祓魔科教官の補習授業2 優等生は振り向かない (一迅社文庫)

【祓魔科教官の補習授業 2.優等生は振り向かない】 すえばしけん/NOCO 一迅社文庫

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異世界との亀裂から現れる異形―魔禍魂を狩る“祓魔技能士”を養成する天原学園。教官を務める“常人”にして最強の祓魔技能士、日垣悠志朗は、稀有な才能や能力を持つドロップアウト組5人の生徒と合宿を行うことに。しかしそこでは、フィオと因縁浅からぬ男と、謎の組織が暗躍していた―学園育成祓魔バトル、第2弾!
あかん、すえばしさんが本気出すと最初から最後まで胃がキリキリなりますわー。この人【スクランブル・ウィザード】でキッチリ前科がありまして、政府の暗部やアウトサイダーのダークな部分を容赦なく引っ張ってくるんですよね。お陰様で、いつどの登場人物が惨たらしくまともな死に方じゃないような最期を迎えるかわかったものではないので、ハラハラを通り越して胃がキリキリ締め付けられる始末。今回、悠志朗の友人として登場した医師の猪浦先生や、その助手で悠志朗やその義姉のかがりとも古い付き合いのある琴羽さんなんか、モロに標的になりそうだったわけですよ。案の定、暗部サイドの傭兵部隊に身柄を狙われ、手段を選ばないそのえげつない姿勢に、いつ場面変わってバラバラ死体になって主人公たちの目の前に、とか首だけ梱包されて送られてきたり、とかいうサイコな展開になるのか恐々としていたのです。普通なら、間一髪助けに来てよかったね、で終わるんですけれど、その辺いい意味で信用してませんからw
まあこれ、猪浦先生か琴羽さん、どっちかはヤバいなあ、と。二人共医療を志し、人を癒やす事に人生を捧げている立派な人だけに、尚更にフラグ立ってるなあ……、となんかもう暗澹たる気持ちになりながら読み進めていたのですが……。

ぎぃやぁーーーーーーーーーーーーーー!!www

もうやだこわい。

あかん、予想以上どころか完全に死角からブスリとやられて、そのままグリグリと脇腹を抉られたような有り様ですわ。違う意味で怖くて涙目だわぃ!!
これはちょっと、本当に頭の片隅にもなかったので、泡吹きました。この作品、ヤバいわ。いい具合にイカレてる。悠志朗やかがりが人間としておもいっきり欠落しているのは前巻で見せつけられたところですけれど、いひひひ、いやああそこが振り切った限界点であって、そこからもうちょっと落ち着いて、というか範囲を限定してカウンセリングじゃないんですけれど、花耶が徐々に悠志朗の狂気を解きほぐし、欠落を埋めていくのだと思ってたんですが……あかんこれ、狂乱博覧会の様相を呈してきたw
神和、本気で全員ヤバいんだ。頭おかしくなってるんだ。この人達が怖いのは、一見して正常であり、それなりに日常に適応し、体制側にキッチリ収まっていながらも、人間として完全に破綻してしまっている所なんですよね。制御されてない暴走している狂気なんて、これに比べたらただ暴れてる動物だわ。ふとした瞬間にヌルリと湧き出してくる狂気が、正気と並列していて、なおかつそこに全く自分で違和感を抱いていない時点で、本当にヤバい。怖い、泣きそうw

ただ、面白いのが今回、かがりさんという悠志朗の破綻を助長させている狂人に対して、花耶は対決姿勢を露わにしているんですが、どうもその手段が悠志朗の周辺からの排除、という形ではないっぽいんですよね。花耶自身はまだ何も具体的に考えていないと思うのですけれど、琴羽の途中で途切れてしまった昔話からは、かがりがもはや後戻り出来ないまでに狂ってしまった存在とは言い切れない事が示唆されているわけです。
この作者さんは、面白いことに弱い者を一方的に救われるべき存在とは見なさないんですよね。むしろ、強い者こそ、見捨てず、見放さず、切り捨てず、手を差し伸べようという試みを感じるのです。絶対的強者であることが、同時に誰にも救いを求めずにいられる存在であるのか。強いからこそ、誰かの助けを必要としているんじゃないのか。その時、そんな絶対強者を助けてくれる人は、手を差し伸べてくれる人は誰なのか。
自分は、1巻の最後の場面で、かがりがラスボスとなるであろう展開にゾクゾクすると同時に、ラスボスとなるからこそ、彼女は倒されるんだろうなあ、と思ってました。
悠志朗を救うために、かがりは排除されなければならないんだ、と思ったのでした。
でもね、【スクランブル・ウィザード】で、作者は完全に破綻し狂気に身を任せ、殺戮者になろうとした能勢という人物を、しかし最後まで見捨てなかった。彼を単なるヤバい敵にせず、最後の最後までその手を離さなかった。
それから、この2巻。新たな神和は、悠志朗やかがりと同じく欠落した狂人でありながら、既にその手を握って貰っている人でもあったわけです。
そして、花耶はラストシーンでかがりに対して、真っ向から宣戦布告してみせた。かがりのそれも、悠志朗のそれをも皆指摘した上で、すべてを受け入れた上で、対決姿勢を露わにしてみせた。あれを見た時、思ったんですよね……ああ、かがりは切り捨てられなかったんだ、とね。
こう言っちゃなんですけれど、もうこれでこの作品の主人公は花耶ですよ。そして、ヒロインは悠志朗であると同時に、かがりにもなりました。ダブルヒロインですよ。あの宣戦布告で、花耶は悠志朗だけじゃなくかがりの同時攻略が必須になってしまったわけですし。むしろ、かがりをどう落とすか、という話になったとすら言えます。失敗すれば、文字通り惨殺されて排除されかねない、という危険度ルナティックな攻略なのが、もう色んな意味で鳥肌です。
ヤバいヤバい、期待以上に面白くなってきた。これはいい具合にキマって来ましたよ。

1巻感想