かくて夜明けの神殺者 (2) (電撃文庫)

【かくて夜明けの神殺者(デイブレイカー)2】 中維/しらび 電撃文庫

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神や悪魔、精霊―「霊異」の全てが恋焦がれる特別な血を有する少年・化野幸太。封印された「怖血神」の能力を解放した幸太は、同じく生来の姿を取り戻しかけた魔物少女・メリアンと共に、力の制御に悩む日々を過ごしていた。そんな折“対霊異資格者”としての彼に訪れたのは、古の神々からの依頼。「学府に仇なす可能性のあるものを探し出せ」その依頼を受けたが最後、幸太の前に現れるのは、最凶の魔術師コンビ、最悪の霊異犯罪者、そして―封印された最強のデイブレイカーが禁を解かれ、ついにはメリアンまでもが敵の毒牙に!?絶体絶命の状況下で、幸太が見出す活路は―少女の愛と少年の刃が、世界の夜明けを切り開く!
前作で、それまで主人公の幸太に根付いていた霊異への憎しみやわだかまりが解けたことで、元々の幸太の気風の良い性格にブレーキが掛からなくなったために、一気に痛快さが増してきましたね、このシリーズ。
どうしても、前回までは要所要所で幸太の行動や思考に、わだかまり故の躊躇や沈滞があって動き出すまでに一コマ間が空いてしまっていたのだけれど、それらが拭われたことで、良い意味で対人関係でも「化野」としての在り方にも、そして恋愛感情に対してもフットワークが軽くなったのです。これは、主人公の内面、心身に迷いがなくなり芯が一本通ったということで、幸太の言動にも揺るぎのない芯が生まれ、それが痛快さにつながり、話の流れそのものにも勢いを生む、という相乗効果をもたらしてるんですね。その煽りでか、メリアン含めてクラスメイトたちも、幸太とのコミュニケーションのレスポンスが良くなり、彼らサイドキャラクターの存在感も活性化してきて、大いに盛り上がってきた感があります。
前巻最後の師匠との別れは、幸太に大きな成長を促したんでしょうなあ。自然と、師匠から独り立ちして、「化野」として組織のしがらみに縛られず、自分の心意気に素直に従う痛快なヒーローとしての格を身につけつつあって、これがまた格好いいんだ。
デタラメに強かった師匠へのコンプレックスもいい方に解消されて、自分自身の弱さを飲み込んだ上で、自分のスタイルを確立して、これが自分だ!と胸を晴れる図太さ。
 そうだ。幸太という男は、もともと卑劣で卑怯な男。
 誰が正々堂々などと戦うものか。
最愛の人を無理やり奪っていった怨敵を、出し抜きだまくらかし地団駄を踏むほど悔しがらせて嘲り笑う。この素晴らしく、やってくれたぜ!とグッと拳を握らせてくれる主人公は最高ですわ。ムカつく相手を、これ以上無くスカッとする手練手管でぶちたおし、ギャフンと言わせてくれるほど痛快な事はありませんからなあ。
それに、前回にも増してメリアンのヒロイン度が上昇していて、えらいことになってますよ、これ。普段はガンガン積極的にアプローチしてきて空回りしてるくせに、ここぞというときに、思いっきりしおらしくなるところなんぞ、見事にツボをついていらっしゃる。メリアンの場合は肉食ぶって攻めっ気見せてる時よりも、無自覚無意識に乙女全開状態になってる時のほうが圧倒的に威力あって、幸太をメロメロにしてるのが、なんともチグハグというか残念感があって、うんそれも可愛いね!

噂の最強のデイブレイカーも、思いの外良いキャラしていて……というか、あれは幸太が良いキャラにしたんだよなあ。燻り停滞し腐敗していた最強の男を、カッコ良いヒーロー(デイブレイカー)として復活させてくれるわ、一癖も二癖もある魔術師コンビを、ただの敵として終わらせずに上手いことねじ込んでくるわ、組織優先で融通聞かず悪巧みばかりしている神様に一発食らわしてくれるわ、とこうしてみると八面六臂の活躍だったなあ、幸太。
なんかお為ごかしのようだった異文化交流コースも、クラスメイトや先生のキャラが立った上に幸太のスタンスも変わり、さらにバックアップに新規参入もあって、と完全充実してきて、むしろ以降はここをメインというか、拠点として話も進展させていけそうだし、2巻でキャラも物語も着実にステップアップしたんじゃないでしょうか、これ。
これは長期シリーズ化してバッチリな作品だと思うんだけれどなあ。

1巻感想