艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 (4) (富士見ファンタジア文庫)

【艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 4】 内田弘樹/魔太郎 富士見ファンタジア文庫

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孤立した仲間を救うべく立案された「AL/MI作戦」は、敵の奇襲により数多くの味方が斃れる、危機的状況にあった。しかし、AL作戦で北方棲姫と対峙する龍驤ら軽空母たちや、MI作戦で敵航空部隊と激突する舞風や飛龍、蒼龍、そして瑞鶴など、未来を掴もうとする艦娘たちの奮戦により、絶望に満ちた戦場に一筋の希望が見えつつあった。一方、手薄となった鎮守府に迫る深海棲艦の報を聞いた戦艦・長門は、仲間が帰る場所を守るため、他の戦艦らと艦隊決戦に赴くのだが―。“幸運の空母”瑞鶴を中心とした艦娘たちが織りなす『艦これ』本格“戦記”小説、砲撃開始!

これはもう、MARVELOUS!!としか言えねえ! あのイベント「AL/MI作戦」が、ここまで熱くなるのか、と思わず感動してしまった。なんて激闘! なんて激熱!! 激震の展開の連続に、握りこむ拳に力が入るのなんの。もう、なんか叫びたくなる、うおおおお!!
単純に史実を踏襲するのでもなく、艦これのゲームシステムに固執するでもなく、このあたり非常に良いバランスでIFの要素をつぎ込んでいくのは、さすがは架空戦記作家出身の内田さんである。舞風を主役としたレーダーピケット艦戦術なんてのは、その最たるもので。これはWW2の太平洋戦線でも最末期の合衆国機動艦隊で実施された防空戦術をモデルにしたものなんだけれど、全く同じではないんですよね。早期防空警戒網に引っかかった敵機群への迎撃の管制を、ピケット艦自身に任せるというのは艦娘である彼女たちでなければ出来ない事ですしね。リアル艦船の駆逐艦では、迎撃管制なんて絶対に無理だったでしょうし。一番良いのは、空中管制機を投入するのがこういう防空戦では一番最適なんでしょうが、妖精さんにはそれは出来んだろうしなあ。
んん? これ、そのうち装備品に防空指揮所とかCIC(戦闘指揮中枢)が登場するかもしれないなあ。艦隊司令部施設なんてものもあるのだから。
ともあれ、現状防空戦闘における統括管制を行うだけの装備品がない以上、現場は今あるもので工夫していかなければならない中で、大戦末期の記憶を持つ浜風からの提案で実行される事になったレーダーピケット艦戦術。これって、駆逐艦に電探が装備されてないとそもそも実行できないものなので、MI作戦当時にここまで電探が配備されてるのって、史実から鑑みるととんでもなく進歩してるんですよね。そこに擬似的とはいえ戦術システムまで何年も先のものが投入される、というのは燃えるものがありますし、実際矢面に立って防空戦闘の要を担う第十七駆逐隊の気合入ったやりとりがまた熱くなるのです。
しかし、トータルで700機近く。実際には数次に渡って攻撃隊を分散してしまったものの、それでも最大時で400機の攻撃機って、大戦末期の合衆国海軍でもそうそう簡単に投入できる数じゃないですよ。
まさに決戦規模じゃないですか。対する艦娘側も烈風に流星改で200機近くの艦載機に、レーダーピケット艦戦術にピケットラインを超えたところにも空母直卒による完全に統制された防空管制が敷かれている、という凄まじさ。これが、艦これのミッドウェー海戦なのか!
これだけの激戦が繰り広げられているにも関わらず、そうそれに北方海域でもAL作戦が展開しているにも関わらず、まさか深海棲艦の真打ち艦隊が鎮守府への中入りを企てているとか、まず想像できんよなあ。
イベント時における鎮守府急襲には度肝を抜かれたものですけれど、こうして物語としてAL・MI作戦が展開していく一部始終を目の当たりにしてきた上で、鎮守府への深海棲艦来襲!はわかっていても、「ぬわーーーー!!」と叫びたくなるインパクト。さらに、MI作戦艦隊まで大ピンチ、とこの絶望感たるや……。
トドメに、本土来襲してきた深海棲艦の水上打撃艦隊のラインナップ。うん、ヲ級空母とかタ級ル級戦艦がたくさんいるだけでも酷いのに、2巻で大和とガチで叩き合って互角だった戦艦棲艦がいる上に……うん、あれは存在自体反則です。レ級はアウトw
これだけの大艦隊に、本土艦隊の迎撃準備が整うまでの時間稼ぎの為にわずか六隻で突貫していくのが、アニメでも主人公を強める吹雪ちゃんですよ。これがまた、滅茶苦茶カッコイイんだ。アニメのニュービーな吹雪と違って、こちらは勇猛果敢にして冷静沈着、ハートは熱く頭はクールにを地で行くような歴戦駆逐艦にして第十一駆逐隊旗艦といった風情であり、絶望的な戦闘にも怯まず同輩たちを引き連れて指揮官戦闘で突っ込んでいく姿たるや……あっちのアニメの吹雪も嫌いじゃないんですが、こっちの吹雪の格好良さは反則だぜぇ。

