かくて夜明けの神殺者 (3) (電撃文庫)

【かくて夜明けの神殺者(デイブレイカー) 3】 中維/しらび 電撃文庫

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それは突然訪れた。MUの精鋭をも全滅に追い込んだ大型ゲート『黄昏の門』。その前に現れた神の名は―怖血神。全ての霊異がその血を欲し、全ての霊異を斬り伏せる“対霊異資格者”にしてデイブレイカー・化野幸太。彼が探し求めてやまなかった、自らに呪わしい力を与えた「怖血神」が、全ての霊異を滅ぼすために帰ってきた。怖血神との争いの果てに、幸太の身に振りかかった呪いの意味が、ついに明かされる―そして幸太とメリアンは、全てを終わらせるための決断を下して…壊れた世界に夜明けを切り開くデイブレイク・アクション、感動の完結!
これ、3巻で完結なんですよね。この3巻はほぼクライマックスと考えると、出てくるキャラは概ね1巻と2巻で登場したキャラだけ。二冊分だけですよ。にも関わらず、このラストバトルにおけるオールスターキャスト感はなんなの? まるで5巻10巻続いたシリーズの全キャラ総出演クライマックスみたいな大盛り上がりじゃないですか。それだけ、たった二巻でこれだけたくさんの登場人物のキャラ立てが決まってたってことだし、二巻までで貯蓄したぶんを散財するだけじゃなくて、この3巻でクライマックス入ってからの渦中でもガンガンキャラを掘り下げて、同時進行でより魅力的なキャラクターへと増し増しで打ち立てていく勢いたるや、目覚ましいものがありました。とても、3巻打ち切りの作品のクライマックスとは思えないほど、筆が唸ってたよこれ。そうだよなあ、元から身内だったやつ、味方だった人たち、事件を通じて打ち解けて仲間になった人たちだけじゃなく、1巻2巻で敵サイドだった連中まであんな風に魅力的に幸太とメリアンの背中を後押ししてくれたらなあ、そりゃ盛り上がりますよ。お互いがお互い、感化しあってるんだもん。相乗効果で両方存在感唸ってたもんなあ。特に、やっぱり「怖血神」が素晴らしかった。元の存在の恐ろしさ、悍ましさを思い知っているからこそ、あの変化には、収束していくかのような変化にはなんだか感動すら覚えてしまったし、それを真横で見続けたあの人の至福の様子にも、何とも言えないウルウルとこみ上げてくるような感慨が。
軽妙なノリとは裏腹の、壮絶で容赦のない展開。何より、逃れられない別れの予感が悲痛な空気をはびこらせ、締め付けられていくような苦しさを抱かせる。そして、哀しいことに世界を守るためにはその別れを受け入れないといけないのだ。悲しみを打破するのではなく、受け入れる為の戦い。大切な人との別れを認められない人たちの抗い、世界を壊しても離したくない絆と、別れても離れても繋がっていようとする絆との戦いは、悲劇ではあっても憎悪はどこにもなかった。それだけは、救いだったか。そして、必然である別れは幸太とメリアンの間にあった余分なものを全部濾過して、信じ抜く純なる愛だけが残る。その切なくも何と美しいことだろう。
霊異は再び現世から去っていったけれど、最後の戦いは相容れぬはずだった人間と霊異の間に、確かな絆を、相互理解を残していったのではないだろうか。そんなシーンを、幾つも幾つも幾つも、目の当たりにした。別れは断絶ではなく、確かな縁になったのだ。
なかなか長いシリーズにならない作者さんだけれど、本当に面白いし実力もあると思うので、機会さえあれば絶対看板作品立ち上げられると思うんですよね。それを、この最終回の出来栄えで噛みしめる事が出来ました。うん、これからも全力で応援していきたいですね。次回作にも大いに期待させてください。

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