熾天使空域 - 銀翼少女達の戦争 (C・NOVELSファンタジア)

【熾天使空域 銀翼少女達の戦争】 榊一郎/BLADE C・NOVELSファンタジア

Amazon

東京の女子校に合格して田舎から上京してくる、はとこの澪をむかえに行った将一郎。駅で待ち合わせをし、そのまま寮へ移動しようとした途端、二人は謎の空間に取り込まれてしまった。頭上を飛び交うのは、戦闘を行う美しい少女たち。だがその姿は戦闘機―しかも、第二次世界大戦時のものだった。将一郎らは、その中でも零式艦上戦闘機二一型を模した少女に助けられ、一緒にこの窮地を乗り越えることになり!?榊一郎×BLADEの人気コンビが贈る、新たな萌ミリ、ここに開戦!
萌ミリって、ガチな殺し合いじゃあないですか。しかも、かなりの理不尽系。最近、というには結構息が長くなっているけれど、ミリタリー系要素の擬人化モノ。第二次世界大戦期の航空機を対象にしたものなんだけれど……普通の少女に後付で人体改造を、というパターンは可能性としては語られながらも、実際の設定として用いられる作品は今まで意外となかったんじゃなかろうか。このパターンはどうしても内容がエグくなりがちだし(何しろ人体改造)、改造のネタになった兵器なんかよりも、改造を受けた少女の境遇や内面描写に焦点が当たることになるので、肝心の兵器ネタの扱いが蔑ろになりかねないという危険性が大きいですから、手を出すのはなかなか難しかったんじゃないでしょうか。
そこを敢えて突っ込む榊先生はさすがというかなんというか。イコノクラストとか、前々から女の子を理不尽で悲惨な境遇に追いやって戦わせる展開はお手の物でしたからねえ。
しかし、いきなりワイルドキャットからじゃなくて、ヘルキャットとコルセアで攻めてくるとかどんなハードプレイですか。既にこの段階でスペック的に二一型どころか五二型もキツキツでしょうに。この作品は、一機種につき一人、というわけじゃなさそうだけれど……どの戦闘機があたるか、というのは何か必然的な理由があるんだろうか。澪なんかは曽祖父が五二型に乗っていた、という歴史があったからっぽいけれど。バッファローとかデファイアントなんかに当たったら、悲惨どころじゃ済まないぞ(苦笑
にしても、少女たちに明確な戦う理由が存在しないのが、かなり厳しい。無理やり戦いの場に引きずり出されて、訳もわからないまま戦わされる。戦闘が行われる理由は、謎の存在による戦闘実験、みたいな感じで彼女たちには一切の益はないわけだし。とにかく、生き残るために戦う、しかも同じ人間で女の子であろう相手をどうしたって殺さなくてはならない、というのは普通の戦争なんかよりもよっぽどマトモじゃないわけで。主催のフーファイターは、人間の生体について殆ど理解していなくて、常識が通用しない相手だし、心の問題とか内面とかも全く関知していないようだから、メンタルケアなんて一切してないんですよ。
仲間になる二一型の娘が、かつて一緒に翔んでいた親友が殺されて以降、殆ど人が変わってしまった、みたいな状態も宜なるかな。航空戦闘での死に方なんて、まともに亡骸も残らないですし、親友が五体バラバラになりながら墜落していく様子を目の当たりにした年頃の女の子が、むしろこの程度の精神変容で収まっているのはかなりマシな方なんじゃないだろうか。
一応、殺さずに戦闘を終結させることは可能なようだけれど、航空戦はそんな加減が出来るような代物でもないわけで。こんな物語のメインヒロインに、澪みたいな内向的な娘を持ってきて果たして能動的に動けるんだろうか。
で、肝心の戦闘機としての要素だけれど……此処の機体のスペックって、こうなると大きなファクターではあっても、あくまで一要素って感じなんですよね。何しろ、デジタル無線の搭載による相互連携の確保と、将一郎が要撃管制指揮をとることでほぼ戦域を掌握することが可能なわけで……レーダー搭載してもいない第二次大戦期の戦闘機相手にこのアドバンテージは凄まじくデカイと思うんですけどw
ラストのシーンは、フーファイターの理解不能な不条理感をこれでもかと詰め込んだえげつなさで、衝撃的すぎる引きだったけれど、この調子だとどう転がっても救いとかなさそうなんだよなあ。

榊一郎作品感想