バー・コントレイルの相談事 (富士見L文庫)

【バー・コントレイルの相談事】 小竹清彦/しのとうこ 富士見L文庫

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横浜の路地にひっそりと佇むバー・コントレイル。「バーに入るのはまだ早い」なんて思っていた、ちょっと引っ込み思案な社会人2年目の志摩縁が勇気を振り絞って飛び込んでみたその店には、一見すると好青年、だけど不思議な雰囲気を纏ったバーデンダー・羽鳥慎がいた。初めて訪れるバーに緊張しつつも、羽鳥との会話とカクテルの味に引き出されるまま、自身の抱えるトラブルを打ち明けた縁。そんな彼女に、羽鳥はバーテンダーならではの観察力と洞察力で、思いもよらぬ解決策を提示し…!?
自分、酒は飲めないのでそもそも居酒屋ですら飲み会くらいでしか行かないので、さらにお洒落なBARなんてものにはてんで縁がないのですけれど、だからこそ関わりのない空間を覗き見る、という読書における楽しみを得る事も叶うというもの。
全く無知なだけに、BARでも普通にビールとか飲めるのね、という多分常識な部分から驚けていたりする。
そんでもって、また「料理」が美味しそうなんだわ。BARで出てくる、しかもメニューに載っているものだけではなく、お客の曖昧なリクエストから作り出されてくる料理なだけに、イタリアンをはじめとしたおシャレで品の良さそうな料理ばかりなんだけれど、これが実に垂涎もの。空腹を誘うというよりも、口の中の舌が味を求めて切なくなるみたいな?
そんなお酒と料理を肴にして、気心の知れた飲み仲間たちと過ごす居心地の良い空間。相変わらず、この人の描き出す人間関係は、安息のような安らぎに満ちている。べったりといつまでもひっついているような仲間意識ではなくて、約束するでもなく自然と集まり、同じ時間と空間を共有し、謳歌する。でも、その場限りの関係ではなく、酒をきっかけに育まれた友情は、それぞれの人生、それぞれの生き方に手を差し伸べる事を厭わない。
凄く、素敵な関係なんですよね。
夜のBARを舞台にしているにも関わらず、まどろむように温かな空気に包まれている。
縁の苦しみも、フライ屋の娘さんの悩みにも、そして縁がずっと抱え込んでいた家族へのシコリにも、みんなが親身になって話を聞き、真剣に話し合って、その解決を一緒になって喜んで……。
生きることに充実している、というのはこういう日常を得ている事を言うんだろうなあ。
お酒は殆どのまない自分ですけれど、カクテルに対するこだわりや歴史、薀蓄なんかは凄く面白かったです。こういうのは、実際飲んでこそ、と言われるのかもしれませんが、話を聞いているだけで楽しい、というのも本当なんですよ。

小竹清彦作品感想