マグダラで眠れ (6) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 6】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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かつて天使に作られた町で紡がれる、ガラス職人の青年と町娘の恋の行方は――。

異端審問官アブレアの足跡を辿るクースラ達は、天使が降臨し、金銀を生み出す灰を授けたという不思議な伝説の残る町ヤーゾンを訪れた。町の教会でアブレアの署名を見つけたクースラは、町に語り継がれる伝説が真実であると確信を得る。
さらにクースラは、調査のため立ち寄った薬種商の娘ヘレナから、ガラス職人たちが伝説を紐解く手がかりを握っていると訊き出す。だが同時に、町を取り巻くガラス職人達と町の間の確執を知ることとなるのだった――。
かつて天使に作られた町で、眠らない錬金術師が恋に奔走するシリーズ第6弾。
クースラ、なんか色ボケしてないか、こいつ(苦笑
浮かれているとは言わないけれど、今のクースラって満たされてしまっているかのようで、かつてのようなガツガツと貪るように錬金のネタにかぶりついていく飢餓感が感じられない。とはいえ、尖り他を顧みないその生き方は危ういの一言で、夢のためなら自分の身も他者の身もまとめて破滅させかねない危なっかしさがつきまとっていたのだけれど、本当に大事なものを手に入れた彼は、随分精神的にも安定して余裕が出てきているようだ。それが、果たして錬金術師としてプラスなのかマイナスなのかは未だわからない。フェネシスという大事なものを手に入れたあとの方が、彼女を守るために実際に大きな功績を手繰り寄せているわけだし。
ただ、フェネシスを可愛いと言うか言わないかで一喜一憂、悩み落ち込み張り切り満足している様子を見ていると、あの「利子」と自称し忌み嫌われた錬金術士も、丸くなったなあ、と思わざるをえない。
なんか、商人としての強かさを練り上げていったロレンスよりも、クースラの方が随分と甘いんじゃないかと思えてきた。フェネシスのことだけじゃなく、まったく無関係で会ったばかりの街の人間の、内紛に関わるような恋模様におせっかいを焼いてしまうとか、思わず自分とフェネシスの関係をカップルに照らし合わせてしまったとはいえ、肩入れする理由としては随分と大盤振る舞いである。むしろ、夢見がちだったフェネシスの方が、現実の厳しさを理解して、二人が結ばれない事は仕方ないことなのだ、と物分りの良いところを見せていたのに。
フェネシスは、クースラについて幻想を抱かなくなった、という点でむしろよりクースラに深く愛情を抱いているのが見て取れるのに対して、クースラはもしかしてフェネシスにもっと自分に幻想を抱いて欲しいのか、と思うような張り切りっぷりを見せてるんですよね。単純に、好きな娘にいいところを見せたい、というだけなのかもしれないけれど、見栄張りを見栄だけで終わらせずに現実に手繰り寄せてしまうのが、彼の凄いところというか、今回については運も良かったのだろうけれど。材料自体は揃ってたわけですし、イリーネも独自に発見してたわけですしね。これはクースラやイリーネが凄いというだけではなく、内部で完結してしまっていると気づかないことでも、外部からの視点で新たな発見があるケース、というものでもあるのでしょう。技術を内部で抱え込むことで、逆に発展を遅らせてしまう、というのはこの作品内でのギルドの秘密主義でも度々垣間見えてることですしね。
ガラス職人のギルドは必要に迫られていたからとはいえ、新たな技術を得ようという意欲がある分、技術を継承するだけに終始して、何一つ付け加えることも許すまいとしていた、イリーネが居た鍛冶ギルドなんかよりも随分マシにも見えたけれど。あれも、ひとつの街に籠る閉鎖的な組織ではなく、街から街に渡り歩く漂泊の性質を備えていたからこそ、外からの風を受ける素養があったのかもしれないなあ。

しかし、これだけラブ寄せしてくるとは、シリーズ当初からは想像もしなかったけれど、クースラの恋愛不器用さは殆ど成長のあとが見られない! イリーネがやきもきしてあれこれと手をつくしてくれるのをもうちょっと申し訳なく思うべきだと思うよ、クースラくん。あれで彼女、複雑な思いを抱えている部分もあると思うし。ただ、クースラが面倒なままな分、フェネシスの方が大人になったというか、この人は絶対に自分を裏切らないという確信を得たからなのか、あたふたと無意味に慌てなくなって、クースラの無様を鷹揚に受け入れることができるようになってきたのも大きいんだろう。でないと、もっと頻繁につまらないことでこじれてただろうし。段々と主導権取られはじめているの、きづいてるんだろうか、この男。

シリーズ感想