浮遊学園のアリス&シャーリー3 (オーバーラップ文庫)

【浮遊学園のアリス&シャーリー 3】 むらさきゆきや/しらび オーバーラップ文庫

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浮遊学園都市《楽園(カナン)》には、特有幻想(ディアレクト)という異能に覚醒した幻想具現者たちが集められて暮らしている。
幻想具現者から自我ごと《幻想結晶(アゾート)》を奪おうとしたベルモンドとの戦いから一週間。
傷も癒えた柾貴は、相変わらずアリスとシャーリーの住むマンションに通い、手料理を振る舞っていた。
ところが、前の戦いの最中に現れた《最強計画(プロジェクト・ワン)》と呼ばれる謎の少年――トゥエルブが再び現れる。
規律委員会(ブレイカー)会長の須旺とも浅からぬ因縁があるようだ。激突必至!! 料理で勝負!?
その頃、入院しているはずの氷梨は《楽園》の中枢機関、管理塔(アドミニストレイター)のなかで目覚めていた。
紅茶とお菓子の異能学園バトルシリーズ、第3幕はレベル7の料理対決!?

須旺先輩、もはや料理人としてしか活動していないんだが、同じく規制委員になってるはずの柾貴もひたすら料理しかしておらず、アリスとシャーリーもひたすら食べているばかりだったので、これなんて料理小説?
トゥエルブの登場によって、また切った張ったがはじまるのかと思ったら、何故かトゥエルブとのガチンコ対決ではなくトゥエルブに誰が一番美味しいと言わせる料理を作れるか、という文字通りの料理対決になってるし。
いや、いいんですけどね。人造人間として造られた存在……なのかもしれない、人間味のない人形みたいな無味乾燥な少年に、生きているという実感を与える方法が殴り合いなんて野蛮なものじゃなくて、美味しいものを食べさせてあげて、舌から胃から感動させ満足させてあげることであった、というのはとても素晴らしい事じゃないですか。
須旺先輩の仕切りと頼もしさはたまらんですね。こういう目標となりうる尊敬する兄貴分がドンと居座ってくれていて、なおかつ主人公を対等の相手、ライバルであり相棒として扱ってくれる、というのは当事者である柾貴からすると感動モノなんだろうなあ。柾貴って、シャーリーとの幼い頃からの関係から、自立して周りに頼らないようにすることを自分に課し続けてきた男の子でもあるので、こうやって頼りにできるヒト、それでいて自分を一端の男として、料理人として認めてくれる人なんて居なかっただろうし。アリスとシャーリーという自分を頼り信頼してくれる女の子たちが居て、その上で須旺みたいな先輩が居てくれるというのは、これこそリア充ってなもんでしょう。まあ、柾貴はそれに相応しいイイ男なんですけどね。
だから、須旺先輩がモテるというのはもう必然と言っていいくらい当然な話なんですけれど……その分、えらい面倒くさい女も引っかかるわけで。話を聞く限りではキッチリとフッてるしあしらい方も間違ってないはずなんだけれど、何しろ相手がちゃんと話を聞かないし、独り合点するし、現実は無視するし、というどないしようもない人なので、これはもうどうしようもない。
こういう人がストーカーになるんだろうなあ。ただ、そのストーカーがなまじ天才だったりすると、えらいことになるわけで……その結果としてトゥエルブが生まれてしまったのだとしたら、その生誕からとばっちり。生き方すらもまともな人間として扱われず、それがどんな酷いことかも気がついていない、という境遇は悲惨の一言。だからこそ、その途中に須旺と柾貴の料理に出会えた事は幸運だったんだろうなあ。
無理やり針鼠の皮を被らされていたトゥエルブ、その皮を脱げば現れたのは純真と言っていいくらい素直で真っ直ぐな心根を持った男の子。
こういう子が不幸にならず、みんなが笑顔で美味しい料理を食べられるエンディングは、それで十分満足です。こういうのは、シャーリーのあっけらかんとしたご飯をたくさん食べて笑顔になって元気溌剌、という在りようを見て幸せになるのと、大枠で同じことなんですよね。それで十分、それでお腹も胸も一杯です。
と、そこで終わらず、行方不明扱いだった氷梨ちゃんが、鍵となって最終局面へ一気に流れていくわけですが……いきなり次が最終回。2巻連続敢行であります。
……しかし、理一さんはあくまで男なのか……男なのか。

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