にしても、レ級がやっぱりヤバすぎる。なにこのワンマンフリート。1隻で戦艦空母重雷装艦潜水艇母艦能力を持ってるて。うう、イベント時のあの悪夢を嫌でも思い出す。あの時は顔見るのも嫌だったもんなあ。なんどフルボッコにされたか。
本土防衛艦隊側も、長門陸奥をはじめ戦艦群は金剛型を除いて全員揃い、大和武蔵も艤装が完全でないのと就航したばかりで訓練不足という側面があるとはいえ、それでも仮にも大和型。これだけ揃っているにも関わらず、どんどん追い込まれていく切迫感。MI作戦艦隊側も、蒼龍大破に瑞鶴も発艦不能と航空戦力が底をつきかけた段階、というこれでもかこれでもかと絶望感を積み上げていく。
……あのね、もうMI作戦の最初に赤城加賀翔鶴が大破した段階で、相当に一杯一杯だったのですけど? この上、どこまで追い込むんですか?
でもだからこそ、だからこそ、この時激闘を繰り広げていた全海域に向かって放たれた電文が、これ以上無く胸を打ったのでした。
これは泣く。泣いた。泣きました。すべての絶望を振り払うような、勇気を柱にして打ち立てるような、高らかな宣言。力強いエール!
ずるいですよ。前巻のMI作戦がはじまった時には、一貫して否定的に語られていた飛龍個艦による反撃が、この土壇場でこんな風に使われるなんて。
いやあ、おっもしろかった。戦艦から空母から駆逐艦から潜水艦まで、よくぞまあここまで、というくらいみんなに見せ場があり奮闘の場があり燃える展開があり……激闘激闘激闘の連続で息つく暇もないくらい熱い一冊でした。みんな、満身創痍で頑張りすぎだよぉ。資材が全部消し飛ぶ勢いすぎるw
そして、ラストは熱く燃え上がったハートを優しく包み込むような、これまた感動の再会編。トドメにまた泣かされた! これ、3巻が書かれた時点ではラストの彼女って実装されてなかったんですよね。これは、粋な展開だよなあ。もしかして、作者には実装の情報が事前に入っていたのかもしれませんけれど、それならそれでこのラストシーンはやっぱり上手いなあと思うのですよ。

さすがに、この規模の大海戦はつい先日行われていた迎撃!トラック泊地強襲 (2015年冬イベント) まではないでしょうし、秋イベントの渾作戦はそこまで過酷な作戦ではないので、このシリーズもちょっとは一息つけそうかしら。次辺り、ビスマルクたちドイツ艦が来そうな感じだけれど。
ドラマ的にはやっぱりアメリカ艦が出てくると色んな方向に盛り上がりますし、いずれはそっちも期待したいなあ。
うん、いずれにしても、今回は3巻との上下巻構成となってどうなるかと不安でしたが、分割したに相応しいとびっきりの盛り上がりでした。燃えた燃えた♪

2巻 3巻感想