天空監獄の魔術画廊 (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

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奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。絵画きの少年・リオンはある日天空の大監獄へと閉じ込められてしまう。彼に与えられた役目は看守、そして彼を待っていたのは『魔王の絵画』を“その身に”封じられた囚人の少女たちだった。彼女たちが持つ魔術の力を利用して、リオンは監獄からの脱出を決意するが―。傑作スペクタクルファンタジー!!
おおっ、これは面白い、面白いなあ。作品の枠組構造としては、これってエロゲの監獄モノなんですよね。いや、実際にそういう監獄モノのエロゲーとかさすがにやった事ないので、ここはそういうモノと想像して定義しちゃってごめんなさいなんですけれど。エロゲーの監獄モノが監獄という特殊環境、看守と囚人という特殊な関係、ひたすら虐げられる女囚というこれらの要因をひたすらエロを描写するのに費やすケースが多いと思うんですけれど、本作はそのシチュエーションを踏まえつつエロスはエッセンス程度に置いておいて、まずこのシチュを利用しての「物語」へと力を傾けてるわけです。ここは、看守であるリオンと、囚人である詐欺師の少女と無実の罪で収監されてしまった女騎士と三人で協力して脱獄を図る、という主題で話は展開していくのですが、意外と盲点というかこういう構図の作品ってあんまりなかったと思うんですよね。最近の流行りから一歩も二歩も外れたストーリーや舞台設定はなんだか目新しくて新鮮で、思わず読んでいて「おおっ」と唸ってしまったり。エロゲでよく活用されているシチュでも、目線を変えて活用してみるとこうも新鮮な印象を得られるのか、と驚かされた次第。作者の永菜さんって、これまで出している作品を見てもちょっと着眼点が他の人と違ってるんで、なかなか送り出してくる作品から目が離せない人なんですよねえ。
さて、エロスはエッセンスとイイましたけれど、そもそもこのシチュエーションからして根本的にエロいので、まず作品の雰囲気からして淫靡な空気感が敷き詰められていますし、全裸で直腸検査されてしまう女騎士、という時点でまあ色々なんですなあ、ははは。
とはいえ、主人公のリオンは性欲よりも食欲よりも睡眠欲よりも、まず絵が描きたい、という画狂のたぐいであり、画家として欲情する絵の構図がまたいい具合にイカレていて、それはヒロインのレオナやキリカに対して色欲とは違う執着を抱く理由になってもいるのであります。一方で人間性はわりとマトモであり、生活力皆無のだめ人間で結婚しても絵を優先して奥さん泣かす奴だ、と当の嫁候補たちから散々愚痴られてる男ではありますが、実際は本当に大事なものは絵を描くことよりも優先できる、なかなかに侠気のある兄ちゃんなんですよね。浮世離れした変人の絵描き狂いですけれど、まあ惚れるに足りてしまう良い主人公なのですよ。
逆の方からの見方をすると、これだけ絵狂いの男をして利き腕捨てる覚悟を決める事が出来るほど、ヒロインたちも覚悟の据わったなかなかイイ女の子たちなんですけどね。これだけ主人公とヒロインに歯ごたえがあると、やっぱり面白いです。
それはそれとして、女騎士様はやっぱり案の定、超チョロいのはまあ常識ですか(笑
主人公は常識がまかり通らない変人だし、マトモに見えた騎士さまはこれはこれで男慣れしてなさすぎて色々とダメな感じなものだから、詐欺師のレオナがひたすら常識サイドでツッコミに回ってしまっているあたりは、この娘が一番苦労するタイプなんだなあ、というのが一目瞭然で、強かで賢いのも場合によりけりなのかもしれませんw
あと、お姉ちゃん甘やかし属性を頑なに捨てないあたりに、作者の業が伺えるのでありましたw
ともあれ、なかなか初っ端から食いつきたくなる面白さで、次巻以降もこれは期待のシリーズですな。