俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法 (富士見ファンタジア文庫)

【俺の妹を世界一の魔砲神姫(ブレイカー)にする方法】 進藤尚典/市倉 富士見ファンタジア文庫

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魔法の力が“魔砲”として銃に封印され、その力が各国で暗躍する世界。国家最強の魔砲使い・麗美武洋は、日々、犯罪者を駆逐しながら最愛の妹・奈緒美を一方的に想い続けていた。そんな中、奈緒美から魔砲使いになりたいとねだられた武洋。ダメ元だが、形だけでも―と、一般人の奈緒美には扱えない魔砲をレクチャーするのだが…なぜか習得できてしまい!?詳細を聞くに、厨二病をこじらせたクラスメイトのあらぬ入れ知恵が効果的だったようで…武洋の妹愛が極限に高まった時、世界一の教育が始まる!?
あれ? これ微妙にあらすじと実際の内容違わないか? 奈緒美は別に魔砲使いと兄にねだってないし、この言い回しだとクラスメイトの「奴」は何だか良からぬ怪しげな人みたいに聞こえますし、そもそもそんなにちゃんと妹に魔砲の教育してないし、って微妙に違うじゃなくて全部違うじゃないか。
この妹、表紙を見ると痴女にしか見えない格好しているし、あらすじの言い回しだと変なクラスメイトの影響を受けてる兄に対してあれこれ要求してくるような、残念系の妹だと勘違いしてしまいそうだけれど、実際は純真無垢で献身的な天使系です、いい子いい子。むしろなんでもホイホイと信じるので、悪い人に騙されてしまわないか心配になるタイプ。アニキがこの妹を溺愛して過保護なくらいに扱っているのもわからなくはない。とはいえ、うかつなタイプでもなく、わりとしっかり者でもあるので、この兄ちゃんの過保護っぷりはシスコンをこじらせているというよりも、父性をこじらせてしまっている方が近いんじゃないか。両親が居ない中妹と二人で暮らしてきただけに、事実上父親代わりだったみたいだし。
そう、この兄妹ってシスコンだったりブラコンだったりはするものの、ラブはこじらせてないんですよね。あくまで、妹であり兄であり。近年は血が繋がっていてもお構いなしに恋愛モードに入ったりすることが多いので、むしろ普通の兄妹関係の方が珍しいくらいなんですよね。逆に新鮮に思えてしまった。
妹も、別に兄に恋人が居ても(誤解ですが)、嫉妬する様子もなかったですし。兄の方は発狂してましたが、あれは男親の通過儀礼でしょう、うん。
二人きりの家族。仲の良い兄妹。兄の武洋は、それこそ一から十まで妹のために生きているようなもので、相棒の杜乃にも呆れられる始末。でも、それだけ妹のことばかり考えていても、妹が何を考えているか、何を思っているか、兄との関係をどんな風に捉えているのかを理解していなかった事を目の当たりにして、彼は果たして自分が良い兄だったのかと自問することになるのです。
たとえ家族でも、愛する妹のことでも、他人を理解する事は難しい。盲目的に愛情を注ぐことが、決して妹によいわけではないのだと、それが彼女を苦しめている部分もあったのだと、認めていく武洋。ある意味、家族間の関係の再構成の話でもあり、より深く強い絆を結ぶ話でもある。基本的に、妹があんなに素直な頑張り屋さんに育っている時点で、武洋のそれは全然間違っていなかったとも言えるわけですしね。しかし、妹はただ守り愛されるだけの存在では居たくなかった、と。完璧な兄へのコンプレックスは、兄への負の感情ではなく純粋に自分も兄の役に立ちたい、兄を助けてあげれる自分になりたい、という優しい思いに根付いたものだったわけですし。
麗しき兄妹愛ですなあ。ぶっちゃけ、魔砲の要素はこれを彩るバックグラウンドにすぎない気もするけれど。本格的に話の本筋に絡んでくるのは、魔砲神姫が如何なるものなのかが明らかになってからのような気がするし。
しかし、この作品、ヒロインは圧倒的に妹一強でありながら、妹はあくまで妹なので、兄ちゃんといい雰囲気になりそうなのは相棒の杜乃なのね。