ファング・オブ・アンダードッグ (ダッシュエックス文庫)

【ファング・オブ・アンダードッグ】 アサウラ/晩杯あきら ダッシュエックス文庫

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『陣』とは、この世の全てを操る命令である。それは、かつて存在した日本という国が作り出し、世界を破壊し尽くした技術であり、「漢字」を体に入れ、組み合わせることで様々な力を発揮するものだ。
しかしながら、人々は一度世界を滅ぼした技術である陣を警戒しそれを利用する者たち――陣士を敵視し、暗殺の対象としていた。 それらを理解してもなお、陣士を目指す少年アルク。その心には、剣豪一族・府津羅の末裔である自分自身と、最強の剣士である兄との決別があった。そして相方・ユニと共に陣士選抜トーナメントに挑むことになったアルクの前に立ちはだかった者とは…! ?
若きアンダードッグが牙を剥く! ! 和風無頼派バトルアクション!
和風というよりも、中華ファンタジー的な雰囲気だわなあ。それも武侠モノ。と言っても陣士は武林の徒ではなくて、道士のカテゴリーに属する存在なんだろうけれど。むしろ、府津羅の方が武林側か。
アルクは言わば、その陣士と剣士の両方の流れを組んだハイブリッド。西洋ファンタジー風に言うなら魔法剣士、というのになれるはずの位置にいるはずなんだけれど、そういうイイトコ取りをするには双方に前向きな取り組みがなされていてこそであり、府津羅の剣士としてドロップアウトして逃げ出す形で陣士になることにしたアルクにとって、実のところ剣は恐怖の対象であり、陣は逃げ場という意味しかなかったわけだ。最初は。
その心の有り様は負け犬であり捨て犬であり……しかし犬である以上捨てられぬ牙がある。だが、そのままだったとしたら、せっかくの牙も怯えて閉じ込められたままか、或いは狂犬として見境なく噛み付く凶器となっていたのだろう。
しかし、彼は確かに愛されていたのだ。
失望され憎まれ嫌悪されていると思っていた家族に、実はちゃんと愛されていたと察した時、彼の怖じた負け犬の魂に力が宿った。情けない自分を、本気で心配してくれる友人が居たのだと知った時、その牙は正しく振るわれる先を知った。そして、こんな自分を何よりも信じてくれる仲間が居るのだと理解した時、少年は強さの意味を知り、振るうべき力を知り、戦う意味と価値を知る。
実に真っ当で健全な成長物語よなあ。
まあそれにしても、兄ちゃん弟好き好きだろう。白粉さんがハァハァ言いそうなレベルじゃないですか。実は兄ちゃんの奥さんハァハァしてるんじゃないか、と勘ぐりたくなる。まあ好きすぎるのが高じて虐待どころじゃないレベルで痛めつけていたのはどうかと思うけれど。でも、実際に心を折ろうという目的あってやっていたのだから、やりすぎではないのだろうけれど、兄ちゃんが自覚しているとおり、じゃあそもそも剣を教えなければ済む話で、しかしコミュニケーションの手段が剣しかなかったというあたりに、兄ちゃんの不器用さが極まっている。
幸いなのは、彼の愛情がすれ違わずにちゃんと弟に届いたことか。
他人の本当の気持ちも、自分の中にある本当の望みも、気づくのは難しいもの。それらは得てして、自分と向かい合い、他人と向かい合わなければどうやったって見いだせない。それを成し得た彼は、もう負け犬などではないのだろう。
まだ正式に陣士となる事もかなわず、その資格を獲るための戦いという前哨戦もいいところの展開なんだけれど、そこでこれだけじっくりと叩いて伸ばして成長させるというのは、過保護でもあり丹念でもあり、かなり腰を据えたシリーズなんだろうなあ、というのが伝わってくる。
しかし、シリアスでハードに見えて、随所にアサウラさんらしさが散見されてしまうのは、もはや業というべきなのか。とりあえず、いつでもどこでも「ガチムチ」は必須なのねw
そして、やっぱり料理は美味そうなのね。今回はシンプルに団子とハンバーガーだったけれど、ハンバーガー美味そう。だから、なんでそんな美味しそうな食事描写するの? お腹減るじゃん!!

アサウラ作品感想