GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (7)下 (電撃文庫)

【GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 7(下)】 川上稔/ さとやす(TENKY)  電撃文庫

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羽柴vs.関東勢の直接対決が始まり、白熱する関東解放戦。武蔵第六特務、直政と正木・時茂による因縁の武神対決が火蓋を切り、九鬼・嘉隆率いる鉄甲船艦隊と村上・元吉の村上水軍による艦隊戦も新たな局面を迎えようとしていた。自国の未来を見据え、歴史再現に殉じようとする者、抗おうとする者―それぞれの思惑が交錯するなか、里見家復興を目指す里見・義康の戦いがついに始まる。その一方で長岡・忠興の身柄を確保したトーリ率いる武蔵勢は、巴御前と忠興夫人・クリスティーナが担うネルトリンゲンの戦いの歴史再現にどの様に介入していくのか。そして副王ホライゾンの出番はあるのか―?第七話、完結!!
もうねー、最後のクリスティーナのあのイラスト見せられるとねー。助けに来てよかったね、長太、と肩叩いてやりたくなったね。うん、悩んだでしょう。クリスティーナ本人から助けることを拒絶され、所属している羽柴勢は歴史再現の為にクリスティーナの忠興夫人としての自決を推奨する立場である以上、これを邪魔することは裏切りになってしまう。味方も嫁も誰も喜ばない、でも死なせたくない。好きになってしまった人を失いたくない。その思いを燃料にして、足をもつれさせながらも倒れず諦めず、かなり武蔵勢に無理やりケツにロケット花火突っ込まれて火をつけられた感があったにせよ、無茶して助けに行った甲斐、あったよねえ。なんだよあんたら、もう結婚しちゃいなよ。いや、もう結婚してるのか。あれほど頑なに歴史再現に殉じようとしていたクリスティーナを、彼女の元まで辿り着いたとしてもいったいどうやって口説き落とすのか、メアリの時よりも難しそうだなあ、と思ってたんですが、あかんやん、この二十八歳かわいすぎますやん。うん、男女逆だったら犯罪扱いされるけどね、きっと。ゴリゴリアウトで削られますけどね。十四歳の男の子が二十八歳の女性に一目惚れするのもありだし、二十八歳の女の人が十四歳の少年に懸想してしまうのも、この際ギリギリありだとしても、二十八歳の男が十四歳の少女を嫁にしようとしたら基本アウトである。
でも、戦国時代の歴史再現的には別に普通にアリなのが微妙に怖い。その手のアウトな輩は今のところ居ないよね。秀吉ちゃんも前田利家もその辺りは無罪だし。
ともあれ、何とも真っ当すぎるくらい直球な告白でありました。よくやった、長太。
関東解放の方は、初っ端から復活した村上・元吉が地味な町役場の公務員みたいな顔していながら、やたらとカッコイイ艦隊指揮で九鬼艦隊にリベンジかましてくれる、という痛快なスタート。
武蔵勢の行き掛けの駄賃、というにはいろいろ酷い大暴れに、関東の雄北条勢の最後の意地。そして、武蔵での生活の中で、そして戦いの中で一皮も二皮も剥けた里見・義康がその新しい姿を、残してきた故郷や里見の仲間に証明する形で勇躍してみせた、小西・行長との激戦。うん、東日本におけるほぼ最後の戦いと目される大規模会戦に相応しい盛り上がりでしたとも。そして、義康もやっぱり汚染されてたのね、とちょっと遠い目になってしまった話でもありました。うん、義康はずっと真面目だったから大丈夫だと思ってたのにね。無理だったか。やはり武蔵の異常な人々の中に一度でも入ってしまうと、順当に頭おかしくなってしまうのか。
一見、普通に見えても外の人と比べると、顕著に汚染されているのがわかってしまいますね! 正純に比べるとまだマシな気がするけれど、程度の問題だよなあ。
大久保さんも大概な事になってるし。しかし、粘り強い瀬戸際の交渉を出来るのが正純以外にも出来た、というのは大きいよなあ。ネシンバラはあてにならんかったし。良いように使われてるだけ、みたいな気もするけれど。
さて、今回のフェイバリットは長太とクリスティーナのカップルも去ることながら、もう一組、あの島・左近と鬼武丸のコンビが素敵極まったんじゃないでしょうか。このネルトリンゲンの戦いのステージ、巴御前だけどうも立場的にキャラ浮いてるなあ、と思ってたのですが、神聖ローマ帝国側が送り込んできた前田・利家の作り出してきた決戦兵器がまたピンポイントで狙いすましてきてたんですよね。まさかの、木曾・義仲と源・頼朝の参戦。ちょうど、巴御前の口からクリスティーナに歴史再現の無体さを語る上で、自分たち源平合戦時の悲劇が話されていたので、巴御前VS木曾義仲にはかなりくるものがありました。えらい男前な巴御前ですけれど、話を聴く分にはこの人もキツイ悲恋を経験してるんですよね。それも、義仲と二人きりでの悲恋ならまだしも、もう一人、幼い頃から姉妹のように育ったもう一人の義仲の嫁との、複雑な三角関係込の話となると……。この世界、残念があれば死んでも亡霊として残る世界である以上、そのもう一人の嫁さんも義仲も幽霊にならなかった、という時点で巴御前としてはずっと思う所あったわけで、その果てに記憶も何も残っていない無理やり起こされた残骸である義仲との再会は、何とも胃が重くなる。この二人については、決着も付ききらなかっただけに、なんとか良い結末を迎えて欲しいところだけれど。
一方で、頼朝の方も史実でも悲劇とされてる大姫の話が歴史再現でも同じような顛末になってしまっていたんですね。その後悔や痛みが、今世で巡りあった島・左近との関係の中で昇華されていく様子にはじんわりとくるものがありました。左近を、小姫と呼んだ瞬間なんか、ねえ……。左近ちゃんもいい子、なのよねえ。
しかし、どうもちょうどこの源平合戦の頃から、歴史再現の厳密化による悲劇が増加しだしているようで、それまでのゆるい解釈とは決定的に差が出始めているようで、その原因についてチラホラと語られ出しているのですが……やはり、末世・公主隠しという裏で進む事案には、帝が絡んでくる、ということなんだろうか。

ともあれ、次回はついに決定的な歴史のターニングポイント、【本能寺の変】へと突入か。そろそろクライマックスにつま先が入ってきましたなあ。

シリーズ感想