灰と幻想のグリムガル level.5 笑わないで聞いておくれよ (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.5 笑わないで聞いておくれよ】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

Amazon

「……で、これ、何だと思う?」
ワンダーホールに来てから数ヶ月。ハルヒロたちは少しずつ、だが着実に実力をつけて迷宮を攻略していた。
そんな時、探索中に見たことのない「穴」を見つける。
前回……たしか三日前にこの場所を通りかかったときはなかった穴。
それは未発見の新エリアかも知れず、一番乗りしたパーティには大きな利益がもたらされる。
踏み込むかどうか迷うハルヒロだったが、変わり者が多いが実力はあると評判のチームトキムネが現れ、合同での探索を提案される。
灰の中から生まれた冒険譚は、新たな出会いと共に続いていく。
もう誰も、笑わないよ。いや、ランタは笑うかもしれないが、あいつは全会一致でスルーだから。
もうだいぶ前からそうだったけれど、ハルヒロへのリーダーとしての信頼感は、もう仲間内ではすっかり定着している。モグゾーを喪った時、パーティーがバラバラにならずに変わらずハルヒロの元に集い続けた時に、その証明は済んでいる。だから、今更なんだけれど……ハルヒロが良いリーダーだって事が仲間内だけじゃなくて、他のパーティーのメンツから評価されるのを見てしまうと、なんだか無性に嬉しくなってしまった。そう、そうなんだよ。ハルヒロは凄く良いリーダーなんだよ。落ちこぼれの出来損ないの集まりだったパーティーを崩壊させず、我慢して我慢して着実に強くしていった立役者なんだよ。パーティーのみんなも、そんなハルヒロを今や信頼し切っている。し切っていると同時にその頼りなさを心細さを迷いをちゃんとわかっていて、一緒になって悩み迷って、支えてくれるのだ(ランタは除く)。ハルヒロのチームは、良いパーティーなんだよ。それを、他のチーム、それも実力を皆から認められてるチームから、性格的に決してお世辞なんか言わないような、それどころか認めていてもそれを言葉に出したり褒めたり絶対しないような相手から、ポロッと本音をこぼすように口ずさまれたことが、良いリーダーだな、と言われた事が、こんなにも嬉しいとはなあ。
クザクも、モグゾーとはタイプが違うけれど盾役としてきっちり働くようになり、今やハルヒロのチームの安定感は、見ていて安心出来るレベルに至っている。その分、危なっかしいことこの上なしの、考えなしの特攻野郎Aチームなチームトキムネの無茶ぶりに振り回されてハラハラしたけれど、ハルヒロたちが要所要所で手綱引いて引き締めてくれるのは、読んでいるこっちとしても助かった気分である。チームトキムネだけだと、果たしてドキドキハラハラで済んだだろうか……いや、実際済まなかったんですけれどね!
あの新たな未踏派エリアは敵が強い云々じゃなくて、地形効果というか不利な条件がキツすぎて、今までのフィールドの中でも段違いにヤバげだったんですが、その中ですらハルヒロたち安定してたもんなあ。ハルヒロの視野の広さはやはり特筆に値すると思う。チームトキムネみたいな癖のありすぎる連中と協力して進めるどころか、あの撤退戦では実質ハルヒロが全体指揮取ってましたからねえ。リーダーのハルヒロが前衛じゃないという要因もあるのでしょうけれど、彼には自分所のチームだけではなく、他のチームも見て抑えて指示して組み込む能力がある、というのをこのトキムネたちとの共闘で示せたんじゃないでしょうか。レイジたちのチームともある程度やれてたんだから、これは誇るべき能力だと思うんだが。
いい意味で、薔薇のマリアのマリアローズと似てきた気がする、ハルヒロは。
しかし、今回は肝心のハルヒロのチームメンバーが安定してしまったが故にか、目立つ所がなかったような。ランタだけは毎度のごとく快調ですけれど。もうちょっと自分たちにスポット当てて欲しいんだけれど、ハルヒロ視点だけだとどうしても限定されちゃうから、この辺りは仕方ないのか。そろそろ、他の娘さんたち視点の章も欲しいかなあ。ユメとかシホルとか。

シリーズ感想