パンツではじまる世界革命 (一迅社文庫)

【パンツではじまる世界革命】 綾野陽一/崎由けぇき 一迅社文庫

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“レベル”によって全ての価値が決まる、ゲームのような異世界―“アイランド”。その世界に一人の男子高校生が飛ばされた!女の子が大好きな「彼」は異世界に来て早々記憶喪失に陥ったが、女の子への熱い思いは変わらなかった。その世界では文明技術が発達しておらず、みんなまともな「パンツ」を履いていない…!「俺は…この地にパンツを発明する!」ロマンのない世界を変えるため、一人の男が動き出した!

いや、これは大したもんだ。本当にパンツを生み出すことで世界を革命しちゃったよ。面白いのは、主人公はひたすらパンツをこの世に生み出し根付かせる事を念頭に動いていたのであって、別に世界を革命したり世の中を改革して良くしよう、なんて事は特に考えていなかった、という所なのでしょう。彼はただ、パンツを生み出すために必要な事に邁進しただけ。それに伴い発生した技術革新が既存の社会構造を揺さぶり、国際関係すらねじ曲げ、意識改革を発生させ、在り得なかった相互理解を生じさせ、と湖面に投じた一石が波紋となって全体に及んでいくように全てが変わっていくのである。この波及効果の描き方がまあお見事。かなり早回しではあるし、上手いこと行き過ぎなのは間違いないんだけれど、理屈的にはスッキリしているのでその激変の様子が痛快なんですよね。それに、変化の伝播の仕方が段階的であり、距離的にも遠方とはギャップがあるのも、うん物語の構造的にも面白いんだよなあ。そのギャップが摩擦となって、旧来の価値観と衝突しだすのも、革新のスピードが駆け足であることに物語的な意味をもたらしてもいるわけですし。
そもそもこの名前のない主人公、殆ど初っ端から既存の世界のルールには見向きもしてないんですよね。世界の有り様がゲームに近ければ近いほど、もともとゲームにハマっていた元プレイヤーたちはゲームシステム通りに、定められた進行方向に則って進んでしまうものなんですよね。実際、当初はヒロインの女の子はそのとおりに進もうとしていたのですし。
既に敷いてある道があれば、それのとおりに進むにしても敢えて外れるにしても、道を意識せずには居られない中で、殆ど眼中になし、という主人公のフリーダムさは非常に面白かった。別にゲームのような世界だったとしても、律儀にゲームのように動く必要なんてどこにもない、現実というのはそれだけ自由なのだ、と言ってもその通りに本当に自由に振る舞える人はなかなか居ないですもんねえ。