カンピオーネ! 17 英雄の名 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【カンピオーネ! 17.英雄の名】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫

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神祖として復活したパラス・アテナの挑戦を受けた護堂。最凶の竜蛇神と化したパラス・アテナとの戦いの最中、ついに全ての神殺しを滅ぼす『最後の王』の封印が解かれてしまう! 圧倒的な力
の前に退却を余儀なくされた護堂は切り札となる『最後の王』の真の名を探り始めるが……!? 英雄と神殺しが織りなす超神話、最終章開幕!!

今回一番驚かされたというか度肝を抜かれたというか、なんですとーっ!? と阿呆のように口をぱかんと開けさせられたのは何かというと、最後の王の真名よりもむしろ、アイーシャさんとヴォバン侯爵の関係でしたよ。ヴォバン侯爵絶対友達いない人だと信じてたのに、まさかアイーシャ夫人にお兄さまッ、と慕われるというか懐かれるというか纏わりつかれているような関係だったとは。しかも、貴様など妹ではないわ、とか言いながら対応が激甘なのである。普通なら有無を言わさずぶっ殺しにかかるような人なのに、アイーシャさんには文句を言いながらも手を出さないし、何だかんだと受け入れてるし。アイーシャさん自身にも、自分には対応甘いのよお兄さま、とか思われてるしw
ほんと、このアイーシャさんに関しては、カンピオーネの中でさえ飛び抜けたびっくり箱ですわ。この人だけは何が飛び出すかわかったもんじゃない。結果が究極的にはた迷惑、という点だけは一切揺るぎがないのがまた始末に負えない!!
斯くして、ついにここまで引っ張りに引っ張った最後の王の真の名前が明らかに。面白いことに、そこに辿り着いたMVPが甘粕さんだったというのは意外も意外。何だかんだと、この人も飛び抜けて優秀なんだよなあ。と、魔術師関係で有能じゃない人は殆ど見たこともないのだけれど。それにしても、翠蓮姐にも褒められるくらいだから相当相当。
しかし、最後の王の正体についてはさすがにこれはわからなかった。自身の反応も、作中の人たちと同じく微妙な感じで、名前くらいは知っているけれど詳しくは全然知らない、というくらいのお人で。でも、地元のインド圏からその周辺地域からすると、知名度的にはすこぶる高い、というか日本人なら「桃太郎」を知らぬ奴はいないだろう、てくらいの日本における桃太郎、欧州圏におけるヘラクレスレベルの有名さらしいので、決してマイナーな人物ではないのです。それに、インド圏の神話世界というと世界最強の修羅の国というか終末戦争どんとこいレベルの兵器が飛び交うところですので、魔王を虐殺する英雄の生誕地としては全く以て妥当というかお似合いというか。そもそも「魔王」を討伐する英雄という神話があるところは早々ないでしょうからね。件の鋼の英雄神話体系においてすらも。
でも、さすが魔王の天敵というべきか、最後の王の人格と言い品性といい人間性といい、人格破綻者揃いのカンピオーネとは真反対の真人間の好漢で、ほんとにいい人なのが苦笑が浮かんできてしまう。なんか、いい人だからこそ貧乏くじ引いて魔王退治の役割を無理やり押し付けられている、みたいな感じで。好き放題やらかしまくっているカンピオーネに比べて、ほんと大変そうだなあ、と。なんだか、もっと八つ当たり気味にカンピオーネたちをボコっても良さそう、とか思ってしまうほどに。そういう事をせず、きちんと筋を通し、話も通じてそれどころか相手も尊重し、コミュニケーションスキルも高かったりするあたりが実に好漢なのである。
……ふむ、なるほどなあ。護堂さんからすると、ついついウルスラグナとの出会いを想起してしまうのかもしれない、彼の気持ちのよい涼やかな性格は。結局ウルスラグナは、まつろわぬ神の性質として顕現して時間が経つに連れて狂っていってしまい、神殺しを敢行せざるを得なくなったわけだけれど、護堂としてはあれ、決して好んでやったことじゃなかったんですよね。ウルスラグナとの間に交わした友情は本物だったはず。
だからこそ、かの太子を倒すよりも、むしろ彼を縛り付けている運命に対して敵愾心を募らせているのは、何となく彼の向かう方向性を感じさせられて、ニヤニヤと……。
でも、その結果として、前巻でワクワクと想像をたくましくさせられた、全カンピオーネによる共闘総力戦! という筋目が一気に怪しくなってきたわけでもあるんですよね。護堂さんからすると、太子への好感に比べて他のカンピオーネなど、姐さんやスミス、アイーシャさんを除くと、というか女性陣を除くとけちょんけちょんにして余りある小憎たらしい感情を抱いている相手ばかりですし。いっちょやっちゃるか、という気分になっても不思議ではあらずして。
てか、護堂さんのみならず、地球上に存在している魔王の数に比例して増強される最後の王の権能、という絶対脅威を前にして、みんなで共闘する、という道なんぞ誰一人一切頭にも思い浮かべずに、こいつらカンピオーネ全員、内ゲバ上等の気分で盛り上がりだしやがりましたぞ!!

こ・い・つ・らッ!!!

こんな非常識ではた迷惑の権化みたいな連中に、いったい何を期待しようとしていたのか、なんだか本気で自分が馬鹿に思えてきた。もうどうしようもないな、カンピオーネ!

でもまあそういう期待をしてしまうのは、先の斉天大聖に対しての翠蓮姐さんやスミスとの共闘があったからこそであり、今回もまた最後の王と、鋼の英雄たちを前にして翠蓮姐さんが護堂とガッツリ組んで一緒に戦ってくれた、という実績があったからなんですよね。特に今回の翠蓮姐さんと来たら、かなり護堂を立ててくれてましたし。いや、この人本当に強いなあ。カンピオーネは、強いというよりも生き汚いというか、相手がどうあろうと絶対に勝つという勝負師の極みみたなものを備えてる感じなんだけれど、翠蓮姐さんについてだけは勝負師としての極みを踏まえてさらに純然として強いッ!て感じなんですよね。格上をまったく格上を思わせない揺るぎのない強さがある。この人だけは、素のレベルで神様級に強いんじゃないだろうか。
ちなみに、姐さんが使ってた邪拳って、金庸とかの武侠小説を読んだことのある人は思わずニヤリとしてしまうものだったんじゃないでしょうか。

てっきり、最後の王との決戦はシリーズそのものの最終決戦になる、と思っていたので、今回は前哨戦としてお茶を濁して、メインの戦いはまた別の相手か、鋼の英雄たち相手のものなのかと思っていたのですが……この時点で思いっきりガチンコやんけ!! いやはや、もう今回最初から最後までフルスロットルで戦いっぱなし。太子も護堂サイドも小細工抜きに全力全開、という大盤振る舞い。これで、最終決戦でなかった、というのが恐ろしい。太子の反則極まる特性が明らかになっただけじゃんかよぅ。
気になるのが、果たしてアテナがこのままどうなってしまうのか、というところなんですよね。このまま敢え無く……という展開だったら、この巻でケリをつけていたと思うんですけれど、わざわざ次まで引っ張ったことに期待が浮かんでしまいます。何しろ、このシリーズの真ヒロインともいうべき柱ですからなあ。

シリーズ感想