百錬の覇王と聖約の戦乙女 (6) (HJ文庫)

【百錬の覇王と聖約の戦乙女 6】 鷹山誠一/ゆきさん HJ文庫

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勇斗の前に突然現れた、神帝シグルドリーファ。
ユグドラシル全土に君臨する彼女が幼馴染みの美月と瓜二つであることに驚きながらも、勇斗はお忍び中の彼女を宮殿でもてなすことに。
彼女から現代に帰る手がかりを聞き期待を膨らませる勇斗。だがそのとき、虎心王ステインソール率いる《雷》の軍勢が襲来!
勇斗は新たな奇策をもって迎撃に挑むが!?
これはまた、勇斗の目標としていた大前提そのものをひっくり返す大どんでん返しに打ってきた。現代への帰還をずっと望んできた勇斗にとっては、ある意味これ現代に帰れない、と決定されてしまうよりも厳しい選択を突きつけられる事になる。出来ないから仕方ないという消去法でも、どちらも選べないという消極的な選択でもなく、これは彼自身が現代人として生きるか、それとも宗主として生きるかの人生の選択を問われる事になるのだから。
尤も、まだ両方の世界を行き来する事が出来る可能性は残っているのかもしれないけれど、さすがにそれは甘すぎるもんなあ。
一代で狼の氏族を大きくし、周辺諸氏族も取り込み一大勢力へと育て上げた巨大なカリスマが、如何な自分が居なくなった後のことを考えて準備していたとはいえ、実際に居なくなってしまえば果たして大勢力をまとめる人材も居ない中で瓦解せずに済むものか。
彼を取り除けば勝利は容易とする豹の彼女の視点は、ただ正面から勇斗を打ち破ることに拘っていた男たちよりも真を突いていると言える。尤も、ステインソールも小物兄貴も、氏族の勝敗や繁栄なんかよりも単に男の沽券をかけて挑んでいただけだから、勇斗と戦う事が目的なので、戦わずして勝つなんて視点は端からなかったのだろうけれど。

ステインソールとの対決は、前回は水攻めという奇策で倒したものの、あれは何度も使える手じゃないですからね。一体あの一人戦国無双にどう立ち向かうのかと思っていたのですが、見事な成功法で。一騎当千の兵に千騎分の働きをさせるのではなく、どう強かろうと戦場というフィールドにおけるただの一個人へと落としこむ。陣形と戦術と作戦によって、見事にステインソールの無双を限定してみせた勇斗の帥の器がよく見えた一戦だった。ただステインソールは個の武勇だけではなく、あれで将としても非常に優れてるんですよね。だから、個の力を封じても「雷」の氏族の軍力が著しく衰えるわけではないのは辛い所。
とはいえ、想定外の事態においても、機を見失わず自ら前線に繰り出す勇気と応用力も示してみせてくれたわけですし。ロプト兄貴の、あの横槍のタイミングは抜群だっただけに、尚更それで戦線を瓦解させなかった勇斗の将器が目立つわけです。
現状、勇斗を戦場で倒すのは決戦と言っても良かったこの合戦で勇斗を圧倒的なかった時点で非常に難しいだろう。だからこそ、シギュンの一手は一撃ですべてをひっくり返したわけだ。
これからは、残されたスマホを使って、という事になるんだろうけれど、果たして誰が勇斗の言葉を伝え、皆をまとめるのか。もめるぞー。
いっそ、リーファをひっ攫って担ぎあげたら、少なくともお神輿としてはこれ以上のものはないのだけれど、まあ無理か。
そのリーファだけれど、もっと深刻な事情、それこそ世界を支える儀式かなんかで身を犠牲にしなければならない、とかを抱えているのかと思ったら、もっと俗事だった。これは、外から介入できるだけの力を蓄えれば何とでもなる一件だわなあ。

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