ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (7) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 7】 宇野朴人/ 竜徹 電撃文庫

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軍事クーデターによって、カトヴァーナ帝国内はイグセム派、レミオン派、旭日連隊の三つの勢力に分裂する。旭日連隊のイクタは、行方不明だった帝国皇帝の身柄を確保することに、いち早く成功するが、佞臣トリスナイの巧みな謀略に踊らされてしまう…。イグゼム派の将校として捜索隊を率いていたヤトリと、戦場で対峙するという、まさかの事態を迎えるのだった―。非情な運命は、二人の未来をどう変えることになるのか?話題沸騰の本格ファンタジー戦記、ついに最大のヤマ場を迎える!!
未だ衝撃のあまりクラクラしてる。実のところ、作家にとってこういう展開というのはかなり「やりたい」展開だと思うんですよね。でも、なかなか思い切れないし、身を切るような辛さを感じてしまって出来ないんだと思う。でも、その身を切るような辛さこそを恍惚と羨望してしまうのが作家のサガであり業でもあり。
衝動ではないのだろう。最初からここを目指して切り貼りしてきた節があちこちに見受けられる。全部計画のうちだったのだろう。でも、実際に書き始めて、イクタとヤトリの二人を描いて、そこに実が生まれ像が結実しキャラクターが息をし始めた時に、果たして事前に描いた構想を振り返り、果たしてどれほどの仄暗い感情を抱いたのか、想像するに余りある。痛くて辛くて苦しくて、なんて甘美な悦楽だろう。羨ましくすら感じてしまう。こればっかりは、書く方の特権であり読み手であるこちらはただただのた打ち回るばかりだ。いや、こんなふうに感じている時点で「共感」しているのか? 同じ沼の淵にハマってしまっているのか? 
いずれにせよ、避けられるはずだった帝国の滅びは、王女の幼い願いは……これで完全に果たされる。どうやったって叶うはずもなかったものが、ここに結実してしまった。ハッピーエンドなどありえない。どこの誰にも望まれなくなった。滅びろ、滅びろ、滅びろ!という切なる願いが重なってしまったのだ。私も重ねてこう呻こう。
「滅びてしまえ!!」
それ以外、許せない心境なのだ。この現実をもたらすに至ったすべてが、呪わしい。許せない、怒りがこらえられない。悲しみなど吹き飛んでしまった、ただただぜんぶぶち壊して欲しい衝動に駆られている。なんて、暗い愉悦だろう。今になって、ようやく受け入れがたかった王女の有り様に共感している。シンクロしている。読後直後の動揺が冷静さを奪っているのだろうけれど、今はただこの暗い愉悦に身を任せていないと、色々と耐えられそうにない。ああ、イクタはどうするのだろう。
ヤトリよ、そいつは呪いだぜ。約束は守られ、同時に守られない。しかし、それは彼を縛るのだ。それにあんた、前に言ってたじゃないか。イクタを殺せば「ヤトリ」は死ぬって。幼い頃の狼との死戦でだって、イクタは言ってたじゃないか。ヤトリの最後の言葉は幸せな妄想だ。比翼の鳥は、一つには溶け込まない。二人でいるからこそ、連理比翼なのだ。彼がこれまで生きてきてやってきたことは、すべて全部何もかもが、ヤトリその人の為だったのに。イクタとはヤトリだったのに。
イクタが死ねば「ヤトリ」が死ぬのと同じように、「イクタ」もまた死ぬだろう。なら、「イクタ」が死んだ後に残るのは、何なのか。
ここからは、望まれし煉獄だ。

前回作風に合ってないと言ったイラストだけれど、今回に関しては絵師の竜徹さん凄く頑張ったんじゃないだろうか。土台からひっくり返したように雰囲気変えて、この衝撃的な展開に挑むかのような気合入ったイラスト群だったと思う。まったく、文句の付けようはなかった。この努力は掛け値なしに素晴らしい。

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