魚里高校ダンジョン部! 藻女神様と行く迷宮甲子園 (ファミ通文庫)

【魚里高校ダンジョン部! 藻女神様と行く迷宮甲子園】 安歩みつる/冬空実 ファミ通文庫

Amazon

魔物の巣くう迷宮を探索し、ポイントを競うスポーツ、ダンジョン競技。その夢の舞台「迷宮甲子園」を目指し、名門魚里高校ダンジョン部に入部した須田タツマは、しかし純血のヒト族で何の能力もないという理由で、監督に退部を告げられてしまう。部への復帰を果たすため、ある女神に助力を求めた彼だったが、そこで出会った相手は―髪!?黒髪のみの女神の守護を、誤解で得てしまったタツマは…!?第16回えんため大賞特別賞受賞の熱血学園グラフィティ開幕!!
おおっ、ダンジョン探索をスポーツ化しているというだけあって、内容は完全にスポ根モノだ。
ダンジョン攻略をスポーツ化って最初意味がわからなかったのだけれど、なるほどこれは試みとしては面白いアプローチだ。甲子園とか言ってるだけあって、野球と同じ9人のチーム制。しかも、対戦形式なんだけれど、てっきり対戦というのだから実際に剣を交えて交戦するのかと思ったら、相手チームへの妨害はあっても直接攻撃を加えることは禁止されている、というルールは思わぬ着眼点じゃないだろうか。あくまでポイント奪取を目的としているあたりはスポーツらしいと言っていい。魔物を効率的に狩りつつ、相手チームが魔物を狩るのを進路を塞いだり攻撃を邪魔したりなどして妨害する、そのためには明確なチームとしての戦術があり、個々にポディションとしての役割があり、単なるステータスに寄らない頭の良さが必要であり、チームプレイが必要である、と。
息のあったコンビプレイが決まったり、試合を通じて選手としての殻を割って大きく成長していく展開といい、スポ根モノとしては、実に燃える展開がたくさんあって、面白かった。
ただもったいないな、と思ったのがこれ、単純に魔物をどれだけたくさん狩るか、という点にポイントが集約されていて、ダンジョンものではあっても「ダンジョン攻略」モノではないんですよね。罠を回避したり、謎を解き明かしたり、秘密の隠し部屋を見つけたり、特定のモンスターを限られた手段で倒してみたり、といったダンジョンを攻略する上での醍醐味、という点については殆ど省かれてしまっている。だから、いわゆる盗賊系のジョブはないみたいですし、魔物を倒して魔石をゲットする以外の、例えばユニークアイテムをゲットしたり、隠された秘宝をゲットしたり、謎を解いて新たなフロアを解放したり、ということで加点される、というのはないんだよなあ。
そういうじっくり腰を据えて時間をかける知的パズルゲーム要素はなく、あくまで制限時間にどれだけたくさん魔物を倒してポイントを貯めるか、という点取りゲーム、純粋に野球やサッカーのような球技寄りのスポーツということか。
能力も加護も持たないヒト族ということで、監督から排斥されてしまった主人公が、その資質を見ぬいた副監督から誘われ、気心の知れた仲間たちに支えられて再び立ち上がり、くすぶっていた二軍の連中とともに一軍のエースたちを倒してジャイアントキリングを成し遂げるために奮闘する、という王道といえば王道の、そしてハマれば間違いなく面白い燃える展開が、また素晴らしい。この主人公の子が真っ直ぐでひたむきで、気持ちのよい素直に応援したくなるピチピチした若人なんですよね。彼とともにコンビを組む天狗族の女の子と、リザードマンの親友がまた気持ちのよい連中で、そうなんだよなあ、スポ根ものというのは対象が思わず応援したくなるような、清々しい連中であるほど、試合展開が白熱していくほど燃えるものなんである。
そして、対戦相手が噛ませではなく、主人公たちが真っ向からぶつかるに相応しい王者であり、尊敬に足る大物であり、同時に主人公たちと同じ目線の高さから組み合える、同じくらいの泥臭さを持っていれば尚更に、試合は燃え上がるというもので、一軍の先輩たちがこれはまたこれで戦う相手として充分に熱くなれる気合入ったヒトたちであり、主人公たちの熱い気持ちをまっすぐに受け止めてくれる相手でもあったわけです。
そしてよくよく考えてみると、一軍ということは最終的には同じチームの仲間となる人達でもあるわけで、この人達と同じチームで戦えるようになるって、それはそれで燃えるなあ、と思ってたら、勿体ぶらずにラストのあの展開である。いやあ、全員これでもかというくらい株をあげまくるあげまくる。燃える燃える。
うん、面白かった。
藻女神ことオルタ様は、どう見ても毛羽毛現以外の何者でもないのですが、この人を喪女扱いはちょっと可哀想すぎるってもんでしょう。ちょっと重たい感じはあるかもしれないですけれど、健気で儚げで優しく思いやりがある大和撫子じゃないですか。毛だけですけど。
まあ、ギャップという点では氷結クール美女なウィリス先輩のキュートな素顔が一番でしたけれど。ちょっと表に出ないだけで中身可愛くないですか、この人。