フルブレイド・イグニッション 1.星を継ぐ狗たち (オーバーラップ文庫)

【フルブレイド・イグニッション 1.星を継ぐ狗たち】 GIRA/Nardack オーバーラップ文庫

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星の暦八九四年、オルデア共和国。万能資源《星屑(ステラ)粒子》を巡り、世界は再び戦争の火蓋を切った。
敵に襲われた少女ノルンは、最強の兵士《戦甲種(せんこうしゅ)》に救出される。
彼は自らを、英雄の名「ソルード」と名乗った。それは星に導かれし運命の出逢い――。
戦場で育ったが故に常識が欠如しているソルードに振り回されっぱなしノルンであったが、交流を通して徐々に打ち解けていく。
だが、再び襲い来る敵に窮地に追い込まれた時、ノルンはひた隠しにしていた世界を揺るがす禁断の力を解放する――!?
英雄の名を継ぐ兵士と、星に愛されし少女が紡ぐバトルアクション、ここに開戦!
第1回オーバーラップ文庫大賞《銀賞》受賞作
なるほど、これはフルメタル・パニックっぽい、というのもわかる。頼りになる老兵の先達、色々と気遣ってくれる姉御とお調子者の同輩とキャラの配置なんか、それっぽいですしね。一番顕著なシーンは、施設での子供たち相手のソルードの一般常識の欠如を面白可笑しくコメディにしたドタバタで、あれはフルメタのコメディシーンを連想させられた。笑いの切れ味も同等レベルで、これを随所に挟んでいけるのなら、それだけで作品全体が面白くなるんじゃないか、という出来栄えでしたけれど。今回については、全体に重苦しい雰囲気が続く中でこのシーンはややも唐突感があって、物語の流れとしてはぶつ切りに感じられる部分があったので、ちと残念だったのですが。ソルードとノルンの距離感がこれで縮まればよかったんでしょうけれど、殆ど初対面も同然の時期でしたし、多少このやりとりでノルン側が警戒を解く効果はあったものの、仲良くなったというほど深いやりとりにはならなかったですしね。
しかし、ソルードが幼いころから一般常識を学ばないほど常に戦場にあった、という事実を示すには大事なエピソードですし、彼がそれだけ脇目もふらず自分が置かれた境遇の上をひた走ってきた、というのが後々明らかになる上で欠かせないものであったのは間違いないでしょう。一途で無骨なほど不器用に生きる彼の在りようを示す上でも。
雰囲気が上手いなと思ったのは、戦争と平和の狭間にある生活感でしょうか。戦争とは長らく縁の無かった平和な街に、突如舞い降りてくる戦火。ゲリラ的な攻撃に寄って学校などが焼き払われるのですが、あくまでそれは街の一部が被害を受けただけで、他の地域の人からするとなかなか危機が迫っているという実感が湧かない中でどうするかというと、これまでと同じ日常を大半の人が続けるんですよね。勿論、実際には物資の備蓄や避難の準備なんかをしているのかもしれないけれど、傍から見ると今までと変わらない平和な街の光景が続いている。
実際に戦火をくぐり抜け、敵国の兵に襲われ、妹が怪我をしたノルン。周りには護衛だというソルードが侍り、平和な光景の中に戻りながらも、どこか足元のおぼつかない感覚を抱くノルンの様子は、自身過去に平和な日常を、家族ごと奪われたという経験があるにしろ、平和と戦争の狭間で戸惑う様子がじんわりと伝わってきて悪くない雰囲気でした。でも、このノルンだとソルードを平穏サイドに引っ張るには地に足がついてないんですよね。うん、だからなるほど、ソルードをこっちに引っ張るのではなく、彼女の側から向こうに行くのは必然だったのか。
平穏を取り戻すには、ソルードもノルンも、自分の中の問題に決着をつけてからでも遅くはないのですから、どっちつかずでフラフラするよりもいいのかもしれない。だから、一緒に頑張れ。