異世界迷宮の最深部を目指そう 3 (オーバーラップ文庫)

【異世界迷宮の最深部を目指そう 3】 割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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激しさを増す“天上の七騎士”によるラスティアラの奪還計画。このパーティで最深部を目指そうと考えるカナミだが、突然ラスティアラがフーズヤーズに帰ってしまったことにより途方に暮れてしまう。そこへパリンクロンがラスティアラを救う方法を持ちかけてくるが、マリアの様子もまた変わり始めていて―。いよいよ幕を開ける聖誕祭。ラスティアラの死期。マリアのカナミに対する恋心。恋を成就させたいアルティ。“天上の七騎士”との決闘。忍び寄る『???』の影。様々な思惑が絡んだ聖誕祭が幕を開け―そして全てが清算される。ここが運命の収束点―異世界迷宮ファンタジー第3巻。
こーれは、またえげつないなあ。セーブポイント、回復ポイント無しでイベントボス戦の連戦連戦また連戦、みたいな? しかも、消耗しきった後の戦いの方ほど難易度が高いとか、えげつないにも程がある。どの戦いも、切り抜けて終わった後に次があるとは思わないから、気をゆるめてしまって気持ち的にも立て直しにくいんですよね。キツイわー。
それにしても、これって考えてみるとカナミを含めて登場人物のほとんどが精神に異常をきたしてる、ということになるんですよね。ある意味凄いよなあ。しかも、カナミにしてもスキル『???』の影響だし、ディアやラスティアラ、ハインにアルティ、マリアにしても全員が外的要因によって精神を弄くられている、というのだから本当になんだこれ。でも、お陰でか登場人物たちの求めるモノへの渇望が尋常じゃなく先鋭的になっていて、物語そのものがひたすらに細く鋭く尖っていって、触れるだけで問答無用に血まみれ傷だらけなます切りにするような勢いで加速していく。刺激的、という意味ではこの上ないのだろう。その分、心やすまる所が全然ないんだが。微笑ましいはずのシーンがあったとしても、甘酸っぱいはずのシーンがあったとしても、一皮剥くとそこにグチャグチャにかき回され沸々と煮立っているナニカが内在しているとなったら、とてもじゃないけれど気分が休まるどころじゃないし、ジリジリと火で炙られてるような気分にさせられる。何がホンモノで、何がニセモノなのかももうわからない。
それでも。
だからこそなのか。カナミをはじめ、誰もが嘘偽りのない「ホンモノ」を求めるのだ。渇望するのだ。縋り付き、むしゃぶりついて掴み取ろうとするのだ。それは、掴み合いの取っ組み合いでもあり、お互いを傷つけあう形になり、しかし求め合ってホンモノを確かめるのに必要な過程でもあったのだろう。
カナミが名乗ったジークフリードという偽名。一向に馴染まなくて、カナミの異世界での「本名」としてどうもしっくりこないままだったんだけれど、あの名前はやはり、彼のニセモノの象徴だったのか。だとすると、その名前を捨てたカナミが、誰に対しても「カナミ」として振る舞えた時こそ、彼の本当の物語がはじまる、はずだったのかもしれないが、そうは問屋がおろさないとばかりに、怒涛の展開に。いや、今回ほんとに怒涛の展開しかなかったんだけれど。どんでん返しありすぎて、何回転しましたか?
ラスティアラが、ハインが、アルティが、マリアが、そしてカナミが自分の本当に求めるモノを見出し確信し、それを掴み取ろうとようやく走りだした、そしてそれを掴んだと思った瞬間に、バラバラになって弾け飛んでいくこの容赦無い展開は、ある意味絶品なんですよね。ここまでするか、と言わしめるような流れを作り出すのはよほど会心の手応えがないと難しいですから。
未だスキル『???』の謎は明かされないままですけれど、その凶悪な副作用はついに露呈してしまったわけで、このスキル、本当になんなんだ!?
異世界迷宮の最深部を目指そう、というタイトルに対して、どんどん逆に目指すのが困難な状況に置かれつつ在るカナミですけれど、こっから果たしてどうなるのか。むしろ、ここがスタート地点なのか。

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