灰と幻想のグリムガル level.4 導き導かれし者たち (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.4 導き導かれし者たち】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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「驚かすなって、モグゾー」「ごめん、ごめん」
モグゾーは、あはは、と笑って頭を掻いた。でも、ものすごい血だ。血まみれで、表情もよくわからない。だけどまあ、なんとか平気そうだ。
大きな戦いを乗り越えたハルヒロたちだが、助けられなかった仲間もいて、喜んでばかりもいられなかった。
そんな中、予想外の活躍をしたことで、他のチームから引き抜きの誘いを受けるメンバーも。
リーダーとして悩むハルヒロは、改めて自分たちがどうしたいのかという想いと向き合ってゆく。
灰の中から生まれた冒険譚は、いま新たなステージを迎える!
このあらすじは卑怯だよ。絶対に無理だと突きつけながら、一縷の望みを強要してくる。あるはずのない希望をこれみよがしにチラつかせて、ジリジリと焼き焦がす。そして、改めて絶望を突きつけるのだ。
ハルヒロをして、パーティーの中で一番替えの効かない絶対に失ってはいけないメンバーと言わしめたその人であるモグゾーを喪ってしまったハルヒロたち。寄りにも寄って、である。
ただ、これを成長と言っていいのかわからないけれど、思いの外みんな今回の損失を引きずらなかったんですよね。自分は、ハルを含めてもっとみんなマイナス方向にメンタルがどん底に落ち込み、後悔と自己否定の渦に入り込んでしまうのかと思っていたのだけれど、みんな物凄く悲しみはしても、喪失感に落ち込みはしても、そこからズブズブと沈んでいってしまうことだけはなかった。例外は、事実上自分のミスでモグゾーを死なせてしまったメリィくらいのもので、ハルヒロなんかあの戦いに参加することを選んでしまった事をもっと後悔して酷い事になると思ってたんだけれど……。
幸か不幸か、かつてマナトを喪ったという経験が、チームの面々に耐性を与えていたのだろう。悲しみはある、感傷も抱える、しかし立ち止まりはしても彼らはそこから後ろに下がることだけはしなかった、割り切る事を覚えていたのだ。
その意味では、ハルヒロの考えは間違っていたとも言える。本当の意味で、喪ってチームそのものが瓦解してしまう人物は、多分ハルヒロ、なのだろう。
盾役であるモグゾーがいなくなり、チームとしての戦術が崩壊し、以前は楽に倒せていた相手もマトモに対する事が出来なくなった挙句、個々に他のチームからその実力が認められて引き抜きが掛けられた時、もう先がないと誰もが思ったこのチームに、しかしみんなが離れず戻ってきたのは誰あろうハルヒロが居たからなんじゃないだろうか。モグゾーではなく、ハルがもし居なくなっていたら、果たしてこのチームは新たなリーダーを立てて進む事ができていただろうか、と思い描いた時に、どうしてもその絵を描くことが出来なかった。本当の意味で替えが効かないのは、モグゾーではなかった……と言ってしまうのはあまりにも悲痛な事なのだけれど。
マナトを喪った時、ハルヒロがリーダーを継いだのはそうしないと、チームの誰も生き残る事が出来なかったからだ。それ以外に選択肢がなかった、といえる。しかし、今回モグゾーを喪った時、皆にはチームを離れる選択があった。それでもなお、彼らが今の仲間たちを選んだのは、だからただ生きるためではない。
一緒に生きるのだ、という絆が生まれていたのだと思えば、なんだか感傷的な気分になってしまうのだけれど。
相変わらず、ランタについては死ね、としか思えないのだけれど。それでも、ハルを含めて彼のことを嫌いながらもみんながランタへの対処法を確立してきていて、必要以上に彼に対して感情のエネルギーを浪費しないようになっているのも、これもまた成長というものなんだろうか。虚しい。
そんな中で、新たに加わった盾役のクザク。……技量云々もそうなんだけれど、盾役ってのは見た目も大きいのよね。縦にも横にも幅があり、ドスンと重みがある、揺るがない厚みがある。そんな見た目だけで、後ろに居る人達は安心感を覚えて、余裕が生まれ、行動にキレが出る。クザクの未熟さが露呈すればするほど、モグゾーがいかに理想的な盾役だったかを思い知らされるのだけれど、誰もがモグゾーとクザクを内心で比べてしまっているのだけれど、みんな言っても仕方がない事、モグゾーが居れば、というたぐいのセリフだけは決して表に出さないあたり、本当に大したものだと思う。それでも、クザクの未熟さは叩いていかないと行けない類のものなんだろうけれど。
ハルが度々気になっている部分を解消したら、もしかしたら劇的に変わる可能性はあるのかもしれないけれど。
這うように、足を引きずるように、しかし彼らは前に進んでいく。その歯を食いしばる重い足取りが、今はただ愛おしい。

シリーズ感想