神楽剣舞のエアリアル 2 (GA文庫)

【神楽剣舞のエアリアル 2】 千羽十訊/むつみまさと GA文庫

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「フラン、なんか実入りのいいバイト、ないか?」
ある理由でお金が必要な雪人たちに、フランの父が依頼したのは、幽霊船退治!?
フランの師匠グレンの航空帆船に乗り、捜索を開始する雪人たち。しかしそこには、二百年前の四英雄と魔王の大戦の生き残り――〈悪夢の眷属〉の暗躍が裏にあった。

「――俺は、フランを信じる」
かつての人類の希望が絶望に変わる時、雪人は想いの全てを刃と化す。
「東方退魔機関第三位、妖刀使い、甲斐雪人――最大の敬意をもって、斬らせてもらう! 」
天空の下、魔術と剣戟が加速する異世界バトルファンタジー第2弾!
風夕とルナがロリロリしているせいかマスコットキャラみたいな雰囲気になってて、自然とフランが正ヒロインみたいな雰囲気になってるけど、いいのかこれ。
うん、キャラ同士の掛け合いとか、ほんと面白いんですよね。フランの親父さんにお仕事貰いに行くまでの冒頭の話の持って行き方なんかも、天丼のやり方とか上手いんですよね。今回のお話の筋立てなんかも、紆余曲折からの二転三転して帰結に至るまでの流れも、プロット的には良く練られてる。アクションもエッセンスの効いた派手さがあり、見栄きりも盛り上がりどころを押さえていて、気合が篭もるに足るだけの理由もあり理屈あり想いもあり祈りもある。
こうしてみると、素材から料理法からほとんど文句なしなんですよね。実際面白い、面白いんだけれど……ここで、ちょいと一巻でいきなり最終決戦からぶっこんでしまった弊害が出ているような気がする。それとも、これは要点のみを押さえようとしてしまう作者の特性によるものなのか。
つまるところ、バックグラウンドがちと足りない気がするんですよね。背景となる世界観の説明が紹介が、いささか足りない。なまじ肝心の部分はちゃんと解説されてたり、話の遡上にのぼっていたりしているものだからそれで充分世界観を理解したような気になれるのかもしれないのだけれど、逆に言うと肝心な部分しか描かれてないとも言えるんですよね。国際情勢やフランの家が貴族として担っている国の様子、そこでのフランの家の立ち位置、〈悪夢の眷属〉が世界に及ぼしている脅威など、表面上はさらっと触れてはいても、実感として異世界を感じるだけの「細部」が物足りないんですよね。生活感を感じる日常風景、街の様子、かつての大戦が今に残している影響など、とかね。そのせいか、ルナが今回の一件で抱く悲痛な想いや、彼の人の裏切りの背景、〈悪夢の眷属〉の邪悪さなど、表面上では理解できても、実感として感じにくくなってて、物語を楽しむにおいてのめり込み内側から面白さを堪能する、という風にはいかなくなってるんですよね。表面をさわさわ撫でるに留まってるような、奥に入り込めないもどかしさがある。
これが、単に何も考えずに済むような本当に薄っぺらいだけの作品なら物足りなさを感じる以前に醒めてしまうのだけれど、そうじゃないからもどかしいんですよね。背景を感じられるからこそ、そこに手を付けない足を付けない感覚がもどかしい。
見当違いかもしれないけれど、もっと無駄と言っていい描写があってもいいんじゃないかな、と。
ゲオルグさんグレンさんとか、おっさんがいい味出してる上で、自然で肩をはらない雪人と、フランやルナや風夕とのやりとりなんか、凄い好きなんで、余計に盛り上がり切れてないのが勿体無いんですよねえ。

1巻感想