聖剣使いの禁呪詠唱《ワールドブレイク》10 (GA文庫)

【聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>10】 あわむら赤光/refeia GA文庫

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聖夜を焦がす《悪魔》の火を斬りはらえ!!

亜鐘学園ですごすクリスマス!! だが、謎めく「六翼会議」の魔手はささやかな平穏を脅かす。絶好調、超王道学園ソード&ソーサリィ、堂々第10弾!!

亜鐘学園でむかえる初めてのクリスマス。諸葉はサツキたちへのプレゼントを選ぶべく町へ繰りだす。かつて会った不思議な女性・ネリーこと宇佐子との再会や、信頼しあう少女たちとのにぎやかな夜。諸葉はかけがえのない冬を満喫する。
だが、そんな平穏を打ち砕くように、凶暴な異端者が急襲。諸葉への執拗な敵意をぶつける謎の敵に対し、市街地での迎撃戦を緊急展開! その戦いの果てにたどりついた場所で、諸葉はあの禁じられたもう一人のランクS――《背教者》熾場亮と二度目の邂逅を果たす。

激熱、諸葉VS炎王!! 『六翼会議』の謎めく陰謀と悪魔の灼熱を斬りはらう、超最強バトル第10弾!!
今回の主役は何と言っても石動隊長すぎるでしょう。いや、考えてみれば前々から石動隊長は裏の主人公的に扱われていた気もする。折々に触れて、石動隊長はスポットあたってましたもんね。最近は特に、中国のレベルSとの戦い、先の英仏日の共同作戦における同じ日本のランクAたちとの対面など、石動隊長が歩んでいく道が刻々と描写され続けていましたし。その上で、今回のあの石動弟の末路。皆が楽しく過ごしているクリスマスの夜に、一人失踪した弟を探し続ける彼の姿に感じる苦味を何と表現したら良いものか。
その姿はカッコ良いとは決して言えない苦しさに塗れているのだけれど、諸葉のような快男児とは裏腹の鬱々としたものを抱え込んでいる陰鬱とすら言っていいだろう男なのだけれど、この人の石を咥え、石を括りつけ、石を引きずるようにして、それでもひたすらに前に進み続ける姿には、憧れや敬意に近いものを感じてしまう。強さ、カッコよさ、痛快さなら、ランクSの怪物たちがはるかに上回るだろう。それでも、人として仰ぎ見てしまうのは、こういう地を這い続けている人なのだろう。諸葉が、同じランクSの面々とは対等に渡り合いながら、石動隊長に関しては一貫して尊敬し続けてるのもよく分かる。
これほどの人が血を吐くように目指し続けているからこそ、ランクSというものに重みを感じるという部分もあるんじゃないかと思うくらいに。だからこそ、あのランクSの重みをわかっていないだろう輩が敵に回ってくれたのは僥倖ですらあると思うのだ。石動隊長にとっての、乗り越えるべき壁がそそり立ってくれたのだか。
弟は嗤ったが、今なら信じることが出来る。この人は、きっとその高みへと至るに違いない。その日がくるのが楽しみである。

いわゆる六翼会議による宣戦布告編となるのだろうけれど、その首領格である熾場亮の過去が語れる事で、かつての異端者との戦いがどれほど理不尽で凄惨なものであったか、それを踏まえてどれほど先人の努力があって今の体制が整えられたのかが明らかになり、一方的に熾場亮たち一党が邪悪と言い切れないだろう下地は敷かれたわけだけれど、さてどう折り合いをつけていくのか。ネリーはまず悪い人じゃないし、多分恐らく、でも間違いなくあれの正体であるあの人も、実は悪い人でしたって事もなさそうだし。
でも、割り切れない争いを、しかし悩み苦しみ迷った果てにスッキリ痛快に描くことは、作者のあわむらさんは前前作のデビューシリーズ【無限のリンケージ】でしっかりやってくれているので、そのあたりは心配していないのであります。

シリーズ感想