聖剣の姫と神盟騎士団 (6) (角川スニーカー文庫)

【聖剣の姫と神盟騎士団(アルデバラン) 6】 杉原智則/Nidy‐2D‐ 角川スニーカー文庫

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将軍アグロヴァ率いるカーラーン軍の猛攻撃に、撤退を強いられたダークたち。まるで歯が立たない相手を前に、ダークはカーラーンに「寝返る」ことを画策する。一方、ラグナの谷には、離れ離れになっていた聖剣団のメンバーが集結し始めていた。しかし、反撃のためには、フィーネの力、そしてダークの戦略が必要不可欠で!?果たして、ダークとフィーネは再び力を合わせ、運命を切り開くことができるのか!?
ダーク、これ掛け値なしに見事な作戦ですよ。一番凶悪な策というのは、敵側に此方の作戦の意図が読まれたとしてもなお、その意図通りに動かざるをえない状況に追い込んでしまう、というものであり、ダークが仕掛けたのはまさにそれ。アグロヴァは、ダークの狙いをほぼ読み取りながらも、彼の抱く目的のためにはどうしても、ダークが仕掛けた「可能性」の罠に乗らなくてはならなかった。それでも、この元国王の将軍が恐ろしいのは、最悪目的を果たせなくても、根源地であるラグナの谷さえ潰してしまえば、聖剣団にとっても拭いがたいダメージになるだろう、と土壇場で肝を据えれてしまう所なのですが、さらにツッコむとそこまで割り切れるのならいっそ一切軍を割らずにそのまま攻め寄せるべきでもあったか、とも思うんですよね。思うだけで、いざ決断となると果たしてアグロヴァ以外にアレ以上の判断が出来るかというと非常に怪しいところなんですけれど。外部から見りゃ幾らでも言えるだろうけど、という状況なんだよなあ、これ。あくまで本命を谷側と見定めて追撃隊を最低限に押しとどめた将軍の決断力の方を褒めるべきなんだろう。実際、ダークの当初の目論見よりもだいぶ持って来られた兵数多かったみたいだし。
尤も、ここからのダークが仕掛けた二手三手がまた、アグロヴァという人間を読みきった上での手配で、今回のダークはキレにキレまくってた気がする。
尤も、そのダークの冴え渡る采配も、駒となる聖剣団の幹部たちがちゃんと言うとおりに動いてくれないと話にならないのだけれど……いつの間にか全員から一目置かれるようになってたんだなあ、ダーク。いや、マジでダークってあの幹部連中から実際どう思われてるんでしょうね。フィーネたちみたいに頭から信じ込んでいるわけではなく、ダークの心底がかなり小物っぽいというのはみんなそれなりに見抜いてたり伝わってたりしてそうなんだけれど、ダークの言にはみんなちゃんと耳を傾けて、じゃあその通りやってみようか、と納得して動いているあたり、面白いなあ、と。判断やら何やらを全部預けてしまうのではなく、ちゃんと自分で考えて自分を省みて、その上でダークの策を受け入れているあたりが、彼らの成長を意味してるんだろうけれど。
しかし、ダークの言葉ってなんであんなに琴線に触れるんでしょうね。本人的には心にもない事を口八丁でそれらしく言っているだけなのに。今回も、イアンが壁を突破し、ハスターとその弟も迷いを振り切りおのが誇り高き騎士としての道を見極められたのは、ダークの言葉がきっかけだったのですから。
さて、ダークの弁論術というのはあれ、何なんでしょうね。相手が欲しがっている言葉を見つけ出して与えているのか、それとも相手が気づいていない核心を貫く的確な助言であり指摘であり糾弾であるから、価値観や思想を揺るがすほどに心に届いてしまうのか。いずれにせよ、ダーク本人が思っているほど、適当にその場の乗りで心にもないことをしゃべっている、わけではないと思うなあ。あれで、ダークの本音や心情がちゃんと芯に入っているからこそ、言葉は心に届くのだろう。虚言でだまくらかされるほど、みんな早々チョロくはないよ。ただし、イアンは除くw 
そういう風に見ると、フィーネがあれだけダークの言うこと殆ど聞いていないにも関わらず、ダークを信じきって当人的にはダークの言うことに全部従っているつもり、というあの姿も何となくわかるんですよね。彼女は多分、ダークの芯の部分しか捉えてないし、眼中にないんじゃないかなあ、と。いやもうちょっと落ち着いて話聞いてあげようよ、と思わないでもないんだけれどさ、でも彼女が本当の意味でダーク本人よりも一番ダークの根っこの部分を見つけてるような気がすると、今回の話見ていて思うようになりました。

って、顔無しのリヴィとかかなり本気で存在忘れてたよ。そういえば居たっけ、不正規戦担当の忍者っぽい人。さすがは忍者、忍んでた忍んでた。そして、この人だけがグラジス団長の魂を取り戻すという目的の核心に届いていた、というわけか。他の連中、何だかんだと思うがままに暴れてただけっぽいもんなあ(苦笑
しかし、只人ならざる英雄であるグラジスが、こうも良いように魂を奪われ封印されてしまっていた、というこの状況は何となくですけれぞずっと違和感というかちぐはぐさを感じてはいたんですよね。特に、話が進むにつれてグラジスの尋常ならざる来歴が明らかになっていくに連れて、尚更に。
果たして、これほどの人物が、フィーネやダークの手によって魂を取り戻して、よくやってくれたありがとう、なんて感謝するような展開になるのかな、と。
でも、他に方法なんて考えられないし、聖剣団の部隊長たちと一致協力して、魂を取り戻すんだろうなあ、と何となく納得はしていたんですよね……まさか、こんな事になるとは、ほんと思ってなかったし!!
いや、実際グラジス団長が復活した場合、ダークの立場ってどうなるんだろうね、とは思ってたさ。思ってたけれど、思いの外部隊長たちとも違和感なく一緒の場所に居られてたし、フィーネとセットは揺るがないだろうから、何となくイアンやロア、ハスターたち次世代の連中とあわさって、上手いこと収まる所に収まるんだろうなあとは思っていたんだけれど……なんか、凄い爆弾ぶちかましてくれましたよ、最後に。
こ、これで第一部の終了ですか。なんかこう、怒涛の展開じゃあ。
未来を暗示する見開きのイラストに、なんだかこう息を止めてしまいます。いったい、どういう展開になっていくんだろう。これは、楽しみでもありハラハラと緊迫感もあり、第二部早う早うッ。

シリーズ感想