものは命と同じくらいのものだし、それでなくても社会的に死ぬ。話のスケールが一般学生のレベルを完全に超えてるんですよね。これまでの話で、零央たちはあくまで普通の学生の範疇で悩み、楽しみ、遊び、困難に挑んできたのを見てきて、実感してきただけに、その彼らがここまで過酷な状況に置かれてしまった、というのを目の前にしてどうしても慄いてしまうのです。最初から「特別」なキャラクターなんかじゃなかったですから。
少なくとも、火西兄妹たちと交流し、一緒にイベントに挑戦していた序盤の、あの無条件に楽しかったエピソードを目の当たりにしていると、なおさらにそう思う。火西兄貴、ほんと好漢なんですよ。強くてかっこよくて優しくて懐が広くて気持ちのよい性格で……素晴らしい男前でした。
その兄貴が、あれほどの決断をしなければならないという事実に愕然とせざるを得ない。
よくぞまあ、ここまでえげつない話へと舵切ったよなあ。落とす、落とす、これでもかというところまで落として落として、だからこそ不屈の意思が輝くのである。
ラストの、神鳴鈴音の名乗り出には、零央じゃないけど泣きそうになった。かっこ良すぎるよ、一年坊。そして、満を持してかつてのライバルを引き込む展開に。
他にも、一度徹底的に叩き潰されながら、不屈の意志で這い上がり、新たな境地を切り開いてみせた主人公の零央といい、今回はもう片っ端から見所ばっかりでした。これもう、あとラストまで全部見所っぽいけれど。
しっかし、ここまでやられると会堂のあの姿勢もいささか常軌を逸しすぎてるようにも見えるんですよね。ちょっとまともじゃない。ここまでおかしい人と、これまで瀧先輩が付き合ってこれたとは信じられないんですよね。とはいえ、演技という可能性は絶無ですし……これ、この人も精神操作かなんか受けてるんじゃないかしら。幾らなんでもちょっと異常すぎるし、これだと瀧先輩が可哀想すぎですよ。
いやあもう、想像を遥かに上回る激しさで、スケールで物語のテンション、うなぎ登りです。いったい、どこまで行ってしまうのか。ちょっともうこれ、タマランですよ。

シリーズ感想