生ポアニキ (オーバーラップ文庫)

【生ポアニキ】 アサウラ/赤井てら オーバーラップ文庫

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鍛えろ……筋肉は裏切らない!

半不登校で孤独な生活を送る木村ユースケは、カウンセラーの勧めで新たに設けられた『恋愛生活保護』を申請した。
これで相性の良い自分好みの女の子が現れて、幸せになれる…はずだったのだが、約束の日、家に来たのは女の子ではなく、一糸まとわぬマッチョな爛▲縫瓩世辰!
一方で本来現れるはずの鳳来寺(ほうらいじ)ユリは転校生として現れるも、ユースケの好みとはことごとく違う。
家に住み着いたアニキ、ユースケを拒絶する転校生(ユリ)、そして秘密を抱えて近づくクラスメイト・松笠(まつかさ)アザミ…。
謎が謎を呼び、アニキの汗がほ とばしる! 果たしてユースケに恋人は出来るのか! ?
全ての答えは筋トレの先にある!
少年少女と一人のマッチョが織りなす健全なる物語。
ハイテンション・マッスル・ラブコメここに交付! !
マッチョ! マッチョ! 
一つの食卓を引きこもり少年と美少女と裸のマッチョと囲む生活。勿論、料理を作ってくれるのはアニキだぜ?
……これが美味そうなのが悔しいです。アットホームな雰囲気なのが狂気です。裸エプロンのマッチョがにこやかにマッスルポーズを決めている横で、健康的で美味しいご飯を綺麗な女の子とパクツク構図は、ベン・トーのそれを上回るカオスなのだけれど、アサウラさんのメシウマ描写はどんな状況でも関係なしだね。色んな意味ですごすぎる。
いや、正直あの白粉花さんご推薦ということで、もっとイケない感じの汗が飛び散り交じり合うような、サイトー刑事が括約筋で活躍するような話なのかと、戦々恐々ちょっとワクワクしていたのだけれど、意外に真っ当なノンケなストーリーで安心するやら何とやら。これをノンケで真っ当と感じる時点でちょっとヤバいのかもしれないけれど、ぶっちゃけ白粉花先生が手掛けるアレ以外は流石にウケツケませんから。
逆に言うと、白粉花先生の刑事サイトーシリーズはガチムチなのに本気で面白そうなのが、マジで怖いです。……怖いもの見たさ! という微妙な期待が、この作品に対してハラハラしてしまう要因だったのですが。
とはいえ、ノンケとはいえ本作のヒロインの一人がアニキである事は疑いようのない事実。その出会いはまさに運命。箱詰めで送られてくるアニキ。箱をあけると、そこには全裸のアニキが。アニキと筋トレが、少年の生き様を変貌させる。これこそ、まさにボーイ・ミーツ・マッチョ。筋肉は嘘をつかず裏切らないというのなら、筋肉の塊であるマッチョなアニキも嘘をつかず、裏切らないということ。そのマッチョなアニキの親身で愛情の篭った共同生活が、ぶよぶよに弛緩し腐り果てようとした少年の身と心に筋肉の繊維を通す、という真っ当な成長物語。
とはいえ、アニキだけではやはり潤いがかけるので、肌的にはつやつやするかもしれないけれど、メンタル的にはいけない方向へ突き進んでしまうかもしれないので、そこはそれ、ちゃんと女の子という潤いも。
このままじゃいけないのだと、今までの自分を変えるために自分で選び取った一歩。『恋愛生活保護』という選択は、ユースケにとってもユリにとっても、傷つき乾き途方に暮れたままどうしようもなかった二人にとって、すがりつく最後の希望であると同時に、勇気を以って掴みとった彼らの前進なのである。それは果たして、うまくいくものだったのかは、今となってはわからないけれど、ここに「アニキ」という要素が加わった事で、彼と彼女は最初の一歩を最後の一歩とすることなく、当初はわけのわからないままアニキに引っ張られ、煽られ、押されてのことだったかもしれないけれど、前へ前へと進んでいくのである。
自分を変えようとする行為と、それを芽生えさせ維持する意思は、やはり偉大だ。そして、見た目にもその成果が覿面にわかる筋トレは、その中でも一際輝いてる。筋肉が輝いてるんだよ!!

ただ、少しだけ物足りなかった点を指摘するなら……アサウラさんのメシウマ描写的に健康志向のローカロリー料理がほとんどだったので、脂っぽいギトギトしてカロリー高そうなものが食べたか……じゃなくて、読みたかった!! 幾ら素晴らしくて素敵でもアニキばかりだとうるおいが欠けてしまうように、どれだけ美味しそうでも健康的な料理だけじゃなく、たまには唐揚げとかカツ丼とかカップ麺とかもないと、やっぱり物足りなさが……。読んだ時の空腹感がやっぱり違うんですよね……。って、本に、読み物に、ライトノベルに何を望んでいるのか謎じゃ、とか言われそうだけれど、アサウラ作品についてはこれ、逃れられない業ですからっ。

アサウラ作品