ガーリー・エアフォース (電撃文庫)

【ガーリー・エアフォース】 夏海公司/遠坂あさぎ 電撃文庫

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人類の前に突如出現した謎の飛翔体、ザイ。災厄を意味するその存在は桁外れの戦闘力であらゆる航空戦力を圧倒した。彼らに対抗すべく開発されたのが、既存の機体に特殊なチューニングを施し、異次元の高機動を実現したドーターと呼ばれる兵器。操るのは、アニマという操縦機構。それは―少女の姿をしていた。パイロットだった母をザイにより失った少年、鳴谷慧が出会ったのは真紅に輝くスウェーデン製の戦闘機、そしてそれを駆るアニマ、グリペンだった。人類の切り札でありながら挙動が不安定なグリペンと、空に焦がれる少年の、長くて熱い物語がはじまる。
グリペンかー。うん、確かにこう、現代型戦闘機をズラーっと並べて、さてどれをヒロインにする? となると、イーグルだと主力で華がありすぎるし、ロシアのスホーイ、ミグ系統もメインとするにはちょっとシャープすぎるんですよね。しかし、あまりにロートルすぎてもヒロインとして弱すぎるし、スウェーデンのグリペンというのは、狙い目としては一番常道だったかも。いや、思いっきり正統派でF2とかでもありなんじゃないかとは思わないでもないんだけれど……F2だしなあw
個人的にはスーパーホーネットとかでメインヒロイン、というのも見てみたかった気もするけれど、むしろアメリカ製の方が自衛隊のドーターとして運用に持ってくるの難しいのかもしれませんね、設定的に。いや、このグリペンも相当無茶な経歴と、裏道使って入手したみたいですけれど。
しかしこれ、戦闘機の擬人化モノとしてはいささか微妙なんですよね。具体的に、なんで少女の姿をしているのか、とか理屈がさっぱり明らかでない上に、どうも戦闘機本体からアニマが独立しすぎてて、あんまり同一の存在という描写が少ないものだから、単純に戦闘機をパイロットとして動かしているようにしか見えないのがちょっと勿体無い。もっと、このグリペンという機体の付喪神的な存在として、グリペンのアニマが描かれてたら、ドーターに改造される以前のただの機械、ただの戦闘機の頃から無機物の魂に焼き付いていたものが、ドーターとして改造される事で人の形をとって現れた、みたいな感じでグッと感情移入出来ただろうし、グリペンが慧に拘る理由としても掴みどころになった気がするんだけれど。
今のところ、何故グリペンが慧を特別な相手として認識してしまっているかがまるでわからないんですよね。どこで繋がる要素があったのか。ドーターとなる前のグリペンとして関わりがあったのか、それともドーターの材料となった「ある物」が慧に関わっていたのか。
鳴谷慧という少年の視点から描かれるせいか、得られる設定の情報が随分と限定的で「イリヤの空、UFOの夏」みたいな感じではあるんだけれど、あちらの「少年と少女の世界」として閉鎖し、ブラックマンタや戦争についての設定を完全に「背景」として処理しきったあの作品と比べると、此方は単に情報の公開が不足していて穴ぼこだらけ、という印象が拭い切れないのが何とも残念。
キャラクターも、夏海さんの作品としては主人公も青いばかりで、クレバーさはあんまり見当たらなかったしなあ。グリペンも、ヒロインとしての主張がもうちょいインパクトが足りない様子。
題材としてはかなり美味しい作品だと思うんだけれど、スタートとしてはちょいと勢いに乗れないまま材料をばらまいてしまった、という感じかなあ。化ける可能性は十分にあるので、まだ追っかけるつもりではあるけれど。

夏海公司作品感想