【Amazon.co.jp限定】東京ストレイ・ウィザーズ 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)

【東京ストレイ・ウィザーズ】 中谷栄太/Riv GA文庫

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かつて東京のストリートで最強を誇った伝説の魔法使い集団《ワイズクラック》。
その中心メンバーだった天才魔法使い・桜田志藤は、当局による軟禁からの脱走を試みる。
現代魔法史上最悪の騒乱『パンドラ事件』を引き起こし、《ワイズ》解散の元凶ともなった
裏切り者・久瀬アキラへ至る有力な手掛かりをついに見つけたのだ。

「仕方のない契約主ですね」
「勝手に無茶しないでよね! 」

お伴の魔法生物・アムリタと、監視役の天才少女保安官・雪近に挟まれつつ、かつての盟友を追う志藤。
伝説が甦り、東京は震撼する! アウトサイド・マジカルアクション、開幕!!
イラストの人が一押ししてるアムリタですけれど、確かにこのチョロチョロと忙しなくて小生意気で落ち着きのないチミっ子可愛いなあ。元々、この作者のちとバタバタしてるくらいの急き立てるような速いテンポは凄く好きなんですけれど、アムリタがそのテンポの加速剤となり、時に緩衝材となって上手いこと全体を躓かないように循環させてるんですよね。彼女のキャラ立てが秀逸なのは志藤一人にベッタリではなく、憎まれ口を叩きつつも雪近と何だかんだと仲良くて、息のあったやりとりを見せてたり、新しく知り合う事になるワイズクラックのメンバーに対しても距離感を感じさせない雰囲気になってるところなんですよね。主人公の志藤は、パンドラ事件のわだかまりや今回の事件で停滞を解かれた事によって視野がやや前のめりになっているお陰で、保安官である雪近にしても、宮子や京平に対しても、屈託ない態度を取りながらも立ち位置や心情の関係でどうしてもワンテンポ距離感があるんですね。その距離感自体は、過去の精算と仲間として再び絆を取り戻す、という流れの中で必要不可欠な要素であるのですが、テンポの軽快さが味噌でもある中谷さんの作品としては、その距離感を解消するまでの丁寧な描写はテンポの淀みを生み出しかねなくて、その淀みは作品全体の勢いに躓きを与えかねない可能性があったんですが、アムリタのチョロチョロしい賑やかさが上手いことその隙間を補填して淀みなく流れを転がしていく要員になってるんですよね。
お陰で、昔の仲間との再会からすれ違い、お互いの現状をすり合わせた上での衝突から和解、一致協力への流れが非常にスムーズに、変に深刻にならず、淀まず、しかし雑ではなく丁寧に描けていたように感じました。アムリタって、パンドラ事件以降に志藤の使い魔になった存在であり、どうしてもワイズクラックという昔のチームという枠組みに対しては、新たに加わった存在であり、過去に壊してしまったものを精算して再スタートする話の中では扱いが結構難しい立ち位置のキャラだったと思うのですけれど。
うん、彼女に限らず、全体的に味方サイドのキャラクターたちに関しては非常に良くキャラが立っていたんじゃないかと。
主人公に科せられた制約についても、昔の仲間たちにかつての志藤と今の志藤は違ってしまっている事を示す事になって失望や怒りを抱きながらも、しかし事件の渦中に共に首を突っ込んでいく中でやっぱり本当の芯の部分は何も変わっていない事を知って……、という王道ながらも欠かせない過程を踏襲する重要なファクターとなっていて、単に最強主人公の使い勝手を良くするリミッターとしてではないちゃんとした使われ方をしていたように思う。志藤としても、かつてはそこまで深く考えていなかっただろう仲間たちとの関係、自分が彼らをどう思っているかだけではなく、彼らが自分をどう思っていたのか、どう思われていたのか。そんな想いに対して、どう向き合うべきだったのかを、制約だらけの中で強敵と立ち向かわなくちゃならない状況の中で見つめなおすきっかけとなり、チームが本当の意味で新生するための鍵になってたんですよねえ。

こういう、学園モノとかじゃない、ゲームのパーティーでもない、組織に促されて形成されたわけじゃない、自然と惹かれて寄り集まって一緒になって作り上げたアンダーグラウンドでの「チーム」ものって、意外と少ないだけに、貴重品だしこういうの、ほんと好きなんですよね。
しかも、一度瓦解しながらも、再び集結して、それもすれ違い蔑ろにされてしまった部分を、ぶつかり合って理解し合い確かめ合って、より強固な形で繋がりあった新生チーム、というのもヨダレが出そうなほど大好物。
テンポの良い掛け合いも、ピチピチと弾けてるキャラもすこぶる感性にフィットして、うんうん、大好きです、このシリーズ。前から中谷さんの作品は性に合って好きだったのですが、これを真打ちと思って鷲掴みにしたいですね。できれば、短く終わらずに長期シリーズになってほしいなあ。

中谷栄太作品感想