グラウスタンディア皇国物語4 (HJ文庫)

【グラウスタンディア皇国物語 4】 内堀優一/野崎つばた HJ文庫

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物語の舞台は皇国の外へ! 少数精鋭で月の港を攻略せよ!!

大国リジアによる30万の猛攻を辛くも退けた皇国。
それで一息つく間もなく、軍師クロムはたった千の兵で難攻不落と名高いゾラ港攻略に挑むことに。
その前準備として、クロムたちは西の大国ラトルグへと赴き、前代未聞の大博打に打って出る!!
一方、北方騎馬民族との内乱平定に動くコウソンもまた、自らの命を賭して単身、敵陣へと乗り込むが――。
ああ、これは問題が根深いなあ。てっきり神の暗躍は、国々の戦乱を煽る形でこっそりと行われていると思っていたのだけれど、今回明らかになった事実からすると、大陸における国々や民族の紛争そのものが神々の代理戦争という理由で行われている事になる。表向きは国益や安全保障を求めて起こっていると思われた戦乱だけれど、根本に神々の争いというものがあるのなら、多国間における交渉によって平和裏に戦乱が集結する、という可能性は皆無になってしまう。いずれにせよ、何らかの形でどこかの国、或いは民族が他国を支配下に置き、他国他民族の崇める神を自分たちの奉じる神の下に敷く、つまり唯一神が誕生しなければ戦乱はどうやったって終わらない、という構図になっているのだ、この大陸は。
なるほど、クロムが着々と喧嘩を売る準備を整えているのは、こうした神々の作り上げた代理戦争システムそのものか。果たして、この世界の仕組みについてちゃんと理解した上で動いている人物については、クロム以外にもう一人、ラトログ国のコウソンがその辺承知した上でラトログ国を勝ち残らせようと動いているみたいだけれど、果たしてそれがクロムと同じように神と敵対する道なのか、神に沿う形なのかはまだちょっとわからないんですよね。クロムが具体的にどうしようと目論んでいるのかがわからないと、果たしてコウソンが同志足りえるのか、それとも絶対に戦い勝負をつけざるをえない相手なのか見えてこないので、何ともいえないのですけれど。ただ少なくとも、クロムにはリュリュという鍵があり、コウソンの方にはリュリュに該当する切り札が見当たらない、という点は見逃せないかも。
二人の、自身が忠誠を捧げる姫に対するスタンスも結構違うんですよね。主従の関係でこそあっても、目的を同じくする同志として姫に対して遠慮もなく、時に厳しく時に親身に接するクロム対して、コウソンは彼自身が語っているようにレイリン姫に崇拝に近い忠誠を誓いつつ、一線を引いている。レイリン姫はコウソンをもっと身近な親身になって欲しい存在として欲しているのであるから、既にすれ違いが生じているとも言えるんですよね。
ただ、ラトログ国における女王の扱いというのは、聞いている分にはかなりとんでもない代物であるんで、コウソンがレイリン姫をどう扱うかが、彼が神威に従い国の要としての姫に忠誠を誓っているのか、それとも一人の少女としての姫を大切にしているかが明らかになるのでしょう。今のコウソンは潔癖すぎて、或いは背負わされたものがおもすぎて、果たして私情を優先できるのかちょっと危ういところがあるので、今から悲劇の種は撒かれているような気もするのであります。
その点、クロムは緩くて欲張りで欲するものに正直な部分がよく見えるので、逆に安心感があるんだ、特に姫様については。まあ安心感はあっても、ユースティナ姫はなんだか振り回されてえらい目にあいそうな気もするのだけれど。
むしろ、一番正しく姫とその騎士の関係を築いているのは、今回のガジェルとリリア皇女なんですよね。どう考えても幼女と野獣なのですが、あのクロムにも手綱を握りきれてない凶人ガジェルが、まだ一〇にも満たない幼さで既に苦労苦難を自分から背負い込みそうな生真面目な幼女姫の言うことだけはキッチリ聞くとか、何とも微笑ましいじゃないですか。ガジェルに肩車をして貰って心からの笑顔を浮かべるリリア姫の姿は、和ましい癒される光景でした。

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