ラエティティア覇竜戦記2-持たざる者の剣- (HJ文庫)

【ラエティティア覇竜戦記 2.持たざる者の剣】 すえばしけん/津雪 HJ文庫

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隣国マグノリアを傘下においてから一ヶ月。トウヤ達率いるラウルス国は次の目標を《蒼の神王》が治める北方のティリアに定める。
密かに敵地に赴き、精霊竜に自分達の味方につくよう説得するが、ティリアの精霊竜が出した条件は「当代のティリアの神王を殺す」ことだった――!
果たして精霊竜の真意とは? そしてトウヤの下した次なる一手は!?
やっぱりこのトウヤって自称ギャンブラーだけれど、実質は詐欺師かペテン師なんですよね。運を天に任せるような博打は打たないし、打つ場合は結局全体に影響が及ばない状況のときのみ。彼がギャンブル好きというのは多分本当なのだろうけれど、実は運を天に任せるのが大好きなタイプなんだろうけれど、本当に大事な場面では決してそれをやらない慎重派。破滅型ではなく絶対に勝てるようにイカサマするタイプだ。正しく策士であり権謀術数の担い手なんだけれど、それを政治や軍事ではなく、対面での勝負に費やすからやっぱり博打打ちとか詐欺師にしか見えないんだよなあ、王様なのに。
前回、トウヤの本当の目的が神を討つことだと明言されたためか、物語の核心はこの神の代理戦争の理不尽さを浮き彫りにするような展開にジリジリとスライドしていくことになる。トウヤの意味不明で自由奔放な振る舞いにふr回されっぱなしのラシェルだけれど、その言動にいちいち理由があり意味があり布石がある、と既に信頼できて全部預けられる絆もできているので、何だかんだと愚痴りながらもトウヤのサポートに徹するラシェルは、何故か微妙に悦に入っているような素振りがあって、微苦笑を誘われる。献身的な嫁気分でご満悦、というのはまああれだ、色々と面倒をおっ被される人にとっては溜息ついてしんどい思いするよりも、幸せな気分に浸れる方がいいんじゃないかしら。トウヤに振り回されるにしろ、彼は別に理不尽な物言いしたり、無茶ぶりするわけじゃないですからねえ。
前回のマグノリアの神王が、いわゆる神王としての役割をまっとうに果たそうとしている正統派だとすれば、今回のティリアの神王は、神の理不尽を体現した物語を担っていた、と言えるのでしょう。トウヤの抱く、神への隔意。それが如何なるものなのか、神という存在の下す意思の不条理さがどのようなものなのか、トウヤの目的である、真に戦うべき相手は各国の守護神である、という神との敵対が今回の一件で広く共有される事になったんじゃないだろうか。まあ、とは言っても各国の守護神を一律に一括りにしてしまうのは、神にもそれぞれ個性があるようですから、難しい所なのですけれど。ラウルスの神からして、アレですからねえ。
でも、トウヤたち神王が元いた世界が、どうやらなんかされたっぽいだけに、根は深そうなんだが。って、トウヤたちの元の世界って、普通に現代の地球だと思うんだけれど、地球どうなっちゃったの!? てっきり、単に個別召喚されただけだと思っていただけに、地球そのものがえらいことになったという発想はなかっただけに、トウヤのあの発言にはかなりぎょっとさせられたんだが。
あと、さすがに、ティリアの神王の秘密については予想外でした。トウヤの何の気のない軽口までが全部布石だったとはなあ。とりあえず神王については穏当に片がついたとはいえ、決してハッピーエンドじゃないだけに、気分は重たい。
その分、対蒼の神戦はスカッとしましたけれど。あそこまで見事に神様をだまくらかしてペテンにひっかけてくれたら、そりゃあ気分もいいですよ。ひどい話ですけれどね。勝負が成立した段階で、あれどうやったってトウヤの勝ち以外なかったんですから。神様、間抜けw いや、この場合トウヤの仕掛けがえげつなさ過ぎたんですけれど。ちょっと先を見通しすぎなくらいでしたが、口車に乗せて自分の準備していた展開に誘引してたわけですから、やっぱり詐欺師だよなあ、この人。

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