かくて聖獣<ユニコーン>は乙女と謳う 1 (オーバーラップ文庫)

【かくて聖獣<ユニコーン>は乙女と謳う 1】 陸理明/クロサワテツ  オーバーラップ文庫

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ユニコーンに呪われた青年が、汚れなき乙女と出逢った――。

〈雷霧〉――それは世界を侵蝕する自然現象。唯一の対抗手段は聖獣と汚れなき乙女による攻撃のみ。
劣勢に苦しむ「西方鎮守聖士女騎士団」に、世界で唯一聖獣との意思疎通が可能な<ユニコーンの少年騎士>セスシス・ハーレイシーが招聘される。
男子禁制の騎士団で彼が出会ったのは、万能型の天才美少女騎士、タナ・ユーカーだった。
「ここは男子禁制ですよ……あなた、変質者ですか! ! ?」
ユニコーンと乙女が戦場で舞う――『小説家になろう』とコラボした第1回オーバーラップ文庫WEB小説大賞“銀賞"受賞作。全編大幅改稿で書籍化!
ついにファンタジーでも絶滅戦争末期戦に特攻部隊というネタが来ましたか。生存率ほぼ一割以下、出撃すればほぼ間違いなく殉職するため、つけられた名前が自殺部隊。それでも、彼女らの雷霧への特攻による核の破壊がなされなければ、雷霧は拡大を続けて国土を飲み込んでしまうという行くも地獄、行かぬも地獄の阿鼻叫喚。当然、騎士団への志願者など皆無に等しく、人員は法による強制徴募。
よくまあ、これまでモラル崩壊してしまわなかったものです。ほとんど崩壊寸前だったみたいですけれど。
彼女らが騎乗するユニコーンの方は、魔力がなくならない限りは雷霧での落雷にも、内部の怪物たちにも傷つけられないようなのですけれど、それはつまり自分は無事なまま乗せた乙女たちばかり死なせ続ける、という経験をユニコーンたちもしているわけで、精神をやられてるユニコーンも少なからず居るという始末。
まあ、このユニコーンどもが清純無垢な乙女の守護者、という表向きとは裏腹に、中身は単なるスケベ親父どもなんですけれどね。昨今描かれるユニコーンって、わりとこの手の中身は残念系が多いよなあ。

さて、主人公の少年騎士セスシスなのですが、少年というのは外見だけで、中身の方はかなり草臥れてる。ユニコーンの王との契約によって経年劣化してないだけで、メンタルの方は長い後悔によって随分疲弊してるんですよね。正直、若々しさはあまりない。乙女たちに対する姿勢も完全に年長者のもので、彼女たちから向けられる好意についても、生徒から懐かれるのを嬉しく思いながらも決して対等には受け止めない教師のようなもので、とてもじゃないけれど異性の色めいたそれに発展する様子は皆無に等しいのです。
その意味では、セスシスは徹頭徹尾「西方鎮守聖士女騎士団」の団長であるオオタネア・ザンのモノにしか見えないんですよね。精神的には余人の介在する余地なく妹背として完成してしまっていて、少女の出る幕がどこにもないのです。それでありながら、二人がちゃんと夫婦として結ばれることは絶対に無いであろう、という空気感が物悲しくもより深い絆を感じさせて、沁み入るわけです。

しかし、絶滅戦争の末期戦と言えど、雷霧の脅威って決してそこまで恐ろしくは感じられないんですよね。特に、手長足長という怪物がそれほど怖い存在には思えないので、雷霧内の環境こそ危険極まりないものの、そこまで悲壮感、絶望感を感じさせるものでもないなあ……と、思ってたら、どうやらこの期に及んで真の脅威は、自然現象などではなく、やはり同じ人間の悪意と欲望のようで。
結局、人間どこでも、どんな時でも足の引っ張り合いに勤しむ勤勉な生き物でしかないのか。いい具合に胸糞悪い話になりそう。