Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 2 (このライトノベルがすごい!文庫)

【Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 2】 只野新人/フルーツパンチ このライトノベルがすごい!文庫

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VRMMORPG“DEMONDAL”そっくりの異世界に転移してしまったケイとアイリーンは、タアフの村での騒動を片付け、城郭都市サティナへたどり着いた。物資補給と情報収集を進めるうち、街の暗部を垣間見、そして知り合った子どもの誘拐事件に直面する。許されざる所業に、アイリーンは走りだした。その先に待つ苛酷な現実も知らず―大人気異世界ファンタジー第2弾登場!
異世界に転移したての一番きつい時期にへばっていたアイリーンと、殺人も含めて冷徹に自分とアイリーンを守るための決断をし続けたケイ。二人の覚悟というか身の危険への危機感の差は、深刻な錯誤となってもっと二人の関係に影を落とすのかと思っていたんだけれど、考えていた以上にアイリーンは覚悟が決まっていた。というか、心根が強かった、というべきか。この二人の差は仲違いへと転がっていくのではなく、アイリーンが良心であり指針としてケイを引っ張っていくことになるのか。
1巻の感想でも触れたことなのだけれど、正直ケイの酷薄さ、自分とアイリーンの身の安全をはかるためなら他人の事など一顧だにしていないというガチガチに守りに入ったハリネズミみたいな姿勢は、幾らなんでも過敏すぎると思える反応だったんですよね。よっぽど酷い目にあった後ならともかく、彼の場合は異世界に転移した直後からびっくりするくらい警戒心丸出しだったですし。ただ、あそこまで徹底的に自分たちと他人を区別して、他人から寄せられた好意すらも計算で選り分ける姿勢は、まあ気持ちのよいものではなかったわけです。
もともとケイがそういう性質の人間だったなら、そういう姿勢も仕方ないと嫌悪混じりに受け入れられたのでしょうけれど、自然にそう振舞っているというには徹底しすぎているところがあったんで。
一応ながら安全が確保できる場所であるサティナに辿り着いた後に、ケイが殺人などを後悔はしていないものの、それでも引きずるような感情が滲み出始めているのを見て、どうやらケイが普通以上に臆病というか、生命の危険に対して過敏であることが感じ取れたんですけれど、あれはやっぱりリアルでの状況とか生い立ちとかが関係あるんでしょうね。ともあれ、ケイ自身も自分のやりようが正しいと思いつつも、まともな感性を持つものとして違和感みたいなものはあったのでしょう。それをズバリと突いたのが、アイリーンのあの率直な一言だったのでしょう。ケイの内心を知らずにいたからこそ、自然に出てきたあの言葉。「ひとでなし」というヒトコトがケイをどれだけ打ちのめしたか。あのままだったら、ケイは自覚がないまま人であることを踏み外していた感が非常に強かったので、アイリーンは知らず彼を引き戻したことになるのでしょう。それも、安全なところから理想をうたうのではなく、自ら傷を負い血を流し人の命を奪うことによって覚悟を示し、それでもケイが避けようとしていた道を敢然と突き進めるのだ、と証明してみせたわけで。正しく人として生きる、というのは困難だし危険も多いでしょうけれど、気分的にはやっぱり楽なんですよね。これまでケイはゴリゴリとなんか大切なものを削っていってヤバい感じになりつつあったので、アイリーンが引っ張っていく先は多少なりとも彼を均衡危うかった心を守ってくれるのではないでしょうか。
二人は、思いの外良いコンビだと思いますよ、これ。

しかし、あの誘拐された子の、助けだされた後のあの台詞って、暗喩が入ってるわけじゃないですよね? 言葉通りに受け取ったら、微笑ましい要求なんだけれど、あの飴がそのままの意味で飴じゃなかったら……鬱になるじゃすまないんですけど。

1巻感想