終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (2) (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 2】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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妖精兵であるクトリたちが決戦に赴いてから半月。彼女たちはまだ、戻らない。次代を担う妖精兵である少女・ティアットを連れ、11番浮遊島へ適性検査に向かったヴィレムは、そこで「決戦敗北」の報を受けるが…。“人間”に代わり“獣”を倒し、死にゆく定めを負った少女妖精たちと、たったひとり生き延びた“人間”の青年教官の、儚くも輝ける日々。第2幕。
だからもうズルいよ〜。泣かせよう泣かせようとあざとく迫ってきてくれたらむしろ冷静になれるのに、そんな素振りなんか見せずにむしろそっけないくらいに淡々と描かれてしまうと、構えることが出来ないんですよ。黙って、席について、その背中をじっと見つめるしかないじゃないですか。見守るしかないじゃないですか。
その挙句に、振り向いてもくれないまま、最後にそっとあんなものを目の前に差し出されて、置かれてしまったら。
感極まってしまうに決まってるじゃないですか。

戦いに行ったまま帰ってこないクトリたち。戦況も伝わってこない中で、一人前の妖精兵となる覚醒の予兆を見せたティアットを連れて、ヴィレムは前線に近い古都「11番浮遊島」へと出向くことになる。
何も分からないままただ待ち続けないといけない、それは何よりも辛いことで胸を焼く焦燥はきっと息も詰まるほど苦しいものであるはずなのに、ヴィレムはそんな素振りを周りの子供たちには一切見せない。
でも、それは強さじゃなくて、むしろヴィレムがどれほどの地獄で生きてきたか、擦り切れてきたか、そして今、何も出来ない残骸に成り果てているのかを目の前につきつけられるかのようで、彼の淡々とした風情が見ているだけで本当に切ない。
でも、それは既に終わってしまっているヴィレムだけじゃなくて、終わることを最初から宿命付けられている妖精兵たちも、似たようなものなんですよね。
それに気が付かず、もしくは目を背けてしまい、すれ違ってしまう二人の姿が、もう胸をかきむしりたくなるほど切ないのよ。辛い、じゃなくて切ないの。
だってこれ、もしすれ違わなくたって、もしちゃんと約束が果たされていたって……終わりは何も変わらないんだもの。後悔したまま終わってしまうことは悲劇だけれど、約束が果たされて、満たされて……そうして終わってしまうことはじゃあ悲劇じゃないの? せめて、せめて、せめて最期にはそのささやかな願いを……それが叶えられる事は、悲劇の中の一滴の中の幸せで、哀しみの中に救いがあるということで。でも、やっぱり悲劇なのだ。どうしようもなく悲劇でしかないのだ。だから、ただただ切ない。切なくて、胸を締め付けられる。
ああやっぱり、その最後の願いさえすれ違いの末に叶わないというのは、一欠片の救いさえ報われなかった事になるから、嫌だ、嫌だ、嫌だなあ……。
だからズルいのだ。最後の最後の、差し伸べられた、目の前にそっと置かれた「幸い」の芽は、あまりに優しすぎて、泣いてしまう。
たとえ、もっと残酷な真実がこの先に待ち構えているのだとしても、今はその奇跡に縋ってしまうのだ。

ヴィレムが古き友との再会の中で明かされていく、妖精兵誕生の真実と、その身に課せられた未来のない運命。そして、古き友らが口を噤んだもう一つの真実。哀しすぎる悲劇の末路。
そこは、紛うことなき終末で、ニンゲンという種は既に滅び、今生き残っている新たな人々もまた終わりを迎えつつある。既に滅びた人間の生き残りで、既に終わってしまっているヴィレムはやはり生まれた時から終わりを内包している妖精の少女たちを静かに見守っている。彼女らを少しでも生かすためにか、未来を見せるためにか、それとも今生きている時に幸せを感じてもらう為なのか。彼女らを看取るためなのか。きっと、彼自身にもわからないまま、終わった自分の体を引きずりながら彼女らの姿を見守っている。
一途に、その儚い命も魂も全部ぶつけるようにして寄り添ってくるクトリを彼は受け止められるのか。不幸とか絶望ばかりが並べ立てられるなかで、幸せというものを彼女に与えることができるのか。もう終わった人間なのに。きっとさらなる絶望が彼を待っているのに。
でもだからこそ、終末でしかないこの世界の果てに、確かな救いを見たいのだ。終わってしまっている彼と彼女が得られるかもしれない、優しい幸福を。見てみたい。
だから、お願い。続きを、この物語の続きを読みたいのです。どれだけ切なくても、哀しくても、その先が見たいのです。こんな所で終わらないで……お願いします。
3巻、3巻、3巻が何とか出ますように……。

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