東京ストレイ・ウィザーズ 2 (GA文庫)

【東京ストレイ・ウィザーズ 2】 中谷栄太/Riv GA文庫

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「こ、この方が山王寺咲耶さんなのですか?」
志藤たちの前に現れた“ワイズクラック”メンバー最後の1人、咲耶の姿にアムリタは戸惑っていた。なぜなら目の前にいるのは、どう見ても10歳前後の少女だったからだ。志藤を敵視する「対クラックヘッド連合」に加盟しているのに妙に友好的で、おまけにアキラの手掛かりを掴んでいるという咲耶。そんな彼女を、志藤たちはすんなり受け入れたものの、アムリタはどこか信用しきれないでいた。おまけに咲耶の手引きで「対クラックヘッド連合」の内部に潜入することになり!?東京の夜を駆けるアウトサイド・マジカルアクション第2弾!
相変わらずこの人の書くお話は、文章のリズムが他とはワンテンポ早い。お陰でストーリーもピッチがあがっていて、澱みがないんですよね。ノリが良くて軽快、だから一旦リズムに乗ってしまうと、実にスムーズに作品に没頭できる。それでいて内容の方は単調ではなく、意外なほど二転三転するちゃぶ台返しが挟まっていて目まぐるしいくらい。一方個々の心情描写は明快であり、それでいながら迷彩もかかっていて、わかりやすくもあり、じっくり推察することも出来て、と飽きさせないわけだ。それに、登場人物のキャラも立ってますしねえ。殆どワンシーンしか出ない人も、そこだけでガッツリかまして印象残してくれてますし。主に漫才でw

ワイズクラック最後の一人は天才少女と謳われた山王寺咲耶。歳相応の無邪気さを見せて、再会を喜ぶ彼女でしたけれど、一番幼い彼女こそが一番過去に囚われていた、というのが今回の足の踏み入れどころだったのか。この物語、一貫しているテーマがどれだけ懐かしんでも過去には戻れない、という所でワイズクラックの崩壊による東京のクラン界隈はその様相を決定的に変えてしまった、というのは作中でこれでもかというくらい度々描かれ、主張されている。それでも、ワイズの残影は色濃く残っていて、その残影を追い求める古参のクランと新興クランの対立は激化し、今クラン界隈は酷い無秩序状態へと陥っている。
そこに、行方不明だったワイズクラックの英雄クラックヘッドが戻ってきた、という噂が激震となって走り、クラン界隈は激動の時代を迎えているわけだ。
クラックヘッドの帰還と共に、果たして時代は再びあのワイズクラックが秩序の象徴として輝いていたあの時代へ戻るのか。でも、戻ってきたクラックヘッド・志藤はそれを明確に否定しているし、彼のもとに再び集ったメンバー京平や宮子も、表向きにはワイズクラックへの復帰を否定したり拒絶したりしている。なにより、一度壊れたものは、もう戻らない。志藤は、今のクランの無秩序っぷりやルールのない礼儀も敬意もない在りように顔をしかめて嘆いているものの、昔のほうが良かった、というような言い方だけはしていないんですよね。それがどれだけムダで無為で有害な考え方なのかをよくわかっている。
過去に戻ることはできない、壊れたものを元に戻すことはできない。出来るのは、もう一度新しく作りなおすことだけ。
過去に囚われながら、同時に戻るべき過去に自分の居場所は無いのだと思い込んだ早熟な天才様の必死で無様なもがきと懺悔に対して、彼のその後ろを向かない在り方はどれだけ澱みを吹き飛ばす風となってくれたのか。過去での彼も、今の彼も、常にパスファインダーなのだ。時代の先導者であるのだ。だからこそ、切り開いていくその背中を、誰しもが追いかける。彼を利用しようとするものも、敵対しようとするものも、その存在を無視できない。
そのパスファインダーである彼がこだわり追いかけるかつての仲間であり裏切り者、そして恐らく最初から目的あって志藤に近づき、親友となった久瀬アキラは、もう一人のクラックヘッドであり、時代を壊した張本人であるかの人は、いったい何者なのか。なかなか意味深な情報がラストに開示されたことで、物語は一気にアキラを正体を中心として核心に向かう。
ところで、自分アキラって普通に男の子だと思ってたんだけれど……あれ? 女の子? ラスト近辺のイラストを見ると、明らかに胸に膨らみが。しかも、読みなおしてみると、アキラの登場シーンにしっかり「少女」という表現が。あれーー!? 実はメインヒロインこっち!?
ユキチさんユキチさん、ついにクラックヘッドの正体に気づいて舞い上がってる暇じゃあありませんよ!? ってか、自分の好きな人に福沢諭吉のプリントTシャツを贈ろうとする雪近さんのすっとぼけたセンスとか、大好きなんですけどねw

1巻感想