不戦無敵の影殺師 4 (ガガガ文庫)

【不戦無敵の影殺師(ヴァージンナイフ) 4】 森田季節/にぃと ガガガ文庫

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「異能力制限法」により異能力者はすべて社会から管理され、戦う機会が奪われた現代。第二回KCで敗退したことで元・最強となった朱雀と小手毬。自分たちが少しでも異能力業界に貢献できたことを誇りにしつつ、もう一度最強を目指し、仕事に勤しんでいた。しばらくして朱雀は普通の人間が異能力を使う「無能力者ガールズ」というアイドルユニットが人気上昇中であることを知る。彼女たちの存在が、朱雀自身に困難をもたらすキッカケであることを彼はまだ知らない―。異能力vs科学力!?新たな戦いが巻き起こる第4弾!

今回のお話、朱雀と小手毬が相棒だから煌霊だからと拘ってきた建前を排して、お互いの関係を見つめなおし本当の気持ちを確かめ合う、という実に青春的展開のはずなんだけれど、この作品の雰囲気だと何故か「内縁関係にある女性とズルズル続いていた曖昧な関係を、きちんと精算して家族とも相談してちゃんと身を処すまでのあれこれ」という感じになってしまう不思議と面白味(笑
まあこの主人公ももうすぐ三十路という年齢ですしねえ。小手毬との関係も、こっ恥ずかしくも初々しい恋愛模様の段階はとっくに通りすぎて、上記したようにほぼ内縁の奥さん的な感じでしたし。今更青春模様なんてやってらんないでしょうし。なんせ、もう夫婦間の収入格差問題まで克服してる関係ですし、ですしッw
二人の関係については、もっと家族の方から駄目出しが入るんじゃないかとも危惧してましたけれど、意外と両親はその辺頓着ないみたいですし、妹の白虎なんざ小手毬への接し方、殆ど兄のお嫁さんというか義理のお姉ちゃんみたいな懐き方でしたし。
となると、問題は小手毬の意識であると同時に、煌霊という一度死を経て主に命を吹き込まれてる使役物、という存在そのものにあったようで、小手毬的にはそれを相当気にしていたみたいなんですよね。口では自分は煌霊だ、と言い聞かせるように繰り返しつつ、朱雀の家族は自分の家族も同然だ、という幾度かの発言の温度からは、煌霊の主の家族というよりも夫の家族、というニュアンスが強かったように見えましたし。それに、どうも自分に子供が出来るのか、産めるのか、というのをしきりに気にしてた素振りがありましたからね。
気持ちとしてはもう名実ともに朱雀のお嫁さんになりたいけれど、自分が煌霊であることがネックになっていて、半ば諦めて自分は煌霊であると頑なに主張しながら、内心はどうにかならんもんかと苦悶している、というような感じで。
だからこそ、冷静沈着な小手毬としては珍しく、フラフラと誘惑に乗ってしまったわけで。まああの時は朱雀も反対も抵抗もせず、無言で後押ししちゃってたからなあ。仕方ないっちゃ仕方ないのですが。怪しげな不妊治療詐欺に思わず引っかかっちゃう若夫婦、みたいな?
とまあ、メインは朱雀と小手毬の関係再編の話だったんだけれど、一方でもう一軸はというと無能力者、という枠組みを押し出しての、力を持つものへの僻みやコンプレックスに焦点を当てながらも、その気持は良くわかるがやっぱり筋違いであって、頑張る方向をちゃんと考えないと、という趣旨の話を懇々切々と語りかけてくる内容で、これがまた世知辛いというか、バッサリ切って捨てずに朱雀が自分の身や経験に照らし合わせながら諭すように語っているのが身に沁みるんですよねえ。
滝ヶ峰万理の言うように、明らかになってみれば本当につまらない話で、子供みたいに八つ当たりするばかりでそのコンプレックスやらをうまく利用してパワーゲームを仕掛ける事も静かに能力者を追い落としていくような謀略を企むでもなく、バタバタと手足を振り回すだけのみっともない話でしかなかったのだけれど、だからこそ朱雀の哀れみが沁みるわけです。
ああいうみっともないの、目の当たりにしたのも、朱雀がきちんと身を処す事を考える理由の一つになったんだろうなあ。
ところで、煌霊って子供とか産めないんだろうか。確かに主から命を吹き込んで貰わないとすぐに動けなくなってしまうような不自由な体ですけれど、「生命」を吹き込んでもらっているということは死体を動かしているわけじゃなくて、ちゃんと生きているともとれますし。体が成長しないのは、不安要素だけれど……。親父の煌霊が、離れた場所で暮らしながらちゃんと今も存命してる、というあたりにヒントがありそう。
なにしろ、ラストでえらいことなっちゃったからなあ。

シリーズ感想