ファング・オブ・アンダードッグ2 烏の嘴 (ダッシュエックス文庫)

【ファング・オブ・アンダードッグ 2.烏の嘴】 アサウラ/晩杯あきら ダッシュエックス文庫

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悪しき者達を倒すために世界を巡る陣士、アルクとユニ。新たな任務は疫病で封鎖された城壁都市ヤリゼイサの調査だった。アルクは素性を隠して都市に潜入する際、少女の命を救う。都市の住民であった少女は恩人の剣士としてアルクに淡い想いを抱くのだが…ある時、彼が事件の犯人だと聞かされ、しかも嫌悪する陣士であるという真実を知ってしまう。そしてこの時、反陣士組織「烏」の精鋭、円と斛はアルク殺害のため、都市に侵入を果たしていた…。助けるべき都市の群衆、烏、そして事件の真犯人…全てを敵に回し、孤立無援となったアルクは誰を倒し、誰を救うのか…!?死闘に次ぐ死闘、時々耳かき。無頼派和風バトルアクション第2幕!
アルク、強くなったなあメンタルが。まだ陣士となる前のアルクは兄から逃げ出してきたことで自信を持てず負け犬と言われても仕方ない後ろ向きな面が強かったのだけれど、兄に認められその愛情を実感し、剣士としての自分を肯定できた上でユニという無二の相棒を得たことで、陣士となるための戦いを勝ち抜けたのだけれど、その得た自信と実績は彼を確かに一廉の剣士とし、一廉の猟犬としたようだ。今回の一連の出来事は相当に心を痛めつけて来る内容で、どこで心折れ不幸を嘆き理不尽に挫けて悪意に屈してもおかしくなかったのに、アルクは最初から最後まで一切ブレずに弱き者の味方であり続けた。本当にカッコ良かった。不細工で無様な形だったかもしれないけれど、守った人たちに理解されず、それどころか理不尽に虐げられ憎まれ恨まれたけれど、自ら悪を背負い正義を成す姿は、正しく正義の味方だったんじゃないだろうか。
その健気で一途な姿に、一番共感し理解し心を寄せてくれたのが、よりにもよって反陣士組織「烏」の戦士である円と斛だった、というのは皮肉な話。最初はアルクを殺す対象として近づき、しかし剣を交えることで倒すべき好敵手へと認識するに至ったと思ったら、最終的にアルクが受けた理不尽な待遇に一番憤り、悔しがり、怒りを露わにしたのが斛たちだった、というのは……この苦しい話の中で涼風として吹き抜ける展開だった。
特に斛は、暗殺組織の人間という以上に、反陣士組織の人間というより、「烏」という組織の基本理念だったはずの「陣士に苦しめられる民衆を助ける」という理念に忠実な、ある意味アルクたちと同じ方向性の正義の味方、な部分が強かったんでしょうね。だからこそ、相容れないはずのアルクたちと同調してしまった、と。
いつか、決着をつけなければいけない。剣を交えて殺しあわなきゃならない関係だとしても、だからこそ通じあってしまった、というべきか。お互いに、剣士としての業が良き形で化学反応起こしちゃったんだろうなあ。
剣友みたいになってしまった斛とはともかくとして、アルクと円の関係ははっきりいって思わぬ方向からドツボにはまりましたよね、これ。もっと普通に敵という位置に居続けるものだと思ってたら、円って完全にこれヒロイン枠じゃないですかw
1巻の剣鬼っぷりみたら、ヤンデレ風味の殺し愛上等のやや精神的にも異常なものを抱えてる系だと思ってたんだが、まさかの「耳かき」展開。魔性の耳かきに垂らされましたよ、この娘w
【化物語】の阿良々木くんの「歯磨き」に匹敵する、女の子をトロトロにとろかす魔性の技「耳かき」の誕生である。円、なんかヤバい薬にハマったみたいになっちゃってるじゃないか、これ。
そこに留まらず、もっと直接的にアルクと「アレ」な事をしてしまうはめになったのには度肝を抜かれてしまいましたけれど。アサウラ作品でここまでするのって、ベン・トーの著莪相手以外じゃなかったんじゃないだろうか。一躍これで円、一気にユニに並んじゃいましたよ、筆頭ヒロイン候補として。共闘し、同じ敵と戦って死線をくぐり抜けることで、お互い剣技をぶつけ合うのとはまた違う通じ合うものも得てしまいましたし、殺しあう好敵手として、助けあう仲間として、意識しあう男女として、の三拍子が揃ってしまったような、これ。まあ、アルクからは果たしてどれだけ矢印が向いているかはわからないですが。
なにしろこの主人公、一番ラブラブなの、アニキだもんなあ。アニキはアニキで弟好きすぎてドン引きレベルだし。ちゃんと奥さんが居て仲睦まじいのが幸いだけれど、義姉さんが器の大きい人だから助かってるけれど、奥さんが嫉妬に狂いかねないほどアニキ、弟好きすぎるもんなあ。若干、キモいくらいw
弟は弟であれだけツンツンしてたのに、今じゃ尻尾ぶんぶん振り回す勢いで兄ラブだもんなあ。まあ、こいつの人生、兄に認められることだけに費やしたようなものだし、仕方ないのだけれど。
それにしても、兄貴がメインヒロインすぎるw

一巻感想