フルメタル・パニック! アナザー (9) (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! アナザー 9】 大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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南カフカスの小国、コルキス共和国。ソ連崩壊と共に独立したこの国は当時、ロシアを後ろ楯とした少数民族との内戦に揺れており、その混乱の中に彼女―アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤは民兵として参加していた。そんな混沌とした政府軍への教導のため、コルキスに派遣された民間軍事会社D.O.M.S.の社長メリッサ・マオは戦場で反政府軍兵士の少女と、数奇な出会いを果たす。「わたしは勝てない相手だろうと、負けるわけにはいかない」今こそ語られる、彼女の知られざる根源とは―!?千変万化のSFミリタリーアクション、追憶挿話!
リーナの過去話はミハイロフに捕まったところで回想として行われると思っていたのだけれど、これを見ると挿入話として描くには密度が濃すぎるし、それ以上にミハイロフ自身の人生の転機もリーナのそれが関わっていて、回想だけで済ますわけには行かなかったというのがよく分かる。
しかし、この話を見ているとミハイロフって、リーナにとって思っていた以上に複雑な存在なのですよね。少女兵、民兵として民族紛争の渦中にあった彼女にとって、ミハイロフは裏切り者ではあるのだけれど、彼女自身自分が所属していた一派に必要以上に思い入れがあったわけではなく、またミハイロフの行為も国の命令によるもので彼の責任とはいえない部分もあり、その上で作戦上の機密を知ってしまって処分されかかった彼女を、軍を欺いて助けてくれたのはミハイロフ当人だったわけですしね。
勿論、ミハイロフにとってリーナを助けたのは矜持の問題の方が大きく、彼女への情だけが理由ではなかったはずなのですけれど、助けてもらった恩は恩ですし、また菊乃たち姉弟たちへの接し方を見るにミハイロフの人間性は子供に優しい部分もあるみたいだし、D.O.M.S.の件があったにせよリーナにとって憎みきれない複雑な相手であるのは間違いない様子。
なんでリーナをミハイロフたちに捕まる形にしたのか、ちょっとわからなかったのですけれど、敵意だけじゃない感情があるなら、一度ミハイロフやナタリアの側に置くというのも話の進展に必要だったのかなあ。
尤も、この民兵時代でのエピソードでマオがリーナに与えた多大な影響は、彼女のマオへの尊敬と忠誠心、親愛の根源となっているので、そのマオ社長を傷つけたジオトロン社サイドには絶対につかないはずなので、むしろこれ、ミハイロフたちへの揺さぶりになってしまうんじゃなかろうか。

【夕陽のサンクチュアリ】は、典型的な原作付き映画がダメになっていく変遷譚w
この徹底した原作者置き去りの改変改変の嵐の様子は、よく映画化のあとで原作者が発狂しているケースの典型なんだろうなあ、これ。表に発言が飛び出しているケースだけで度々あることを思うと、この話のようにグッと飲み込んでしまうケースを含めたら、さてどれだけの頻度になってしまうのかw
若手のアイドルだの大手事務所推しの女優俳優を使うなら覚悟せよ、ということで。それでも、実際のAS使ってるだけじゃなく、PMCまで動員して戦闘シーン撮ってるというだけで、邦画としては充分見所たっぷりなんじゃないでしょうか。

【砂塵の国】は、ユースフの里帰りと国内での意外と難しい立場のお話。ユースフは王位継承権やら、複雑な女性問題など、実は達哉よりも抱えている問題がはっきりしている上に性格がキッパリしているせいか、もう一人の主人公格として存在感を伸ばしてきているんですよね。本編でも彼にまつわる話が多い上に、短篇集でこんな風に彼の家の事情にまつわる深い話までつぎ込んできているのは、それだけユースフの価値があがっているのではないでしょうか。
達哉って、ちょっと主人公としては立ち位置がふわふわしすぎてるんですよね。未だ寄って立つものが見いだせていないまま、ここまで来てしまっている感がある。その定まらなさが物語の主軸だというのなら何の問題もないのかもしれませんけれど、あんまりそういう感じでもないからなあ。

シリーズ感想