ログ・ホライズン 8 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき

【ログ・ホライズン 8.雲雀たちの羽ばたき】 橙乃ままれ/ハラカズヒロ エンターブレイン

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マジックバッグを入手するクエストのため、トウヤら年少組はアキバを離れてはじめての五人旅に出発!
訪れた村や町で<吟遊詩人>の五十鈴を中心に音楽を演奏するライブツアーのような旅路。
そんな道中に出会ったのは、昼が苦手な<吸血鬼>ロエ2、旅の物書き<大地人>ダリエラ、元の世界へ帰ることを至上目的としたオデッセイア騎士団。
初めての旅と出会いが、五人にこれまでと違った世界の景色を見せる。
胸が高鳴るまま、西を目指して進む年少組の成長と変貌!
なんだか、いろんな側面から胸を締め付けられる今回の一連のストーリー。同じ世界に生きながら、これほど見ている景色が違うものなのか。違いこそ多様性なんだろうけれど、そこに広がりを見るのではなく、閉塞を戴いてしまっているナンバの「Plant hwyaden」の人たちや、生きている事実すら否定したがっている望郷派のオデッセイア騎士団の有り様が、胸を締めつける。そんな考え方は間違っているだろう、と指摘するのは簡単だけれど、彼らの苦しい思いを安易に否定して良いものか。彼らもまた苦しんで苦しんで、あがき続けているのだから。でも、それが既に狂気の淵に足をかけてしまっているのなら、何とかして解放出来るようにしてあげるべきなんだろうけれど……。
人が、当たり前のように幸福を抱ける事のなんと難しいことか。簡単だけれど、簡単じゃないのよね。シロエが円卓を作ってアキバに街に蔓延っていた停滞と閉塞を吹き飛ばしたように、彼らの苦しみを何とか出来たらいいのだけれど……にゃん太班長をして、彼らの慟哭に立ち尽くさざるを得なかった事が辛かった。にゃん太班長の人生訓には、どんな人間だろうと境遇だろうと解きほぐす熟達した賢知があると信じてたからなあ。
あのにゃん太班長ですら無力感に打ちひしがれる、そんな痛みにどう向き合えばいいのか。
その答えの一つとなるのだろう鍵が、きっと同時進行で描かれた、トウヤたち年少組の笑顔と幸せに満ちた旅だったのではないでしょうか。何をしても楽しく、充実して心満たされる日々。笑いに満ちた掛け替えの無い時間。方やこの世界を偽物と感じ、自分たちが異物でしかないと感じて絶望に身を浸しつつある者たちが居る一方で、同じ世界でそこに輝きを見出し、自ら輝かんとしている子供たちがいる。
何が本物で、何が偽物なのか。
図らずも、いや図った結果なのかトウヤたちと出会い旅路を同じくしたロエ2とダリエラという二人は、その素性を伺うならば、偽物の塊のような存在である。しかし、ロエ2と名乗り皆のお姉ちゃんを自認するこの女性を、ダリエラと名乗りトウヤに素顔の一面を覗かせて行った彼女を、まるごと偽物と切って捨てる事が適うだろうか。
そして、42しか歌が存在しないというエルダー・テイルの世界に、新たな旋律を届けた五十鈴の歌は果たして偽物だったのか。
少なくとも、五十鈴は何の覚悟も信念もなく42に区切られていた世界に安易に、そして自分のモノではない歌を伝え広めてしまったことに怯え、恐怖し、図らずも偽ってしまった事に苦悩しながらも、しかしそこで立ち止まらず、屈み込まず、彼女は本物になろうとしたのです。誰が認めるでもない、自分が「本物」だと信じ認められる自分になるために。

心押しつぶすような暗い影が多いつつある物語だけれど、五十鈴の指し示した勇気と子供たちが生み出し離さなかった輝きこそが、笑顔を絶やさぬ光へと続く道を切り開く可能性なのだと、信じたい。

しかし、いい加減クラスティさん、戻ってきてよ。リーザさんがリアルに死ぬからッ。ってか、リーザもあれ、リアルは高校生だったのよねえ。ミノリもスーパー中学生ですけれど、アキバ最大のギルドであるD.D.Dを一人で支えているリーザの手腕は、あれで十分スーパー高校生だと思うぞ。そんな彼女が潰れずに要られるのは、先のギルドの枠を超えた乙女同士の友情同盟のお陰と思うと、あのアカツキを中心とした乙女レイドのイベントは、本当に重要だったんだなあ。ってか、アキバの主要な女性プレイヤーが軒並み横でつながってるというのは、円卓を遥かに超える裏組織ですよねw

ロエ2については、先にシロエが別垢のキャラについて言及していたことと、あからさまにシロエと同じ見てくれと装備なことから、すぐにそれとわかったのですけれど、その「中身」については判断がついてなかったんですよね。アキバの大人たちの性格からして、密かにトウヤたち年少組の旅には誰かがこっそり見守ってるんじゃないかなあ、とは薄々思ってはいただけに、まさかとは思うけれどシロエがなんかして別垢を動かして同行してきたんじゃ、と疑ってしまったのは仕方ないかと。いや、女体化とか別垢を動かすとか出来るのか、というところから無理だよなあ、とは思ったんですけれど、以前召喚士が自分の召喚した魔獣に意識を移してかなり離れた地域で動かしていた、という事例が「海外編」であったものですから、可能性としては否定しきれなかったわけです。まあ、あのロエ2のハッチャケた性格は、シロエでは無理だな、とすぐに首を横にふる結果になったのですが。
それにしても、ロエ2の存在は海外編のコッペリア並にありえないものであると言えるのですけれど、本人の口からかなり重要なキーワードも出てきたからなあ。現在のところ、意味不明という他ない発言なのですけれど、これも9巻のカナミを主人公にした海外編に触れることで、いくつか紐解かれていくことになるはず。
一応、アニメ放映中には次も出るはずだし、そこまで手薬煉引いておきますか。

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