はたらく魔王さま! 0 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 0】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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少年時代の魔王サタンが登場!
魔王軍設立までのエピソードを描いた『魔王さま!』始まりの物語!

赤い空と大地が覆う魔界の地。弱小部族出身の少年悪魔が、かつて魔鳥将軍と呼ばれ恐れられた漆黒の翼の老悪魔カミーオと激しい口論をしていた。少年の名はサタン。後に魔王サタンとしてエンテ・イスラ征服に乗り出すのだが、今は非力な一悪魔であった。
サタンは周辺の二大勢力である蒼角族と鉄蠍族に対抗するため、砂塵の荒野で気まぐれに生活し、一度動き出せば周辺の勢力図に影響を与える程の力を持つルシフェルを味方にしようとしていた――。
サタンとルシフェルの出会い、そしてアルシエルとの激突までを描いた魔王達の出会いの物語を、200ページ超えの大ボリュームでお届け。さらに、勇者エミリアがエメラダ達仲間と旅をしていた時代の書き下ろし短編、魔王達が笹塚に来たばかりの年末年始を描いた電撃文庫MAGAZINE掲載の短編を収録。
エピソード・ゼロとして、庶民派成分控えめの特別編でお贈りします!!
カーミオって初登場時、いまいちイメージ掴めなかったんだけれど、なるほど爺ちゃん役だったのか。それも、サタンの後見役か傅役みたいな感じの。一番最初からサタンの側にいて、というかそもそも無力で何の力もない子供だったサタンを保護して守り育てたのがカーミオだったわけで。その上で、突っ走るサタンの諌め役でもあり庇護役でもあり、とそりゃあ重要なポディションだ。
今更過去編、と読む前には思ってたんだけれど、これって何気に重要なパートだったんですよね。この巻、だいぶ積んでいてこれを読んだ後にすぐに新たに出た新刊の本編を読んだのだけれど、本編側での真奥の考え方の骨子みたいなのが、この過去編の方でしっかりと描かれていて、過去のサタンがどういう人物かここでキッチリ描き表していたからこそ、より現代編での彼の動向に意図と芯が通って見えたんじゃないかな。
実のところ、今まで現代の真奥にはその内面形成に得体のしれない部分はやっぱりあったと思うんですよ。それは、彼の為人が結局現代に人間になってからしか描かれていなくて、魔界やエンテ・イスラでの魔王時代にいったい何を考え、何を目的とし、何を思想思考の規範骨子として動いていたかがほとんど描かれていなかったからだと思うのです。魔王サタンとはそもそもいかなる人物だったのか、それがあやふやなまま現代での真奥が描かれていたために、彼の一番深い部分が肝心なときに、その内面が容易にうかがい知れない言動を取った時に、やはり不気味に感じる部分があったわけですよ。
しかし、最新刊の12巻を読むと、真奥にそういう得体のしれない部分が残っているのは正直まずい展開だったわけです。あの内容、かなり繊細というか心の機微を問うものになっていて、真奥という人間、というか存在が根底でどういう規範を持っているかわかってないと、難しい展開だったんですよ。逆に言うと、それがわかっているからこそ、威力がダイレクトに伝わって物凄いことになってしまったわけだ。
と、まあ次の展開への言及は次巻の感想に書くとして、本作で一番驚かされたのが、サタンが四天王を配下に得たのが、実は彼らを実力で圧倒的に上回る前だった、というところなのでしょう。力で従えたのではなくて、理想と夢で従えたというところなのでしょう。まさか、一番最後だと思っていたルシフェルが一番最初に味方にした四天王だったというのは意外も意外。しかも、実力的にはまったくサタンが敵わない時期に、である。アドラメレクも、一対一だと勝てるか怪しい時期に、あんな形で味方につけることになるとはねえ。なんちゅうか、サタンってマジでちゃんと魔王をやっていたというか、立身出世をガチでやってのけていたというか。乱世における下克上を真面目にやり遂げていたというか、面白い人生やってたんだなあ。
ちなみに、三番目に仲間になることになったアルシエルさん……しばらく、こいつ誰だっけという以前に、噛ませのやられ役だと思ってました。芦屋の方の名前で馴染み過ぎてて、アルシエルとかいう本名わりと本気で忘れてたりw
いや、芦屋さんが鉄蠍族だなんて変な種族だとか知らなかったし、忘れてたし。でも見直しましたよ。魔王軍随一の智将とか言われつつ、戦いは腕力任せの脳筋じゃん、と常々思ってて智将(笑)だとわりと信じつつあったのを、見事に覆してくれました。ほんとに頭良かったのね、戦い方も智将だったのね。そもそも魔族全体がどれだけ脳筋か、というくらい策も連携も何も持たない存在であったので、アルシエルの統率と戦い方は際立っていたのですが、エミリアの母ちゃんの天使との接触という要素があったサタンと比べても、何の概念も残ってない状態からあれだけキッチリとした組織を打ち立てていたアルシエルは規格外だったんでしょうね。そりゃあサタンも欲しがる逸材だわ。
真奥の本名はサタン・ジャコブ。これは以前にも出てたんでしたっけ。黒羊族という種族だったのは確か初耳だったぞ。あれで羊さんだったというのは、マジで「ええ!?」となりましたわ。ジャコブというと、ジャコバン派が連想されたけれど、むしろジャコブの原名であるヤコブの意味があったのかな。
ともあれ、このまま魔界統一編を見てっても面白いんじゃないかというくらい、ファンタジー戦記の第一巻みたいなノリは面白かったですし、真奥さんの見ている風景の核心みたいなモノに触れられた感じもあり、先に進むためにも重要な振り返りパートだったように思います。
最後の短編は、まだ新生魔王軍のみんなが出会っていない状態で、結構すれ違ってたのよ、というわりと世の中狭いのだというお話でした。これはこれで。

シリーズ感想