ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る (MF文庫J)

【ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る】 森田季節/文倉十 MF文庫J

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一色佐奈は、地下鉄が好きなちょっと変わった女の子。そんな彼女は今、クラスメイトの浦上彰人に恋をしていた。ところが彼には、万里花という美少女の幼馴染がいることを知る。二人は何かの秘密を共有していたようだったが、恋敵と思っていた万里花の協力もあり、彰人とより親密になることができた。そんなある日、彰人から秘密を打ち明けられる。―それは古い集落に代々伝わる不思議な風習。彰人と万里花、二人の秘密の中に部外者の佐奈を迎え入れたことで、物語は大きく動き出す―。誰が彼女を殺したのか?苦して甘い、トライアンギュラー恋愛ミステリー。

ふわふわと綿菓子みたいな甘やかさの一方で、ヌメるような粘っこさが付きまとい、サッパリとしているようでドロドロの感情が渦巻いている。ほろ苦く、甘酸っぱい。森田作品の中でも特に先鋭的だったこの雰囲気。懐かしいなあ、まるで【ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート】じゃないか……と思って読んでたら、んんん!? なんか聞き覚えのある曲名が出てきましたよ? あれ? タマシイビトとかイケニエビトとかいう単語が出てきましたよ!? ってか、この作品のイラスト文倉十さんじゃないか! 
まさかの【ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート】、【プリンセス・ビター・マイ・スウィート】に続く第三作でした。いや、気づかんですよ。六年ぶりですよ。しかも、タイトルにビター・マイ・スウィートついてないし。
しかしこれ、趣味で個人的に書いていたモノと後書きで述べていはりますけれど、なるほどこれはとことん好きな様に書いてる感が諸々出ていて、思わず色んな意味のこもった半笑いが浮かんでしまいました。この、万華鏡みたいな恋愛感情のややこしいことややこしいこと。その複雑怪奇さは、当人たちを含めて読んでいる人にもはっきりとした答えを与えるつもりが、そもそも存在していないあたり、潔いと言っていいくらい。ただ青春を謳歌する若人の煩悶を描くだけならば、もうちょっとわかりやすい矢印や、ベクトルとなるんだろうけれど、そこに伝記的な要素が絡むことによって本来の青春模様の中では生じ得ない秘密の共有が、彰人・佐奈・万里花の間に生まれてしまい、それが想いの進む進路をグニャグニャに捻じ曲げていくのである。非日常であるものが日常化することによって、容易に越えることが出来てしまった心理障壁。そこで犯してしまった罪は、化け物になったからではなく、恋する少年少女であり続けようとしたからこそであり、しかし罪を犯す事で彼女たちは純粋な恋に耽溺することができなくなってしまうわけだ。しかし、罪の意識を抱えながら後悔のない彼女たち。立ち止まって近寄ることができなくなっても、お互いにずっと見つめ合っていればそこに改めて生じるものもある。さて、すべての元凶であり罪を犯すことを促し、行き詰まりかけていた彼らを送り出すことにした白は、それを見て苦笑い。万里花への声援は、さて純粋な好意なのかちょっとした意趣返しなのか。
改めてもう一度、今度は純粋に三人による三人のための三角関係を修羅場ってほしいものである。個人的には、旧悪女にして乙女たる万里花の巻き返しに大いに期待したい所。なんだかんだで散々に割食い続けてたのは彼女なんだから、もう好きにしていいと思うのよ。そうして生じる不幸は、きっと良い不幸なのだから。

森田季節作品