焦焔の街の英雄少女2 (MF文庫J)

【焦焔の街の英雄少女 2】 八薙玉造/中島艶爾  MF文庫J

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皇士帝タイサイの池袋襲来。幼なじみの杏に続き、新たに皇士の剣皇となった光義は彼女と共にそれを打ち破る。しかし、狂気に支配された光義は皇士剣で杏の胸を貫いてしまう。杏の命がけの呼びかけにより、正気を取り戻した光義だが、待ち受けていたのはさらに残酷な真実だった。そんな中、全長1キロを超える剋獣・近衛種ベヒーモスの関東接近が観測され、東京では獣人テロ組織“八雷”が暗躍する。杏を戦わせたくない光義と、彼の身を案じる杏は望まぬ形で心をすれ違わせてしまうのだが…。世界の運命に翻弄される、英雄の少女とその幼なじみの物語。風雲急を告げる第2巻。
いきなり悪堕ちしたのか主人公! と、慄いたのだけれど、さすがに敵味方に別れて、という展開にはならなかったか。杏のメンタルからして、そうなったらなったで立ち直れない気もするけれど。何だかんだと折れないメゲない壊れない杏の豆腐メンタルだけれど、光義に関してはダダ甘もいい所ですしね。光義の過保護すぎるくらいの態度をみていると、尚更にそう思う。
しかし、光義も受難というべきか、理想に近づいたかと思ったら思いっきり遠のいていたという事実が哀れというべきか。無力感に苛まれ続けていたところに、杏と同じ立場に立てて彼女を護れる力を手に入れたと思ったら、むしろ守るどころか彼女を傷つけてしまい、同じ剣皇になれたのだと思ったら実際は真逆だったという悪夢。
あっさり、一般人でしかなかった光義に、杏と同じ力を与えてしまう展開に拍子抜けしていたら、これである。無力で力になれないこともさることながら、幾ら同等に近しい力を手に入れても、それで足を引っ張ってしまったら本末転倒である。
追い詰めるねえ。
幸か不幸か、光義が抱えてしまった事情は、杏だけは全部知る事になったのだけれど、さてこれによって誤解によるすれ違いが起こる事は避けられたものの、現状に対してどう対応するかについては、光義を心配する杏と、杏の力になりたい光義とですれ違いを見せてしまう。まあこれは仕方ない。お互いに自分よりも相手を大事に思っている以上、ここは妥協出来ない部分である。メンタル豆腐の杏は、とてもじゃないけれど光義の侠気を汲んで、自分のために傷ついてくれ、といえるほど男前の少女ではない。それどころか、子供ができたら相当に甘やかして育ててしまう、孫が出来たら嫁から苦情が出るほど溺愛してしまうタイプの娘さんである。……じゃなくて、他人が傷つくならば自分が傷ついた方がよっぽど良い、とする英雄である。その彼女が、前線を支える仲間たちに被害が出ることを半ば承知で、それでも光義に退くように訴えるあたり、この娘にとって本当に光義が特別なのだということがよく分かる。だからこそ、男の子は退けないよなあ。

何やら、テロ組織と剋獣に妙な接点ができていたり、新たな剣皇が不穏な動きを見せていたりと、襲ってくる剋獣を撃退する、というシンプルな構図が混迷しだしてきて、そろそろ杏たちが何と戦っているのか。それをきちんと整理することで話に一本の筋を通す頃合いに来ているのかも。その辺りがしっかり描き出せたら、作品としてもどっしりとしてくるんだろうけれど。

1巻感想