赫竜王の盟約騎士2 (一迅社文庫)

【赫竜王(イグニス)の盟約騎士 2】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

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学園の新たな理事長に就任したベルクマンは、アルキミア王家の裏の顔を知り、王国の庇護を離れることを決意する。王国との同盟を破棄したいま、新たな勢力、種族との同盟なくしては、今後の竜たちとの戦い、王国からの圧力に抗せない。そう判断したベルクマンにより、ジルたちは竜の骸を鍛え、盾や剣に加工できる水棲種族と接触をはかるべく隣国へと派遣されることに。長老竜の手がかりが見つかるかもしれないと考えたジルは、ティナと咲夜、フルフルらを伴いその種族が住む巨大湖へと向かったのだが、そこには特殊な竜が待ち構えていて―。本格竜殺しファンタジー、第二巻登場!
前作でヒロインの一角にも関わらず、その際立った弄られ属性から、完全にみんなのオモチャとして定着してしまったシルヴィの、あの弄られヒロインの魂をティナが引き継いでくれました! 今度はメインヒロインが弄られっ娘ですよっ!
真のMとは、Sっ気がない人でもついついイジメてしまいたくなる光線を無差別に出してるものなんですよ。そんな気がなくても、思わずイジっちゃって、あとでハッと正気に返るものの一度味わってしまった甘美にして恍惚となる感覚を忘れられず、ついつい繰り返してイジってしまうこの中毒性。それこそが真の弄られっ娘! 
あのティナのプルプルカタカタと涙目になりながら挫ける姿は、もうなんかたまらんですよっ、タマランデスヨッ!
この娘、あとがきでも作者が語っているように、ヒロインというよりももう一人の主人公なんですよね。絶望的な現実と人間の沸騰するまでに煮詰められた情念に対して、負けず理想を掲げ続け不屈の精神で戦い続ける少女なのである。平和を説きながら、その為に力が必要なコトも理解している理想家のリアリストというべきか。彼女が倒さなければならない敵は、竜のみならず、竜を憎み呪う竜狩りたちすべてであり、この状況を現出させて社会を成り立たせているすべてのシステムであり、思想であり、意思であり、すなわち世界のすべて、と言ってもいいほどのスケールを相手にしているのである。畢竟、それに立ち向かうティナには揺るぎない信念があり、ブレない意思の強さがある……にも関わらず、些細な身の回りのことについては茹でる前の素麺の芯ほどの脆さでポキリと折られるこの柔らかさw
ちょっと押すと、ポキっと折れるんですよね、この娘。泣いて謝ってくる姿がもう可愛くて可愛くて。最初は飽きずに毎度抵抗の素振りを見せるのが、またついつい啄いてしまいたくなる要素でもあったり。
折れてもすぐ復活するメゲなさも魅力だわなあ。

竜と人の相容れず殺しあい続けるという不毛な世界情勢。竜に家族を殺され、故郷を滅ぼされた人間たちの怨念がベッタリと張り付いた世界観は、作品そのものに仄暗い雰囲気を与えていて、主人公のジルたちからして竜だけが相手じゃなく、国そのものにも復讐心を滾らせているという負の方向に定まってしまったキャラクターだったので、何だかんだと息が詰まるような苦しい感覚のする物語だったのですが、この2巻に入ってこのティナが凄い頑張ってくれたんですよね。いや、イジられることで空気を和ませてる、というのも大いにあるんですけど、あるんですけれど!
恨み、憎しみ、呪い、怒り、そういった負の感情に染まりきり、先の展望、未来への望みといったものを何も持っていないジルやすべての竜狩りたち、この世界の行く末そのものに、ティナだけが反逆し、未来を語り、それに影響されるように、ジルたちが本来持っていただろう柔らかい人間性が引っ張りだされてきて、何だかんだと前向きな雰囲気に、優しい気持ちを大事にする空気になってきたんですよね。これは、大いにティナの功績だと思う。理想を語り、しかし理想を実現するために必要な力を否定せず、その上で皆の意識を変え、未来を示し、竜との対話を叶えようとするティナの姿は、力強い光そのもので、これはヒロインというよりもまさに主人公なんですよね。当の主人公のジルからして、感化されはじめていることを強く実感していたようですし。
さらに、この竜と人間とが殺しあう状況が何故始まったのか、竜たちの真意と事情、そして世界を覆う悪意の姿が見えてきたことで、物語そのものの方向もグッと面白くなってきました。
メインパーティー以外の周りのキャラクターも充実してきて、枠組みの拡大と強化も順調ですし、この2巻でだいぶ加速しだしたんじゃないでしょうか。さあ、舞台が整いだした。