無能力者のオービット・ゲーム 1 (オーバーラップ文庫)

【無能力者(レベルE)のオービット・ゲーム 1】 翅田大介/伍長 オーバーラップ文庫

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出来損ない(レベル・エラー)が世界を壊す!

「きっと、あそこへ行く」 超能力たる『遺能』が使われるのが普通となった時代。
無重力下で『遺能』を駆使して行われる戦闘競技『オービット・ゲーム』が人気を博し、軌道上のコロニーに存在する宇宙学校はオービット選手の育成に力を入れていた。
日向ソラは『遺能発現者』でない事を理由に希望していた宇宙学校への入学を拒まれてしまう。
別の学校に進んだソラは有望なオービット選手だと誤解され、手荒い歓迎を受けるが、それは無能力者が常識を覆す物語の始まりだった。
止まらない&無重力下バトル開始!
この無重力化における戦闘競技『オービット・ゲーム』の成立のざっくりとした歴史がなんか好きだなあ。スポーツの成り立ちなんてものは、往々にしてこんな風にルールも何も無いところからそこにいる人達が手持ちの道具や技術、環境を用いて好き勝手遊んだり、勝負したりしているところから始まって、ルールだの枠組みだのというのは後から付いてくるもんなんですよね。
尤も、表向きにおける軌道世界の一番人気のスポーツ競技、という看板は何やらカモフラージュっぽい怪しさが漂ってきてますけれど。
トッププレイヤーになれば、名誉も金も思いのまま、という大財閥の集まりを背景にした莫大な餌で有為の人材をかき集めて、さて一体何を育成しているのか。
正直、ソラが軌道世界にあがってきた事を知った時のアオの対応は、幾らなんでもと顔をしかめてしまうくらい人格攻撃を含めた凶悪な代物で、過剰反応もいい所だったんですよね。身内であるチームメイトに見せた素の顔の時でも、明らかにテンパってて一杯一杯になっている様子でした。
その時は、絶対に来るはずがなかった幼馴染が軌道上にあがってきたことで、テンションあがりまくって変になっているのかとも思ったのですけれど、どうしても彼を追い返さないといけないと思い詰めていたのなら、あの過剰反応も理解できなくも……ないかなあ(苦笑
この子、霧島アオってちょっとヤンデレの気配ありますよね。ちょっとどころじゃないか、いきなり極端にデレ化してしまうところといい、感情的に不安定な上にビキビキに尖りきってる。普段からじゃなくて、ソラに関してのみっぽいけれど。
翅田さんの描くヒロインは、往々にして既存の枠に収まらないオーバーフロー気味のキャラクターが多いのだけれど、アオに関しては特にヤバい雰囲気をひしひしと感じるのです。尤も、ヤバいと言っても味方身内に対してのものではなく、敵対する相手に対してですけれど。この手の娘は、相手がどんなに強大でも巨大でも関係なくニコニコと捻り潰して踏み躙って掻っ切ってしまいかねない恐ろしい頼もしさを持ってたりするので、ある意味主人公形無しになっちゃうのですが、いいぞどんどんやれw
アオに対しては若干押され気味である主人公のソラですけれど、人類の殆どが持つ超能力因子を全く持たないというハンデを背負いながらも、性格もネジ曲がらず……いや、思いっきり歪んで曲がって恐ろしく性格悪い人間に成り果ててるけれど、不平不満を内に溜め込んで鬱屈を貯めているような人間にはならず、馬鹿にされ蔑まれたら、その何倍もの勢いでその場で煽り返し言い負かし嘲弄してぐうの音も出ないほどコテンパンにやっつけてしまうのは、見ていても気持ちよかった。その上で、口だけではなく、きちんと実力で、しかも超能力を使わない純粋な身体スキルと頭の回転で、バッタバッタと増長した連中をなぎ倒していくのですから、純粋に気持ちのよい主人公です……性格悪いけどね! でも、下手にイイ子ちゃんしてスカした態度取られるより、やられたらやられっぱなしじゃなく、やられた分を割増してお返ししてくれる方が好感持てますよ。
それに、性格悪いとはいっても、自分が苦労してきた分、辛い思いや苦労を重ねてきた境遇には共感を寄せやすいですし、そんな境遇、環境にへこたれずに頑張る人たちには素直に尊敬の念を持てる、そしてそういう人たちの為に体を張れる、性格が悪いなりに真っ直ぐにそそり立った性根の持ち主、ということでちゃんと主人公らしい男の子じゃあないですか。
今のところ、まだキャラや舞台、状況説明に伏線の配布という側面が強くて、物語が本格的に動き出すのは次以降となるのでしょうけれど、とりあえずソフィーリアとフレーナのチームメイト二人はまだまだ存在感示しきれていないので、彼女たちが弾けるのも次回からの楽しみ、となりますか。もっともなんか、アオが手ぐすね引いてそうなんですけれど。