千の魔剣と盾の乙女14 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 14】 川口士/アシオ 一迅社文庫

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ルーの虹を手に入れたロックたち一行は、エリシア救出のため砂漠を越えゴリアスを目指す。いにしえの竜クロウ=クルワッハを目覚めさせて地上を滅ぼさんとする新たな魔王ケンコスは、魔物たちをゴリアスへと集結させていた。数に勝る魔物の大軍に苦戦しながらも、フィル、ナギ、ファーディアの力を借り、いよいよケンコスとの対決を迎えるロック。しかし、ケンコスはかつての魔王バロールと同等の魔力を手にしており、ロックらはかつてない苦戦を強いられることに。ロックたちはケンコスを倒す事ができるのか、そして囚われのエリシアの運命は?!本格魔剣ファンタジー、いよいよクライマックス目前!

ヴァル師匠の頭を、背伸びしてナデナデしてるサーシャがめっちゃ可愛い。サーシャが勇者として魔王討伐に向かった頃はまだ幼い子供だったヴァルが、今や自分よりも年齢も年上で背丈も見上げるような大男になってしまって、性格だって随分と厳ついものになってしまったのですから、彼女ももうちょっと距離感に戸惑うのかと思ったのだけれど、さすが勇者だけあって大物というか、あのヴァル師匠を子供扱いとかさすがだなあ、と。
さすがにメインとは行かないけれど、ヴァルとサーシャとニーウの関係についてもさり気なく進めてくれているので、彼ら三人についてもこのまましっかりと行く末を描いて欲しいですねえ。というか、弟子の方はみんな自力で今の関係を構築していったにも関わらず、師匠の方はというと周りが手取り足取りお膳立てしていて、どれだけ世話かけているんだと笑えてくる。特にニーウについては、周囲の人がしきりに発破かけるわ、わざわざ三人で生きていけるようにわざわざ状況を整えてくれたりと、背中押されっぱなしなんですよね。弟子のエリシアも随分面倒臭かったけれど、彼女はちゃんと自分でロック捕まえたぞ、っと。まあ、甲斐性のあるロックと違って、ヴァル師匠はほんとダメだからなあ(苦笑
紆余曲折を経て、なんとかエリシアを救い出すための宝具を手に入れ、タイムリミットが迫る中彼女の救出に向かうロックたち。ファーディアの愛想の無さがえらく女性陣には不評なのに、それをロックやホルプが宥めたり庇ったりという構図はなんだか面白い。普通は男同士が反発し合い、角を突き合わせて、そこからライバルと言う名の親友になっていくものなんだけれど、この二人の場合対立自体は女性陣そっちのけでふたりきりである程度やっちゃったし、ロックの性格的にファーディアのあのキツい性格はあんまり気にしないタイプだから、女性陣よりも先に受け入れちゃった、というのもあるんだろうけれど。
でも、ファーディアも最初の頃と比べるとだいぶ丸くなったよ、あれでw
焦点であるケンコス戦は、さすがに先の魔王戦は越えられなかったか。そもそも、ケンコスはあくまで魔王の側近であって、王の格ではないんですよね。いや、格が低いというわけでもなく、キャラクターが浅薄というわけでもないのですけれど、あの用意周到で人間のように策を弄する個性は、将としては非常に強敵だし、実際たちの悪さでは先の魔王よりもよっぽどだったかもしれないですけれど、やっぱり「魔王」としては弱いんですよね。
それに、精神的にケンコスはもうロックたちのことを上から傲然と見下ろすのではなく、対等の怨敵と見ているというのもあって、どうしても同じステージで真っ向からぶつかり合う相手、以上ではなかったわけです。
でも、最初から魔王より凄い相手、として見るのではなく、対等の立場から敵意を剥き出しにして、あらゆる手段を使ってエリシアを助けに来るロックたちを倒そうとしてくる強敵、として見るならば十分以上に歯ごたえのある戦いでした。ロックたちからしても、最大の目的はケンコスの打倒ではなく、エリシアの救出なだけに、お互い相手の手を読み合いながらの戦いでしたしね。
それに、あれだけロックへの敵意に囚われながらも、本来の目的を見失わずに着々と手管を巡らしていたあの手腕は、ラストバトルの前哨戦としてはまさに十全の敵だったんじゃないでしょうか。
しかし、エリシアは体を乗っ取られ、精神を侵食され、とえらい目にあったわけですけれど、最後の役得を思うと差し引きとしてはプラスだったんじゃないですか。ご馳走様です(笑
最後の展開はある程度予想していたとはいえ、まさにクライマックスに相応しいワールドクライシス!!
お膳立ては全部揃った。あとは、最終巻のみ。

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