魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉11 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 11】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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記憶を取り戻したティグルはジスタート王国にて新年を迎え、因縁浅からぬ戦姫たちと感動の再会を果たす。また、彼はジスタート王に謁見し、思い描く未来の甘さを指摘される。ブリューヌに戻ったときろで残してきた巨大な武勲が、決して彼を以前と同じままにはしておかない。王の言葉に、ティグルの胸中は大きく揺らぐ。一方、ブリューヌ王国ではレギン王女暗殺が企てられるも、未遂に終わる。だが、事件はそれで終わりではなかった。陰謀の背後に見え隠れしていた隣国ザクスタンが、剥き出しの野望をブリューヌに向ける。故国の窮地に、英雄となった若者はいま、再び大動乱にその身を投じようとしていた―最強美少女ファンタジー戦記、新章突入の第11弾!
七戦姫勢揃いのなんというド迫力。サーシャ抜きなので六戦姫だけれど。よく考えると、こういう形で戦姫たちが勢揃いする機会って今までなかったんですよね。それが公式の場で、こうしてティグルを取り巻くように戦姫たちが揃うインパクトときたら。しかも、ティグル中心、戦姫をティグルが引き連れるような構図になってるんですもんねえ。ジスタート内でも、これはもうティグルという存在を無視できないんじゃないだろうか。
それにしても、他の戦姫があれだけティグルと好を通じてしまっている中で一人だけヴァレンティナだけが蚊帳の外という疎外感(笑
思ってた以上にリーザとエレンに和解ムードが漂っていたのが、そこに拍車をかけるわけで。ほとんどのメンツとは初対面となるオルガも、ソフィーがわりと傍に寄ってる感じでしたしね。まあ、いきなりオルガは再会した途端に爆弾を投下してましたが。ティグルとの男女関係というのは、それぞれの立場もあってか戦姫の誰もが保留というか、あんまり考えないようにしていたっぽいところに、オルガが空気読まずに、同時に結構その立場にも考慮した爆弾発言で否応なくそれぞれの胸中に波を立たせたわけで……速攻でその波に乗って食いつくソフィーの肉食っぷりには笑ってしまいましたがw
めっちゃ食う気満々のソフィーに対して、他の戦姫が思いの外ティグルと親しい関係なのを目の当たりにして、焦りながら自分も呼びたいし呼んで欲しい、といそいそと申し込むリーザがなんか可愛らしかった。このメンツの中では何だかんだとリーザが一番乙女っぽい内面があるんだよなあ。ミラもあれでけっこうそっちの卦があるけれど。お陰でこのリーザとミラ、意気投合しつつ打ち解けられないんじゃなかろうか。
と、男女関係云々だけではなく、オルガの投じた爆弾というのは、ティグルの在り方を「王」のそれだ、と言及してのけた点こそが大きかったように思う。ティグルはこれまでの旅路の中での体験の中で王という存在について徐々に思うところを蓄積していってたと思うんだけれど、戦姫たちにとってティグルという男に「王」をみるという考え方は今まで殆ど持ってなかったんじゃないだろうか。ところが、オルガの発言によってそれが現実的か非現実的かというところは脇において、ティグルという男を表す在りようとして「王」という考え方がある、という発想が植え付けられたわけだ。これは、今後について大きな布石になりそう。
むしろ、もっともティグルという男と「王」という存在を結びつけて考えていたのは、こうしてみるとジスタート王なんじゃないか、とすら思うんですよね。ジスタート王って、当初エレンがけちょんけちょんに貶してたもんだから、随分な小物な王様なのかと序盤は思ってたけれど、中盤から直接登場するようになってその内心や考えが読めないところから得体の知れなさ、不気味さが感じられてた上に、今回の含蓄あるティグルへの助言とも警告とも野心の植え付けとも取れる言葉の数々は、このジスタート王がどのような性質の持ち主であるかは未だわからないものの、少なくとも「賢人」のたぐいであることは間違いないと確信させられた次第。ティグルの在り方とは違うにしても、確かに「王」たることを忠実に勤めてる、って感じなんだよなあ。
ぶっちゃけ今の段階だと、ヴァレンティナではジスタート王に対してまだまだ及ばないように見えるのよねえ。いろいろ暗躍している彼女だけれど、まだ浅いというか、ジスタート王やガヌロンレベルに比べると深慮や遠謀が足りてない気がする。
ジスタート王の在りように、強く「王」という存在を意識させられたティグルに対して、間髪入れずに届くのは、ブリューヌへのザクスタン王国の侵攻。そして、それを手引きしたと思われるブリューヌ内の新女王への抵抗勢力の存在。既に他国にも名望響くブリューヌ最高の英雄となってしまったティグルは、もはや辺境の小領主という立場では居られず、ブリューヌ国内での政治闘争に必然的に巻き込まれることになるのだと、ジスタート王の予見通りになりそうな流れ。第三部に入り、明確に空気が変わった感があるのは、このティグルの政治中枢へ問答無用に係ることになりそうな流れそのものなんだろうなあ。そして、それはティグル単体ではなく、ジスタートという異国の影が常に付き纏うことになるわけだ。もう誰がどう見ても、ティグルのバックにはジスタート王国がついている、と思われて仕方ないもんなあ。いくら英雄とはいえ、他国の紐付き、という印象は常に悪感情を伴って付き纏うことになる。どれだけ健常で公正な考えの持ち主でも、疑念は抱いてしまうだろう。ザクスタンの侵攻にともなってエレンの軍を連れて戻ってきたティグルへの視線には、その萌芽が幾つも散りばめられていた。今後、もつれるだろうなあ。
あと、戦姫の結婚についてはなんか具体的な話というか、一般的な貴族や豪族との違いなんかが語られて、より身近な話ともなってきたんだけれど……なんかティグルって、今の段階でわりと好きな相手居そうじゃない、これ?
それから、もう一つ重要なイベントが。ついに、サーシャの後継。操炎の双剣「バルグレン」を継ぐものが現れる……って、んんん? これって、もしかして、一番最新の戦姫にして、一番年長になるのか、この人!?
エレンの傭兵時代、以前の子供時代も知ってるみたいだし、もしかして、リーザとエレンの過去イベントを掘り起こしてくれるきっかけにもなりそうな予感。リーザはエレンとの過去については絶対口を開かなさそうだし。そのくせ、エレンを超好き好きなのは、ミラがエレンの悪口言ったら超不機嫌になってるあたり、未だ衰え知らずみたいだし、そろそろ本格的に和解させてあげてほしいのよね、この二人。

シリーズ感想