メイデーア魔王転生記 (2) ―俺たちの魔王はこれからだ。― (富士見ファンタジア文庫)

【メイデーア魔王転生記 俺たちの魔王はこれからだ。 2】 かっぱ同盟/るろお 富士見ファンタジア文庫

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かつて異世界メイデーアに恐怖をまき散らした最強の三魔王―トール、マキア、ユリシス。二千年の時を経て、故郷に舞い戻った彼らは、今は王都に滞在していた。前世での悲劇的な結末から、かつての妻である緑の巫女と距離を置こうとするユリシス。そのことで落ち込む彼女のため、二人の仲を取り持とうとマキアは決意する。一方トールは、王都を騒がす謎の連続殺人鬼エスカの捜査に追われていた。現場に残された手紙から、エスカの狙いが三魔王だと推測した彼は、マキアを守るため駆け回るが…。過去と立ち向かう、魔王たちのリベンジファンタジー!
エスカ、その外見はどう見ても怪人じゃないかw 特に歯並びのギザギザっぷりが。
外見も言動も、これは誤解されても仕方ないだろうという振る舞いなのですけれど、むしろ彼の場合は他人からどう見られても構わない、という考えのもとに動いているから些か質が悪い。ただ、そういう人だと理解が及べばわかりやすい人でもあるんですけどね。 聖灰の大司教としての過去生を知っていると、今の彼の生き方はなかなか感慨深くもあるのですが、それが語られるのはかなり先だろうからなあ。
生まれ変わっても、同じ人を好きになって一緒になりたいですか?
前世からの運命というと、どこか束縛や檻、決められて違う道を選ぶことが出来ない、などどこか窮屈な、縛られているような閉塞感を感じてしまうものなのですが、この作品における転生や前世からの絆というのは、どこかゆりかごのように柔らかく暖かく感じられるものなんですよね。
かつて、前世において白の賢者と緑の巫女として結ばれたユリシスとペルセリス。息子であるシュマにも恵まれ、幸せだった彼らの前世は、ですが白賢者が勇者に殺された事により悲劇といって差し支えない顛末を迎えてしまいます。
哀しみと苦しみによって彩られた記憶。ユリシスとペルセリスが再び結ばれるということは、もう一度あの時の悲嘆を、絶望を味わうという事でもあり、ユリシスとしては彼女を愛しているからこそ余計に彼女と結ばれる事を願うのを躊躇われてしまう状況だったわけですけれど……。
純真無垢な幼い少女なれど、愛は強し、女は強し、なんでしょうか。魔王クラスの中でも特に達観と老成しているユリシスを包み込むほどの、ペルセリスの愛は大きく深いものでした。むしろ、変に妖艶だったりするよりも、幼妻強し! というべきか。幼妻! 幼妻!!
ただ、ユリシスとペルセリスの過去生を知ることで、より深い衝撃と傷を負ってしまったのは、過去生の記憶を取り戻したペルセリスではなく、マキアの方だったりするんですよね。紅魔女の犯した大罪、それは後々に至るまでマキアを縛り付け、苦しめ、彼女の行く末に決定的な意味を持つことになるのです。
まあ誰が悪いって、この悲劇の引き金を引いた勇者……ではなく、回りまわってトールが悪いんですけどね。全部トールが悪い! 紅魔女が大罪を犯すことになった要因を、苦しみを、哀しみを、その奈落のような愛の深さを知れば知るほど、トォルゥ、と蹴っ飛ばしたくなりますよ、この野郎。
純真無垢なペルセリスにしても、アッケラカンと天真爛漫なマキアにしても、傲岸不遜なシャトマ姫にしても、その過去生からの愛の持ちよう、深さ、そして収め方、振るい方を知ると、この作者の女の情念の描き方の美しさ、切なさ、柔らかさ、儚さを思い知らされる思いなのですが、この2巻ではその端緒とも言うべきペルセリスのそれと、シュマという絆によって往還する家族愛の胸を締めつけるような熱をじっくり堪能するのでした。
それ以上に、ユリシスとペルセリスの、トールとマキアのイチャイチャっぷりに、胸焼けさせられるのですけどねw

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