不戦無敵の影殺師 3 (ガガガ文庫)

【不戦無敵の影殺師(ヴァージンナイフ) 3】 森田季節/にぃと ガガガ文庫

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「異能力制限法」により異能力者はすべて社会から管理され、戦う機会が奪われた現代。アンダーグラウンドの異能力者組織「御大」を撃退したことで、御大の異能力者から狙われることになった朱雀と小手毬。裏社会で生きる異能力者たちは規格外の強さで、何もできないまま敗れてしまう。彼らの狙いは、エンターテインメント産業として成り立つ「異能力者業界」自体の解体だった!? 俺は、俺たちは偽物だったのか―朱雀と小手毬に訪れる、コンビ解消の危機。現実の異能力者が苦闘するリアル・アクション、風雲急を告げる第3弾!
相変わらずメンタルの弱さが豆腐か鶏の卵並の男である、冬川朱雀。ちょっとでもぶつかると、すぐに割れたり潰れてしまうので、持ち運びには十分お気をつけください、てなもんだ。人格的には健全な部類にも関わらず、ダメ男臭がどうやっても消えないのはこういう側面からなんだろうな。しかし、この程よいダメさが母性を擽るのか、何気に女受けは良いっぽいんですよね。尤も、それは一人で大概の事をこなせてしまう自立した女性に寄るようですけれど。小手毬だったり、滝ヶ峰だったり、舞花だったり。みぞれは微妙なところだけれど。
根っから腐ってたりクズ野郎だったりするのとダメ男はまた違うというのが、朱雀を見ているとよく分かる。その彼を、支えるか引っ張るかまるごと受け入れてしまうか、それもまた人それぞれ。三者三様の在り方があって、見ていて面白い。と、面白がってたら小手毬が、朱雀を支えきれなくなって二人もろとも潰れかかって焦ることになってしまいましたが。
小手毬が、煌霊となったエピソードが綴られていましたけれど、彼女は彼女でまず妻である前に朱雀という煌霊使いの煌霊であるというプライドがあって、それに寄って立ってるんですね。なので、その部分でのプライドを折られると、思いの外弱かった。肝心の朱雀は、煌霊使いとしてフォローしてくれるどころか、小手毬の自信もプライドも余計に弱らせてくれるような態度で接してくるわで、惨めな想いにさせられるばかり。
ダメ男に男らしいところなんか期待するのが間違っているのだけれど、さて朱雀が小手毬に、大事に大切に思っている、という気持ちがどういうものかを告げていれば、果たして彼女の態度も変わっていたのだろうか。具体的に、煌霊としてというよりも一人の女性として云々と告げていれば、さてどうなっていたのかは興味深い。
煌霊としてプライドと生きる存在価値を規定している彼女にとって、妻として愛して欲しいなどと願ってはいないのだろうけれど、実態として事実上の夫婦、内縁関係にあるようなものであるのを思うと、まあ嬉しくはないはずはないだろうし、それはそれで彼女にとっては堕落になるのか。

虚像となりきることが出来ずに、能力者としての力に拘り、幸いにして戦うものとしての在り方を曲げることなく、最強の能力者として売り出すことに成功した朱雀。ところが、今回無残にも最高の看板を軽々とへし折られてしまったことにより、図らずも表の世界で最強という虚像で自らを演出する者になってしまい、その現実と虚構の違いに苦しむことになるわけですが、どれほど偽りのない本当の姿を見せようとしても、どこかで実情と食い違いが生じて、虚像が生まれて真実とは違う姿に育っていってしまう、という現実にもある身も蓋もないというか、世知辛い話が、今回もまた根底に流れておりました。
そのあたりを割りきった上で、虚構も現実も両方武器にして、戦い育て、皆の居場所を作ろうと奮闘する滝ヶ峰の強さと凄さと頑張りが、今となってなおさらに伝わってくるような気がします。
不動にして揺るぎないと思われた彼女が不意に見せた胸の内、どれほど彼女が張り詰め無理を重ね、気を張っていたかが、彼女にも弱い部分があった、というか弱さをねじ伏せて戦っていたのかが分かると、なおさらに凄さが身に沁みると同時に、一気に身近な人になったようなほだされた気持ちにさせられてしまった。
なんという凶悪なヒロインアピール。
いや実際彼女がホントに色々と精神的に一杯一杯だったと知ってしまうと、2巻からこっちの朱雀を何かと裏の件に引き込んで使おうとする態度も、違う風に見えてくるんですよね。便利で使える駒、というのではなく、今まで一人で抱え込んでいたもの、裏の事情や真意に基づく様々な負担を共有してくれる相手と何時しか見ていたんじゃないだろうか、と思えてくる。突き放すようで、その実期待を寄せ続けていたわけですし、彼女の立場でアレだけ期待を寄せるということはもう寄りかかっているということでもあるわけです。
あの大会前のお前以外とは戦いたくない、というのはわりとすごい台詞なんだよなあ。まだどう転ぶかわからないですけれど、小手毬からすると舞花よりもかなり強敵の登場になるんじゃないでしょうか、これw

1巻 2巻感想